北岳バットレス 下部フランケ~dガリー奥壁

2011/10/8-10
福田、M  福田 記


「バットレス、もう登れるぞ」平成23年8月の集会で、名誉会長松元さんのお言葉。平成22年(2010年)10月にルートが崩壊したと大きく報じられた北岳バットレスは、今世紀中は登れないのではないかと噂されていた。しかし、松元さん情報によると、崩壊したのは枯れ木テラスから上部であり現在は登攀可能で、北岳山頂で登攀後のパーティーから様子を聞いたとのこと。

昨年7月に計画し、中止となり、今年の9月に計画し広河原まで行ったのものの天候判断により中止、今度こそは登りたかった。
実は、私がクライミングを始めた頃の大きな目標は、バットレスを登り北岳に登頂することだったのだ。
平成23年10月9日(日)
3:30起床、5:05御池小屋をヘッドランプで出発し、二俣で明るくなる。大樺沢左岸をつめ、6:10赤ペンキで×××とマークされた涸れ沢、おそらくバットレス沢をつめる。沢の出合に銅板の慰霊プレートがあったが、Mがどんどん先に行ってしまうので必死で追いかけ内容は確認できず。アプローチは日が当たらずに寒かったが、見上げるバットレスには朝日がさしている。どうか岩が温まっていますように。

下部岩壁に突き当たると、左方向にトラバースし第五尾根末端を目指す。このあたりのアプローチは、10回近くバットレスを登っているMに任せきりだ。ここが十字クラック、ピラミッドフェースの取付きはここ、dガリーに第五尾根と迷いがない。今回、もし途中で登れなくなったら四尾根を懸垂して降りることにしており、いつも以上にハーケンやシュリンゲを準備した。

7:35第五尾根末端でロープをつける。1PめMリード、2Pめ福田リードは草付きからフェース草付きで40m、下部フランケの取付きまで登る。
8:55 下部フランケスタート。

1P、Ⅴ-、Mリード。
ライン取りが3通りあるが、Mは一番難しい右のスラブに向かう。途中悪いトラバースがありハングを越える。気が付くとロープいっぱい。廣川さんの本にはdガリー側からはランナウトするとあるが、dガリー側から(写真では直上)の方が正解であったと思う。
201110_kitadake01

2P、Ⅳ+、福田リード。
凹角の右フェースのクラックにピトンが連打。ホールドに乏しく、上部は残置の間隔も開いて心細くなり、ステミングで頑張るが「落ちないこと優先」の法則に則りハーケン踏んで登る。9月に滝谷でぶつけた脇腹が痛むし、残業続きで疲れているしと言い訳ばかり考えて、とにかく落ちないように登る。カンテを左に乗越して、少し登りビレイ。

3P、Ⅳ+、Mリード。
2Pと同じような凹角を登り、また左に乗越す。
201110_kitadake02

4P、Ⅳ、福田リード。
フェースから草付き。岩がもろく、草に乗るとすべりいやらしい。次のピッチがトラバースなので、トラバースしやすそうなところまで登る。

5P、Ⅲ、Mリード。
バンドをトラバースし、dガリーに向かう。
201110_kitadake03

dガリー奥壁
1P、Ⅴ+、Mリード。
トラバースした地点から15mほどコンテで上がったところからスタート。12時ちょうど。ハングを4段ばかり越える20mのピッチだが、1段目左から越えた後、なぜかロープは45mまで伸びる。

2P、Ⅴ、福田リード。
フィストサイズのクラック沿いに登る。足ジャムは決まるもののホールドが乏しく、残置もほとんどなく、カムは#2までしか持ってこなかったので使い物にならず、怖いよお~怖いよお~落ちたくないよお~と念じているうちに、正規ルートのスラブを外れて、右の草付き(四尾根方面)に逃げてしまった。いい塩梅のビレイ点があり、しかも、四尾根とほんの5メートルしか離れていない。四尾根のパーティーとコンニチハと言葉を交わしてビレイする。
201110_kitadake04

3P、Ⅳ、Mリード。
下から見るとV字の切れ込みに見えたチムニーに向かう。
201110_kitadake05

チムニーは例によって半端なサイズで支点もなく、奥に入り込まずに右のスラブに乗り込む。スラブにホールドはないが、傾斜が緩いから大丈夫だよーとMが言うのでしぶしぶ這い上がる。3P終わったところが崩壊地点のそばで、四尾根との合流するところ。
201110_kitadake06

四尾根を登るパーティーのリーダーはガイドさんで、ファイブテンのスニーカーで登っており、しかも、ガイドさんがリード中、セカンドはロープを繰り出すだけでボディビレイしていない!!。「ビレイしなくていいんですかぁ?」と聞いてみると、「してますよ、ビレイ」と、セルフビレイを持ち上げて見せてくれた・・・。Mは、きっと13とか14とか登っちゃうガイドさんに違いないと言う。なるほどね。

四尾根からは、崩壊地点のヘリを左にトラバースしてdガリー奥壁と合流する。崩壊した現場は、昨日崩れ落ちたかのような壊れようであった。
201110_kitadake07

4P、福田リード。
多分トポにはないチムニー状を登る。途中までは残置ピトンがあるが、上部は左が難しそうなので右に行くと、岩茸の沢山ついたスラブで手がかりも残置もなし。ここで落ちたら、ここで落ちたら・・・汗。顔面蒼白でハイマツ帯に突入。落ちる心配がなくなって一安心。数メートルの藪漕ぎで踏み跡に到達。終了14時25分。
踏み跡を辿り、積年の念願かなう3190m。普通の登山者のように記念撮影をして、御池小屋には17時10分到着でぎりぎり残業はまぬがれた。
翌日、中央稜あたり登りたそうなMであったが、福田が燃え尽き症候群発症のため下山する。

【まとめ】
・下部フランケ3時間、dガリー奥壁は2時間半かかった。
・「バットレスは、そもそも全体に傾斜が緩いからね」という言葉には騙された。ハング越えや怖いチムニーがあるし、スラブやクラックもグレードいっぱいいっぱいで楽しんで登るには修行が足りない。もっと徳を積まねば。
・アブミは使わず、A0を多用(^_^)v。
・カム1セット必要、大きい方は#3まであると安心。
・この日は、バットレス全体で4パーティーほどだった模様。
・登れるぞ、と誘い水をくださった松元さんに感謝。

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