屏風岩 雲稜ルート

2012/8/25-26
福田、他  記 福田


雲稜ルートは、横尾から見える屏風岩東壁の代表ルートで、嵓のメンバーも10年ほど前までは毎年のように登っていた。最近では2年前に玉田・久保田組が行っており、雨のビバーグから壮絶な下降の記録が生々しくて、敷居が高かった。雨予報なら即中止のつもりで準備。敗退用のジャンピングも、玉田さんから借りた。

1日目 T4まで
前夜に沢渡の駐車場に入り、タクシーで上高地へ。運転手さんから、このところ午後3時になると雷雨になるから注意してという不吉な情報。上高地の路面は濡れており、晴天ながらちょっと心配。
荷物が重いので、水は持たずに出発。今日はT4までなので、時間はたっぷりある。なので、徳沢で1時間ばかりお昼寝した。横尾でテントなどの荷物をデポする。
梓川の渡渉は、岩小屋跡の少し下流から。坂口さんの言うとおり、飛び石づたいに渡れた。用意したネオプレーンのソックスは使わずに済む。
岩小屋跡の対岸が1ルンゼ押出しで、白い花こう岩のガレ場を登って行く。水を3リッター以上背負っており、重いし暑い。2時間ほどでT4尾根取付きに到着する。今登っている人の荷物が3人分散らばっていた。私たちもアプローチシューズをデポする。
T4尾根は、難しいと聞いており覚悟してかかるが、お泊り道具を背負っているのでつらい。

1P 福田リード。クラック沿いに登る。
2P Mリード。傾斜の強いカンテを登る。ホールドが豊富で空身ならどうってことないのだろうけれど、重くて苦労する。
3P、4P 一応ビレーして登る。
5P(通常4P)福田リード。フィックスのあるチムニー。ロールマットがはさまってジタバタする。

2時間強かかりT4到着。谷川の南稜テラスみたいな感じかなと想像していたが、4人テントなら1張り十分に張れる広さがある。ほぼ平坦で快適。ただ、すぐに岩場なので、落石が心配だ。ヘルメットをかぶったまま寝ようかな。今日は、1~2人用ツェルトに2人で寝る。とても疲れていたので、19時にはシュラフカバーに入ったが、登攀中のパーティーが19時過ぎにヘッドランプで懸垂してきた。15時ごろ雲稜の4ピッチ目を登る姿が見えたが、こんなに遅くなるなんて。私たちはそうならないように、早く行こうと心に決めた。

2日目 雲稜ルート
ツェルトのポールが倒れ、結露したツェルトが顔に貼り付いて安眠できない。気が付くと明るくなっており4時45分。しまった。4時に起きて、5時には登り始めるつもりだったのに寝過した。
お茶漬けの朝食をかきこんで、準備する。今日は先行も後続もなく、雲稜ルート貸切なのでマイペースで登れる。

1P(通常1P前半)
5時35分、福田リードでスタート。写真でよく見る凹角のⅤ級。次第に傾斜がきつくなるがホールドも残置支点も豊富。トップは空身で登るので、とても楽しい。セルフを取り、下から写真を撮ってもらう。ピナクルテラスまでの50mだが、「途中で切ってもいいよ」というので、ハング下のビレー点まで。

2P(通常1P後半)
Mリード。ハングをガバからガバへ繋いで越え、ピナクルテラスまで。スタンスのない場面ではステミングで。岩がカリカリに乾いており、フリクションもバッチリ。フリーをやっていてよかったと思う瞬間だ。

3P(通常2P)
福田リード。ピナクルの後ろをすりぬけ右にルート取りだが、踏み跡っぽい右下のラインに踏み出してみたものの、3m先ですっぱり足元が切れており後戻り。右上の、スタンスに乏しいラインが正解。ホールドにぶら下がり、一瞬足ブラになりながらトラバースする。小川山のジェットストリームのムーブだ。ピナクル目指して右上してから鋭角に左折するので、長スリングで流れ良く取る。扇岩テラスまで。

