剣岳 チンネ左稜線、富山大ルート(敗退)、魚津高ルート

2014/9/12-15
A、田中  記 田中


一番発した言葉が「疲れたー・・・。」な山行でした。
不意に誘われたチンネ左稜線。初めて聞く名称、どこにあるのか、それすら知らなかった。
帰路、地獄谷への登り返しで、5歳児、足の悪いおじいちゃんに抜かれるというまさに地獄。

9/11
20:40東京発-24:40扇沢着
3連休の前日に有休を取って向かったが、無料駐車場にはそこそこに先客あり。
満天の星空の下で寝たが、朝露で寝袋がビショ濡れ。

9/12 晴れのち雨
07:30トロリーバス出発-08:55室堂着
12:05剣沢小屋-13:21長次郎谷出合-15:50?熊の岩
扇沢からは、連休時のみ06:30始発となるらしく、向かう方はご注意を。
剣沢小屋に到着時点で、Aさんとのスピードにえらく差が開く。マズイ、ついて行けない。
山岳警備隊によると、長次郎谷の雪渓は熊の岩手前で一部途切れるらしい。さすが情報通。
剣沢に降り立つ直前、足が岩に引っ掛かり、頭から岩角に突っ込んだ。
出血したが、カッコ悪い記憶は血と共に流しておいた。

201409_chinne01
剣沢小屋

雪渓を下り、フラフラになりながら長次郎谷を登り始めるが、つ・・・つらい。
上方に岩場が見え、熊の岩であってくれと祈るも、雪渓の途切れる地点であった。
シュルンドを避けて、岩場に乗り移る。
平坦な場所に乗り移るだけなので、なんてことはない。思っていたより危険は少ない。
再度雪渓に戻り、息も絶え絶え熊の岩まで。テントは既に3張あった。

この時期、おそらく15張までは平坦な場所が確保できるだろう。
水場まで30秒と近く、行くならおすすめの時期かもしれない。

201409_chinne02
長次郎出合

201409_chinne03
雪渓から岩場に乗り移り、上部に見える岸壁が熊の岩

9/13 晴れのち雨
ヤマテンによると、稜線上で雪やみぞれの予報。
停滞を決め込むが、見事な朝日と青空で登らずにはいられない。
ただし、チンネは翌日に繰越し、目の前に広がるA~Dフェースへ向かう。

201409_chinne04
テン場より、右からA~Dフェース

Dフェース 富山大ルート(敗退)
さてさて、難しそうなラインを事前に調べておいたので、富山大ルートに取り付く。
1P目から、明らかに難しいように見えた。
垂壁を4mほど登り、ハング下4mくらいから左上(トラバース)する。
トラバース2mで腐ったハーケン、その先は5m支点なし。怖すぎ。
リスを見つけてハーケンを打ち込もうとするが、片手で全ての操作をやるのがムズイ。
ハーケンを2/3くらい打ち込み、スリングをタイオフした。突っ込めるぜ!
・・・4級とは思えない難しさ。フリーなら5.8あげてもいい。
次の支点までなんとかたどり着くが、さらに6mランナウトしていた。
3mくらい登るが、ムズイ&怖くて突っ込めずクライムダウン。
Aさんも登らないとのことなので、残置ビナをかけて、敗退。(40分くらい取り付いてたか)

Aフェース 魚津高ルート
ピッチ数が少なく、下降も楽なAフェースに移動しようということになる。
2P目がとても楽しいルート。好きになった。
下降は5,6のコルに向かって2回懸垂(1回目10m、2回目30m)。ハイマツに残置支点がかけてあった。

13時半、今日はこれで終わり。
ランチを取って、モノを乾かし、翌日のチンネ登攀に備える。
下からは続々と3連休の来訪が連なる。
15時、ポツリを合図に強雨になった。登っているPが気遣われる。

9/14 晴れ
03:10起床-04:05熊の岩発-05:10池の谷乗越
06:10?チンネ取付-11:15チンネの頭-13:00池の谷乗越-14:10?熊の岩

となりのPが起き始めたので、焦って起き出す。後続になるのはメンドくさい。
池の谷乗越までの登りは、右俣と左俣を分ける大岩の後ろまで雪渓を登り、そこからはガレ場。かなり悪い。
右俣は、下から見て右側の壁沿いに登って行ける。
ストックは池の谷乗越にデポ。アイゼンは使うので、デポしちゃダメ。

