2012/7/29
久保田、竹元 記 久保田
以前から気になっていた錫杖岳のマルチピッチ、黄道光。
クラックを含む11台のピッチが続くマルチピッチで、錫杖岳の中でもすっきりした北沢フェースを凄まじい高度感のなか登る。
5.11台がオンサイトグレードの自分が、どれだけ登れるのかを確かめてみたかった。
大岩さんの開拓したルートということもあり、岩の弱点をうまく突いている。
大岩さん、本当にいい仕事するよなぁ。
あまり登られた記録がないのだけど、このルートはもっと登られるべきルートだと思う。
【1P目 3級】
取付は左方カンテと同じ。
左方カンテの1P目を2/3くらいまで登ると右壁にボルトが見えてくる。
潅木でビレー。ここから先が黄道光のラインになる。
【2P目 5.11 25m】
ボルト間隔は遠いように見えるが、うまい具合にクリップホールドがある。
やや傾斜があるもののなるほどという感じのムーブ、ライン取りでなかなか面白い。
ハングを回り込んでからも意外と気が抜けない。
しかし、よくこのラインを見つけたなと関心してしまった。
ボルトは6本程度。C4#0.3、マスターカム紫を使用。
初登時の記録では11cとなっており、少なくとも5.11ノーマルはあると思う。
【3P目 2級】
単なる草付きトラバース。
【4P目 5.11 45m】サンシャインクラック
出だしのハングがトリッキーでいきなり落ちそうになるも、粘った。
その後、30mくらい左上するサンシャインクラックが続く。
ムーブとしてはそれほど難しくはなくレストポイントも多いので、グレードはあっても5.11-だと思う。
クラックが途切れたあと、へろへろになった状態で5.11-のフェースに突入するのだが、ここがこのピッチの核心と思われる。
足元ボルトできわどいムーブ、思わずうめき声が出る。
ガバを掴んでほっと一息、小テラスまで。
そのまま扇岩テラスまで登ってもよかったのけど、心が折れたのでピッチを切る。40mくらい。
ビレイ点はなくボルト1本のみ。カムで補強した。
出だしのボルトは2本、クラック後ボルト2本。カムは2セットほぼ使い切った。
【5P目 5.10- 10m】
扇岩テラスまで10mくらい。
出だしボルト1本でその後プロテクションはほとんど取れずランナウトする。
難しくはないのだがランナウトするので結構怖い。
【6P目 5.11 35m】
下部のフィンガーが数手続いたあと、ホールドが乏しくなったところで、力尽きてフォール。オンサイト失敗。
黄道光の開拓記事を読む限り、どうやらここが核心のようだった。
その後、右へトラバースしてクラックへ移る。
クラックは5.10台でそれほど難しくはない。
クラックが途切れた後ボルト2本で、ハングを越えたところにビレイ点らしきボルト2本ある。
トラバースのところでランナーの伸ばしが足りず、ロープが屈曲し重くなりすぎたので、一旦ピッチを切る(ハンギングビレー)。
下部ボルト8本程度、クラックはカム1セット、上部ボルト2本。
【7P目 5.11- 10m】
やや被ったセクションでハングを右に越える。
ヒールフックを使ったりと意外と大胆なムーブが楽しめる。
北沢デラックスと合流する。
ボルトは6本程度。
この後、北沢デラックスの最終ピッチ(5.11-)が続いて壁の上まで抜けれるのだけど、黄道光のラインは終わっていたし、さすがに疲れてきたのでここで終了とした。
60mロープ2本で懸垂、3回で左方カンテ取り付きまで。
マルチピッチでチョークあとの全くない壁をオンサイトトライする、これほどぞくぞくするクライミングは他にはない。
6P目でテンションをかけてしまったが、その他のピッチはオンサイト。
去年のスーパー赤蜘蛛に匹敵するくらい、いいクライミングができたと思う。
クラックを含む11台のピッチが続き、スケールもあり、高度感もある。
各ピッチのムーブも多彩で、とても登り応えのある素晴らしいルート。
これはもっと登られるべきルートだと思う。
錫杖岳という岩場でボルトが連打されている黄道光だけど、ルートの内容が素晴らしいので、これはこれでありだと思う。
ギア
ヌンチャク16本、キャメロット(#0.3~#3)2セット、マスターカム(黄青紫)2セット
シングル60m、ダブル60m(荷揚用)
セカンドはユマーリング。
日程
7/29
5:15 錫丈沢出合発
5:50 左方カンテ取付
6:10 黄道光登攀開始
12:25 終了点(北沢デラックスとの合流地点)
13:10 取付
14:00 錫丈沢出合
15:30 駐車場
参考文献
岳人 2003年2月号 「北アルプス錫杖岳前衛フェース「黄道光」開拓