丸山東壁 緑ルート

2014/9/13-15
桜井、齊藤、N  記 N


【日程】
9月13日 6:00自宅出発-11:00扇沢バスターミナル-11:45黒部ダム-13:40内蔵助谷出合-14:00 BC設営-15:00ルート偵察-16:00緑ルート取付-16:30BC

9月14日 4:30起床-6:30出発-7:00緑ルート取付-7:30登攀開始-14:30中央バンド-15:00下降開始-16:00取付-16:30BC(泊)

9月15日 5:30起床-7:00BC出発-9:00黒部ダム-10:00扇沢バスターミナル

【総括】
・今年の夏合宿は天候に恵まれず、剣岳剣尾根・チンネ登攀の計画は完遂することができなかった。そこで剣岳の帰りに、合宿のメンバーで9月の連休、黒部の巨人と呼ばれる丸山に場所を移してリベンジしようということになった。

・とはいえ、私と齊藤さんにとってはいくらなんでもいきなりの丸山は荷が重い。事前に奥多摩のつづら岩にてアブミトレと人工ルートでの本チャンルートの経験を積み、マイアブミも改良を加えて本番に臨んだ。

・当日は目の覚めるような雲ひとつない青空の下、丸東のビッグウォールを我々3人で独占し、スケールの大きな岩登りを誰にも邪魔されることなく堪能することができた。しかしながら、いかんせん若手二人の実力が伴っておらず、登攀に予想以上の時間がかかってしまい、結局、中央バンドまでの7ピッチで時間切れ終了。上部の大ハング越えは次回以降にお預けとなってしまった。

・貴重な3連休を我々のために費やしていただいた桜井さんには本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだが、初めて本格的な人工登攀のマルチピッチを経験し、岩登りの幅を広げることができた。この経験を今後に活かし更に精進して、次回はリードもできるようになってから再度チャレンジしたい。

・我々を文字通り引っぱっていただいた桜井さんに感謝いたしたい。ありがとうございました。

【山行記録】
9月13日(土)
・桜井さんに前日出張の予定が入ってしまったため土曜日早朝の出発となる。高速道路は混雑していたが事故による渋滞もなく予定通り11時に扇沢のバスターミナルに到着。ターミナルそばの有料駐車場は既に満車だったため、最近拡張されたと思しき少し離れた無料パーキングに駐車。

・時間が遅かったため、トロリーバスはさほど混雑しておらず、待ち時間もなく所要時間15分程度で黒部ダムに到着。剣岳と異なり室堂までの長い道のりを行く必要がなく財布にも優しいのが丸山のメリットか。

・バスを降りてそのまま登山口に向かう乗客は我々3人のみ。地下道をでたところで軽く食事をとっていざ丸山に向け出発。黒部川の川床までの急な斜面を下り、木の橋を渡って対岸へ。内蔵助谷出合まではほぼ平たんな道を40分ほど歩く。出合から少し上がったところにテントが4-5張ほどはれそうなスペースがあったが、今回はそこは通過しさらに谷筋を登る。

・傾斜が急になった登山道を重荷に喘ぎながらしばらく行くと、左手に丸山の壮大な岩壁がひょっこりと姿を現した。最初のルンゼとの出合いに運良くちょうどテントが1張はれるほど小さなスペースがあり、そこをBCとする。

・丸山の岩壁には先客はいないようだ。荷物を置いて一休みしてから緑ルート取付まで偵察に出かける。最初、1ルンゼをそのまま東南壁まで詰めてしまい、そこで行き詰ってしまった。仕方がなく、途中まで引きかえすと左手に東壁に向かう薄い踏み跡を発見。先客が残したケルンもあった。

・ルートには背丈以上ある草が生い茂り行く手を阻んでおり、あまり人が入っていない様子がうかがわれた。藪こぎをしながら踏み跡を辿っていくと、東壁にポンと飛び出した。さらに岩に沿って上がっていくと古いリングボルトが二本打たれている箇所が現われた。上部に特徴的な三日月ハングをとらえることができ、ここが緑ルートに違いない。