201409_chinne05
池の谷乗越から、長次郎谷右俣を見下ろす

池の谷ガリーは、ザレザレガラガラで落石に注意。一番手なら、下に人がいないので気が楽。
三ノ窓は明確に分かり、テントが2張あった。
三ノ窓組はテント入口で準備中、タッチの差で一番手ゲット。

以下、田中(フリーでは11aを2本)の体感グレード。
1P目 15m(Ⅳ-)・・・A
軽く右上するクラックを登り、テラスへ。日陰のため岩冷たく、指の感覚消失。

2P目 30m(Ⅲ)・・・田中
岩が固く、日当たりのいいフェースをひたすら直上しテラスの支点で切る。
ランナー4つくらいで登れる。ハーケンよりカムを信じれるようになっていた。
フォローでラクがあったので、一部浮いているのか?

3P目 25m(Ⅱ)・・・A
右上のゆるーいディエードルを登る。
その後、踏み跡に沿って、じめっとしたルンゼに向かって平地をテクテク歩く。
ルンゼ入口に支点。

4P目 35m(Ⅱ)・・・田中
本当にルートか怪しいが、広いルンゼの草付きをまっすぐ登る。15mくらい支点取れず。
25mでハイマツを乗り越えると土のテラスに着き、右側に左稜線が!
支点は足元のちっちゃい岩角で。

5P目 30m(Ⅲ)・・・A
フェースを直上し途中で切る。

6P目 20m(Ⅱ)・・・田中
フェースを直上し、核心T5の見えるピナクルで切る。
リッジの左側を登るのが、高度感があり楽しい。

7P目 25m(Ⅳ)・・・A
目の前のデカいピナクルは右を巻くが、その後の登りが難しい。
最後は、被りぎみの落ちそうなチョックストーンに全体重を預けて乗り越える。

8P目 30m(Ⅳ)・・・田中
正直、T5を目にした時からその威容にビビっていた。
80度位あるし、思っていたより長い。
でも核心?はハーケンが大量にあったせいか、難しくなかった。というより、ハングではなかった。
その後は空中に飛び出した傾斜のあるリッジを行く。
これまでの登攀で最も楽しく、ルートとしてもハイライトであろう。
支点はハーケン連打の上にあるピナクルで。

9P目 20m(Ⅲ)・・・A
リッジの残りを消化し、稜線へ。

10P目 15m(Ⅱ)・・・田中
ギザギザの稜線を歩いたり、トラバースしたり。高所恐怖症でビビる。

11P目 25m(Ⅱ)・・・A
10P目の続き、チンネの頭を超えて支点まで。

201409_chinne06
チンネの頭

カッコイイ写真を撮ろうとしたが、一瞬のガスで視界良好とは言えず。
これまた残念。

下降ルートは、福田さんたちの記録とは異なりコルまで懸垂し(歩いても可)、
ザレザレガラガラのガリーを2回の懸垂で池ノ谷ガリーに降り立った。
懸垂中にデカい落石も落としてしまい焦った。
懸垂ルートとしては最低だったので、別ルートを取った福田さん待井さんにアドバイス受ければ良かった。
201409_chinne07
懸垂に使ったガリー

9/15 曇り
06:00熊の岩-09:30剣沢小屋-12:50室堂-薬師の湯へ寄り22:00新宿
さて、今回のハイライトとなる下山。
剣沢小屋までは剱から抜け出したい一心でたどり着いた。
御前小屋への登りはもはや意識が飛びそう、天へと登るような気分。
雷鳥沢への下りは、再度の地獄への登り返しを眺めつつ、ガクガクの足で引きずり下ろされる。
地獄谷への登り返しは、ゼイゼイとなにか体調が悪い人のように歩く。
室堂に着く頃には亡霊のようになっていた。
リアル立山曼荼羅。

振り返り
・アイゼンは10本以上が安心だが、ピッケルを持ってゆくなら6本でも
・中間支点は大して取らないので、アルパインヌンチャク7、リンクカム2(緑、黄)あれば足りる
・ハーケン、ハンマーはあったほうがいい
・体力に自信のない人はできるだけ軽量化を

山行計画等の準備をして下さったAさん、ありがとうございました。
遠いですが、日本を代表するルートだけあり内容が充実していました。
次は、長期プランでゆっくり登ってみたいなあ。しばらく行きたくないけど。

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