4P(通常3P)
Mリード。廣川さんの本では、フリーで登っている11cのスラブ。写真では垂壁以上に見えるが、85度くらいのスラブ。姉岩の卒業試験10bのようなカチがあるので、フリーで登れるというのはわかるけれど、今回は人工で。左のロープを隣のラインのペツルアンカーに、右ロープをボルト1個飛ばしに掛けていく。私はフォローなので、何の心配もなく快適に掛け替えて登る。垂壁以下だし、ホールドもあるのでとっても楽。フリーで登れる部分は、挑戦してみた。用意したワイヤーや4ミリスリングは、使わなかった。

5P(通常4P)
福田リード。「高度感が凄まじい」と評判のトラバースのピッチ。ハング下へのルート取りが、左寄りにいってしまうと風化した花崗岩がモリモリ剥がれる。「ラクラクラクゥッッ。ごめん(涙)」右寄りにルート取りが正解。ハングを越える時は、色のなくなった残置スリングでA0しまして、高度感満点のトラバースへ。ハーケンから垂れている細いスリングやツツジを掴みながら前進したが、Mは「ここはフリースピリッツで」と、フリーで頑張っていた。エラい。高度感より、岩の脆さが凄まじい恐怖のピッチだった。見下ろすと、涸沢に向かう登山者が見える。私は白いTシャツに白ヘルメット、ザックも緑色で全然目立たないから、登山者が見上げても見つからないだろうな。もっと派手な色のウエアにすれば良かった。

6P(通常5P+6P前半)
Mリード。スラブ。乾いているのでとても快適。傾斜もゆるい。

7P(通常6P後半+7P)
福田リード。ハーケンベタ打ちのルンゼ状スラブを登り、写真で見た草付きのビレー点。ここで終わらせてしまってもいいのかもしれないけれど、後で「それじゃあ最後まで登ったことにならないよ」と言われちゃうのも嫌だし、下降用の支点を立木から取っている写真を見た気がして、もう1P登ることに。時間もまだ9時20分だし。

8P
Mリード。本には脆い草付きルンゼとあるが、それほど脆さは感じない。傾斜の落ちた草付き混じりをランナウトして、岩がなくなる地点まで登り終了とする。9時55分なので、スタートから4時間20分かかった。

下降は、4回の懸垂でT4。4回目の懸垂は、3P終わったところ(通常2Pの途中)から出したが、着地点はT4の右下10mの薮にぎりぎり着地する。末端結びがなければ、すっぽ抜け。欲張らずに途中で切った方が良かった。T4尾根も、4回の懸垂で下降したが、3回目の懸垂でまたしても行き過ぎ。セルフ取って、Mに降りて来てもらい手前で切ってもらう。欲張っちゃいけないね。

横尾には14時前に到着。ゆっくり歩いても釜トンネルのゲート閉鎖に間に合うので、帰ることとする。疲れきりヨロヨロ歩いていると、山ガールに「頑張ってくださいねー」と励まされる。
食事処を探して松本市内に突入ついでに、学生時代のアパートを探したらそのままあった。昭和58年のままで、泣きそうになった。

研究と練習を積んで臨んだ雲稜ルート。天気に恵まれて、楽しめた。行ってみたいと集会で言うときに、「まだ無理だよ」と反対されるかドキドキしたけれど、気持ちよく情報提供や装備貸与してくれて、会の皆さんに感謝しています。ありがとうございました。

道具
50mダブルロープ2本。
カム#0.5、#0.75、#1、補助的に使用、なくても大丈夫。
リングなしボルト用ワイヤー3、4ミリスリング4、未使用。
ジャンピング、ハンマー、ボルト4、ハーケン6、未使用。
懸垂用シュリンゲ6ミリ、最上部で使用。残置用ビナ、未使用。
水7リットル/2人で1リットルあまり、ツェルト、シュラフカバー、ロールマット、防寒着はフリース。

行程
8月25日(土)
6:45 沢渡駐車場
7:20 上高地
11:30 横尾発
14:05 T4尾根取付
16:15 T4
8月26日(日)
4:45 起床
5:35 1Pスタート
6:50 4P(通常3P)スタート
8:25 5P終了
9:20 7P終了
9:55 8P終了(樹林帯手前)同ルート下降
11:00 T4
12:20 T4尾根取付
13:45 横尾
17:50 上高地BT

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