小川山 マラ岩 エクセレントパワー(5.13a) RP

2012/10/14
久保田  記 久保田


昨日(10/13)にスーパーイムジン(5.12b/c)をRPしたばかりだったが、やはり気分は重い。
あまりにも核心ができず、いい加減嫌気がさしてきていたので気持ちは常に後ろ向き。
曇り空で、日が当たらず昼間でもダウンを着ていても寒いくらいだった。
コンディションとしては最高だったのかもしれない。

11時頃、遅めの1便目を出す。
いつもと同じようにシルクの縦核心で落ちた。

2便目も全く同じところで落ちる。
もうやめて帰りたかった。

15時過ぎに3便目。
回収のことばかりを考えていて、気分は暗くなるばかり。

ほぼ決まったムーブで淡々と下部をこなし、縦核心の手前でレストする。
ふと、昨日のスーパーイムジンのRPを思い出す。
足りないのは気合だったなと思い、核心で叫んでみるにした。

身体に染み込んだ核心ムーブ。
左足でスメアリング、3段目まで右足を上げて、中継ホールドをつかみ、
そして、叫びながらキーホールドへデッド。
なんと、止まった。

慎重に左足を上げ、ガバを掴みクリップする。
ふー、呼吸を1つ整えてすぐにトラバースを始める。

もう絶対に落ちるわけにはいかない。
いつも通りやればできると、何度も自分に言い聞かせる。
ロッキーとシルクの繋ぎパートを越え、ロッキーロードの最初の核心へ。
前回はここで落とされたが、今回はあっさりと抜けられた。
ダイクでパンプした腕を休ませ、荒くなった呼吸を整える。
あまり長時間いると足が疲れてくるので、長居はできない。

ここから先、最近のトライでは落ちたことはないけど、
クラックからダイクへの乗り移り、ノーハンドトラバース、最後のスラブと全く気が抜けない。
最後の大レストポイントではこれでもかというくらい休む。
パンプした腕は完全に回復することはなかったが、覚悟を決めて行くことにする。

最終ボルトにクリップして、体を切りかえし、右手でスローパーを掴むと、
スメアリングしてダイクへ乗り込んだ。
そして、そのまま一気にマラ岩のてっぺんまで駆け上がった。

やった、終わった。

叫んだ。
そして、マラ岩のてっぺんにへなりと座りこんだ。
一息ついて後ろを振り返り、日の沈みかけた遠くにみえる稜線を眺める。
紅葉は始まったばかりだったが、朝よりも鮮やかにみえた。
本当に終わったんだなと思った、ほっとした。
涙がちょっとでた。

201210_excellentpower01

とにかくシルクロードの縦核心に悩まされ続けた。
結局、今シーズン26便出して、下からシルクの縦核心がつながったのはたったの2回。
その2回目がRP便となった。

あまりにできなくて、何度もやめようと思った。
ロッキーとシルクは先シーズンにRPしているので、
ムーブの新しさは全くなく、繋げるだけのルートをトライし続けることに
意味があるのだろうかと思い悩んでもいた。
でも、エクセレントパワーを完登してみて、
これが1本のラインであることに改めて気付かされたし、
マラ岩の下から上までの40mを登りきることにこそ意味があるのだと思った。
40~50分という長い間、如何に集中力を切らさないで登るか、
精神的な強さを試されるルートだと思う。

日本初の13a、そして私自身初めての13aとなった。
13を登ることを1つの大きな目標にしてきたので、
達成できてうれしいのだけど、それ以上に目標を失った喪失感の方が大きい。

とりあえず、しばらくはグレードは追い求めずに、
よきルートをたくさん登りたいな。

シルクロードの縦核心について
私の身長は165cmで、よくやられている一般的なムーブではキーホールドには僅かに届かない。
右足は3段あるうちの最上段まで上げ、
右手で一旦ゴミホールドを中継してからキーホールドにデッドするというムーブにした。
先シーズンにシルクロードをRPしたときは、右手で中継してから左足を上げるという
超絶ムーブをしたが、今年はやってもできなかった。
できるかもしれないが指皮の消耗が激しすぎて却下。
私よりも身長の低い人では、そのムーブを強いられるかもしれない。

シルクの縦核心はコンディション次第という気がする。
気温が下がった1週間くらい前から、フリクションが明らかによくなり、
登りやすくなった。強い人はコンディションに左右されないのかもしれないが、
自分にとっては夏は全くできる気がしなかった。

ギアについて
ロッキーのクラックでは#0.75を使っていたが、落ちることはないと思い、
カムは持っていかなかった。多少ランナウト。かわりに60cmのスリングを使用。
シルクロードのトラバースの2本には、60cmスリングとリボルバーを使用。

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