・何とか日の明るいうちに取付を発見できたことに気を良くしたのも束の間、ここで雨がぽつぽつと降り始め、徐々に雨脚が強まってくる。「夏合宿に続いてここでも雨か」と何とも言えない憂鬱な気分になったが、急ぎ濡れたルンゼをBCまで下降。テントに逃げ込んだ。

・しばらく雨は止まずその日はテントの中での夕食なった。酒もそこそこに翌日の好天を祈り20時に就寝。

9月14日(日)
・4時の予定が4時半の起床となる。早々に朝食をとり、6:30にBCを出発。7時に取付に到着して装備を整え、7:30より登攀開始。3人パーティということもあり、桜井さんがリードでN、齊藤の順でのぼる。

(1ピッチ目)
・濡れたスラブ。ホールドも細かく、最初のピンまでが少し遠いため、緊張を強いられる。フリーと人工のミックスでテラスまで。朝一で体が動かず苦戦を強いられる。

(2ピッチ目)
草付きまじりの斜面をハーケンやリングボルトを拾いながら直上。しばらく行くと右上の草付きの方向にリングボトルが打たれており、それをそのまま辿っていくと行き詰まってしまう。恐々とクライムダウンしたところで左上方にのびるルートを確認。少し上がったところでピッチを切る。

(3ピッチ目)
・ボルトラダ―に導かれて、三日月ハングの直下でアブミビレー。ところどころ間隔の遠いボルトがあり、アブミの最上段にのぼらなければ次のボルトに届かない。ハング下の支点でアブミビレー。

(4ピッチ目)
・三日月ハング越え。ここでこの日初めてフィフィーを使用したが、ボルトの間隔が短く、それほど困難ではない。ハングを越えてしばらくいったところでアブミビレー。

(5ピッチ目)
90度に近い垂壁。すごい高度感だが、感覚がマヒしている。このピッチはピンがベタ打ちされており、桜井さんから「リード行ってみる?」と勧められるが、心の準備ができておらず、つづら岩で腐ったハーケンが根元からボキッと折れた悪夢が脳裏をかすめ、どうしても一歩踏み出すことができず。リングがとれて細引きがついたリングボルトが散見されたが、単純なアブミの付け替え。

(6ピッチ目)
・小さなテラスまで直登するが、下から見ていると、その先で桜井さんがルートファインディングに迷っているようだ。しばらくあちこち見まわして、右手にトラバースするルートを発見。最後は松の木の枝を乗り越えてテラスの灌木でビレー。

(7ピッチ目)
・少し傾斜の緩くなった草付きの斜面を中央バンドまで慎重に登る。とくに危ないところはなく、14時30分に無事到着。登攀開始から7時間。予想外に時間がかかってしまい、本日はここまでとする。途中撤退もあり得たが、何とかここまでこれたことに安堵する。

・中央バンドは背丈の高い草が生い茂っており、人があまり入っていないことを物語っていた。岩に向かって左上方に大ハングが圧倒的な威圧感で覆いかぶさっている。右手の奥を見ると小さな洞穴があり、「ホテル丸山」を確認。天井が高く3人ぐらいビバークできそう。しばらく登攀の余韻にふけり、15:00過ぎに下降開始。

・終了点から取り付きまではほぼ一直線のルート。行きの7ピッチを帰りは5ピッチ、約1時間で懸垂下降。支点には大きめの鉄のリングがかかっており、ロープの引っかかりもなく16時に取付に帰還。これ以上墜落することのない地面に足がついたことに一同安堵し、握手。BCに帰り、沢の水で冷やしたビールで乾杯。

・翌朝は5時半起床。高速の渋滞を避け、早めにBC撤収し、帰途に就く。ダムまでの道すがら、紅葉が少しだけ始まっており、入山からほんの2日しかたっていないのに秋の深まりを感じる。

・帰りはいつもどおり大町温泉薬師の湯で汗を流し、安曇野インター近くに新たに発見したとんかつ屋「かつ時」にてランチ、渋滞の中央道を帰京した。

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