八ヶ岳 阿弥陀岳北西稜

2012/2/11-12
山本武、玉田、芥川、栃木  記 栃木


今季の後半戦の課題として阿弥陀北西稜は当然念頭にあったが、八ヶ岳西面では難しい部類に入るのでどのように取り組んだものか思案していたところ、一昨年に続いて今年1月に敗退してしまったたけさんと玉田さんのリベンジに便乗できることになり、思わぬ形でチャンスが転がりこんできた。当初エントリーしていた桜井さん、福田さんが事情により行けなくなり、最終的に4人で行くことになった。一昨年、今年は2回とも取付き敗退だったため、執念を燃やす玉田さんが万全の体制を期しており、天候も1月末からの大雪や週始めの降雨の影響が懸念されるものの、予想天気図では冬型が緩みそうで、コンディションとしても悪くなさそうだと考えていたが、果たして結果は・・・?

1日目(2/11、快晴)
前夜武蔵浦和と新宿に分かれて集合し、道の駅こぶちさわでテン泊。6:00に起床し、パッキングした後、美濃戸口に移動。9時頃出発となった。美濃戸口から南沢への道はガチガチに凍結しており、とてもまともに歩けない状態。歩き始めて早々にアイゼン装着とする。心配していた雪は全体にそう多くはない。週始めにあったという降雨で積雪の表面がクラスト状に凍結したと思われるが、その上にはほとんど新雪はなく、雪崩の心配も少ないと思われた。
12時過ぎに南沢沿いの北西稜へのアプローチ入口に到着、登山道から10メートルほど入ったところで幕営とする。ややお疲れ気味のたけさんに留守番と水作りをお願いして、1時頃から偵察に出発。部分的にトレースが消失していたところがあったが、探索の結果間違いなく北西稜へ至ると思われるトレースを発見(翌日、マーモットによるものと判明する)、早々に偵察を終了。2時頃テン場へ戻ると早速宴会開始。何ともぜいたくな時間を過ごし、6時頃就寝として翌日のアタックに万全を期した。

<北西稜アプローチのまとめ>
南沢を行者小屋に向かう途中、行者小屋より10~15分程度手前の右手(阿弥陀岳側)に緑色のロープが張ってあり、周辺の立木に赤布・赤テープが4・5個付いている箇所がある。ここが一般的な北西稜へのアプローチルート入口となる。さらに数十メートル手前にも何か所か赤テープが付いているが、この辺りから入っても問題ない。さらに10分程度手前の、立木に青テープが付いたルンゼ状は摩利支天沢入口と思われ、ネット上の記録ではここからアプローチすることもあるようだ(今回は未踏査)。緑ロープから樹林帯に入ったら、南西方向に進んでいく。すぐに浅いルンゼ状となるので、右側の稜状を上がっていく。さらにそのまま南西方向に進むと、明瞭なルンゼに出る(ルンゼでは樹林が途切れており、北西稜上の露岩が見通せる。なお、稜に沿って進むと北稜に辿り着いてしまう)。ルンゼをつめ上がったあたりでルンゼを横断し、向かい側の樹林帯の斜面を直登していくと露岩に到達できる。露岩に辿り着いたら、右から巻くようにすると稜線に出られる。

2日目(2/12、曇のち快晴)
6時起床。昨夜の残りのおでんとうどんを食していると、テントの前を通過する足音を聞き、先行パーティーがあることを知る。準備を整え、7:20出発。前日のトレース通りにアプローチ、樹林帯の急登をつめると30分ほどで露岩に達する。さらに稜線をつめていくと森林限界を超え、ハイマツ帯となる。玉田さんのキジ撃ちでしばし休憩、さらに進もうとすると突然3人パーティーが下降してくるのに出くわす。「栃木さんじゃないですか」と声を掛けられ、驚いて相手をよく見ると何とマーモットの下山さん。普段、江戸川橋のジムで顔を合わせており、北西稜に行くとは聞いていたが、同じ日とは知らずびっくり。聞くと前日にトレースをつけ、今日は5時頃出発したものの稜線上で強風のため、8時まで待機していたが結局おさまらないので撤退したという。他に雲表のパーティーが先行しており、既に取付いているはずとのことであった。この段階で「今回は無理かも・・・」と内心思ったが、とりあえず前進することとなり、マーモット組にラッセルのお礼を言ってさらに歩みを進めた。
間もなく稜線はリッジ状となり、西からの風がまともに吹き付けるようになる。50mほど進んだところでロープを出し、登攀具を装着(8:30)。玉田&山本、芥川&栃木のオーダーとし、玉田&山本組は玉田リード、芥川&栃木組は栃木先行のつるべで進む。途中の岩峰で一旦ピッチを切り、2ピッチで第一岩壁に到達(9:30)。雲表パーティーが第一岩壁をダブルアックスで直上しているが、だいぶ時間がかかっている様子。とにかく西風が常時吹き付けており、寒い。取付きで山本、芥川、栃木が待つ間、玉田さんが岩壁を右からトラバース、フェースを登上するが、なかなかビレイ解除とならず、一旦下降するなど苦戦している模様。しばらくすると、「渋い」と言いながら玉田さんが帰還、後に詳しく伺ったところによると、フェースは雪がべっとりついていて支点の場所が分からず、一つは何とか掘り出せたものの、次の場所が分からず、それ以上進めなかったとのこと。結局、この段階で撤退することとなり、10:15同下降開始、懸垂下降もはさんで11:50テン場に帰投した。そのまま撤収、下山中にみるみる晴れあがる青空の中、白く輝く阿弥陀岳を眺めながら14:30美濃戸口に最終下山した。

感想・反省など
・嵓に入ってから初めての本気の敗退となった。残念だが、私の立場としてはこれもよい経験になったと思う。撤退の判断も妥当で納得できるものと感じている。次回リベンジする機会があれば、是非また参加させて頂きたいものだ。

・個人的には1か月ぶりの山行ということもあり、ロープさばきに手間取ってしまったことが反省される。やはり、マルチでもっと練習しなければいけないと再認識した。

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