穂高屏風岩雲稜ルート

2015/9/12(土)
三好、斎藤 三好記


5時過ぎ、やや明るくなってからテン場を出発。渡渉地点は岩小屋付近。昨日偵察した時よりも水かさは少し減っていたが、まだ飛び石を渡っては行けない。ちょど渡渉中のパーティーがいた。水位は膝下くらいだったので、迷わず同じポイントで渡らせてもらった。水は痛いくらいに冷たく、さっさと通過。当初、渡渉核心かと思われていたため、案外楽に渡れて安堵。幸先がいいとテンションが上がる。
ストックをデポし、C沢をつめる。

Unryo_1渡渉ポイント探し中

T4尾根取り付きに到着すると、先行パーティーが登り始めるところだった。斉藤さんの知り合いとのこと。彼らは東壁ルンゼに入るらしい。
続いてこちらも登攀開始。
奇数ピッチは私。偶数は斉藤さん。
1、2ピッチ目はクライミングっぽい内容だが、あくまでもT4までのアプローチということで省略。

T4に到着すると、目の前に雲稜ルートがドーンとそびえていた。
ここにザックをひとつデポし、雲稜ルートスタート。

1ピッチ:三好
目の前の凹角をひたすら登っていく。途中うす被りのハングが出てくるが、自分の位置より上に支点が取れるので、それほどの不安はなし。垂直の凹角を上りきった右側にビレー点があった。ほぼ50mいっぱい。ここで切る。
そのビレー点から更に右上5mくらいにもうひとつビレー点があった。

Unryo_21ピッチ目 ダイナミックだぜ

2ピッチ:斉藤
まずは直上。上を探った後、ピナクルの後ろを通り、右へ消えていった。順調にロープを伸ばしている様子。少しして、無線でビレー解除のコール。
フォローで登っていくと、ロープはどんどん右へトラバースしている。ロープに従いバンドを右へ。1箇所、足場が切れ落ちている箇所を跨ぐのが結構怖い。更に右へ数メートル進むと、壁に細かいホールドが出てきた。ここから登る。ここまでのトラバース中、壁には登れそうなホールドなし。この登り口をよく見つけたな~、と感心。しかし、ここまで右にくると支点はほぼない。

Unryo_32ピッチ目 ルーファイ必須

3ピッチ:三好
ひたすらアブミの掛けかえ。淡々とこなしていたつもりだが、後々振り返るとあまりにも時間が掛かっていてビックリ。本チャン初アブミということで勘弁してください。
古い支点は打ち直されているとの情報通り、支点に不安はほぼほぼなし。
バンド下のビレー点で切る。

Unryo_43ピッチ目 コツコツ登った後の眺め

4ピッチ:斉藤
怖いトラバース。斉藤さんが途中で雄叫びを上げている。手掛かりがなく、確かに怖い。2ピッチ目のトラバースといい勝負かなと思う。

5ピッチ:三好
つるつるのスラブに走るクラックに沿って登る。結構悪い。すっかり仕事を終えた気分で迎えたこのピッチは案外堪えた。

6ピッチ:斉藤
スラブをサクッと登って懸垂支点あり。

ここから懸垂すること計5回。
・6ピッチ目ルート方向に30m程下りたあたりの壁側にある懸垂支点まで
・3ピッチ目終了点まで
・扇岩テラス
・1ピッチ目終了点(2コ目の終了点)
・T4

Unryo_5懸垂支点を探しながら下降中

登攀中や懸垂中にいろいろと問題が起きた。
今回はそれぞれ事なきを得たが、次はそうとは限らないと肝に銘じて、しっかり次へ繋げたい。

渡渉点まで戻ってくると、すっかり日が暮れていた。
別ルートに入っていた女性パーティーと前後するようにヘッテン渡渉した。
本日の屏風は私たちを含めて3パーティだった。雲稜ルートひとりじめ。

■振り返り
昨年9月、諸事情によりT4まで荷物の回収に訪れたあの日から一年。
斉藤さんとの約束通り、ちゃんとここに戻ってきました。感無量。
冬から少しづつ練習を重ね、強気の斉藤さんにぐいぐいひっぱってもらい助かりました。
登っている最中はヒリヒリしたクライミングでしたが、時間が経って振り返ると、結構楽しかったね、あのルート。

■行程
4時起き
5:10 横尾テン場出発
5:25 渡渉ポイント
6:30 T4尾根取り付き
8:35 T4
9:05 1ピッチ
10:10 2ピッチ
11:15 3ピッチ
13:00 4ピッチ
13:30 5ピッチ
14:25 6ピッチ
15:10 懸垂開始
17:00 T4
18:00 T4尾根取り付き
18:30 渡渉
19:00 横尾着

≪雲稜ルート記録 / 齊藤追記分≫

およそ1年前『来年9月に屏風岩東壁雲稜ルートに登ろう』と決め、それに向けて登攀力を上げるべく日々ジムやゲレンデでフリーの練習をし、三好さんとも毎月ロープワークの練習をし、準備に努めてまいりました。

前日に横尾に入り、当日は屏風岩東壁には私達も含め3パーティしか入っておらず、雲稜まさかの貸切でした(笑)。
これはルートファインディングやタイムマネジメントも含め、人的要因に左右されず、マイペースで自分達の実力ぎりぎりまでとことん試すことができたという意味で、非常に幸運だったと思います。
しかし雲稜、やっぱり手強かった…。
ドーム中央稜ではなるべくフリーでこなそうと考え、試してみましたが、雲稜ではそんな気持ちは1P目で捨てました。
もちろん登攀力不足や時間短縮という面もありますが、振り返ってみれば何が何でも登ってやろうというがむしゃらな気持ちの方が強かったような気がします。
私たちの実力及び体力では屏風の頭へ抜けるというのはまず不可能だったので、同ルート下降を選択しましたが、それでも横尾を朝5時にたち、戻ったのは19時過ぎの14時間行動でした。

登攀に関しては、三好さんも書いているとおりアブミの練習不足だったなぁと思うくらいなんですが(そりゃ登攀力不足で時間はかかりましたが…)、懸垂下降に関してはヒヤリハットがあったり、考えさせられることがとても多かったです。
しかしこれは経験不足から来ることではあっても、練習不足によるものではなく、自分達で雲稜に取付いたからこそ気付かされたことだと思っています。
以前、松元先生に三つ峠でお会いした時に『1度岩に取付くことで必ず学ぶことがある。たくさん登りなさい。』とおっしゃられたことがありましたが、今回の懸垂下降ではその言葉が思い出されました。

さて、これで今シーズンの夏の岩場は一区切り。
来年の夏こそ剱岳チンネ左稜線(三ノ窓ベース)をやりたいなぁなどと、次なる野望を抱いております。

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