北アルプス双六定着山スキー

2010/05/01-05
坂口他3名  坂口 記


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山スキーヤーのメッカといわれる双六岳周辺。ゲレンデを飛び出した者にとっては誰でも一度は憧れる場所である。軟弱山スキーヤーの私もそれは同じで、いつかは・・・、きっと・・・、と思っていたのが、なかなか行けずであった。今年は天気予報もすこぶる良く、いつしか心の奥底に今年行かないともう先がないぞ~と思うようになっていた。メンバーもそろい、K氏・T氏とかみさんの計4名となった。T氏より、3年前の小屋番遭難事故で双六小屋はGW営業を自粛していると意見あったが、ならばテント泊でいいではないか、メッカなのだから?と自分に言い聞かせ、久しぶりに重荷をかつぐ覚悟をする。

5/1八王子→安房トンネル出口

21:00に八王子駅南口に集合し、中央高速で一路、松本へ。連休中は夜でも車が多い。
新穂高の駐車場は混み合い仮眠もとれないだろうと判断して、安房トンネルを出た駐車場にテントを張り小宴会、2:00に就寝する。

5/2新穂高→わさび平→秩父沢→鏡平

6:00起床。快晴である。ジタバタしても始まらない、今日中に双六につけばいいのだろうと開き直り、ゆっくりパッキング。車で新穂高に移動する。無料駐車場は8割程度の利用率である。入山届けをポストに入れ8:00に出る。重荷に喘ぎつつ、穴毛谷を越えると雪がでてきたが、T氏以外はスキーを担ぐ。樹林帯の中にも大きなデブリ跡を認めながら、わさび平で全員スキー&シールとする。秩父沢出会いには猛烈なデブリがあり、越えるだけでも一苦労である。スキーを外しシートラで進む。重荷が恨めしい。すでに11:00となっており、このペースでは双六は無理かもしれないと弱音が出る。秩父沢は強烈な照り返しと熱気が充満しており、息苦しいほどだ。稜線にはまだセッピが見られるが、ここまで届くことはもうないであろう。ここでまた一言、背中のビールが恨めしい。飲んでしまえば軽くなるのになど考えつつ、ゆるゆると登高する。雪は相当腐ってきており、斜度が強くなるにつれ、シールが効かなくなる。15:00頃、鏡平との分岐にようやく到着。大ノマ乗越をめざしているパーティもいるが、とてもあの急斜面をこれからのぼる気にはなれない。スキーでもツボ足でもグサグサ雪では余計な体力を使うだけだ。予定では鏡平経由で行くことにしているが、すでに双六は諦めていた。
17:00過ぎにようやく鏡平(2300m)に到着する。ボロボロである。しかし目の前は槍・穂高の大パノラマが広がる。雪が多いので一層美しい。疲れを忘れ写真を取りまくる。

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5/3鏡平→弓折岳→双六小屋→樅沢滑走→モミ沢手前の尾根→双六小屋

4:00起床、6:30出発する。本日も晴れだが風がややある。弓折岳の登りは森林限界を超えた35度ぐらいの急斜面である。雪はクラストして締まっており、われわれのへたくそなシール登高技術では不安だ。予定通りアイゼンを装着しスキーを担ぐことにした。バケツなのでテンポよく、またアイゼンもきまり、一時間で稜線にあがる。単独のおじさんはスキーアイゼンでさくさくジグザクに登ってくる。技術と装備の違いを思い知らされる。
稜線では絶景といってよいほどのすばらしい槍・穂の展望が待っていた。稜線はまだまだアップダウンがあるので、結局、そのまま最後のトラバースまでスキーを担いでしまった。最後の100メートルほどのトラバースのみスキーをつけて滑る。西斜面でカリカリのバーンで緊張させられるが、小屋が近づくごとに、憧れの双六小屋(2550m)が迫ってくる。そして、その先にドンと見えるのは真っ白な鷲羽岳だ。10:00についにメッカに来たぜ!
冬季小屋は開放されているが、この時間はだれもおらず、テントも3張りしかない。えっ、ここは山スキーヤーのメッカじゃなかったの?など思う。T氏の解説曰く、滑りを重視する昨今の山スキーヤーはテント泊なんて面倒なことはしない、みんな立山に行くのだとのこと。そんなもんなのかなと一抹の寂しさを感じる(でも、オートルートやってるパーティとか金作谷から東沢を経由してくる猛者もいた)。風を避けるため小屋の北に立派なテント場を作り、幕を張り、休息。いよいよ11:30に本日の目標である樅沢滑降に出発する。360度すばらしい景色である。どこもかしこも白い(今年は雪が多いのだ)。スキーの跡はそこらに散見されるも人がいない。双六の東面は我々の貸切りとなった。12:30までシール登高し、頂上まであと少し(2700m付近)だが、待ちきれず滑走をすることにした。最初は滑りに違和感を感じるも、4人とも狂喜し乱舞しながら思い思いのシュプールを描き、樅沢に吸い込まれていった。雪はザラメでバッチリである。
全員が初見なので、2300m付近から地形を見ながら下る。ガイド本によると、普通であればモミ沢(カナ文字)に入り込み、直上、上部で右にトラバースし双六小屋を目指すが、今回は樅沢岳上部にセッピがビッシリついているので、それを嫌って、手前の緩やかな尾根に這い上がり、直上し、双六カールにでてしまうことにした。弥助沢と樅沢出会いは一目でわかるほど地形図と一致したが、問題はどこから這い上がるかである。13:30頃最低部に到着。コンパスや高度計を確認しながら目標の尾根の2100m付近からシール登高する。結果的には間違うことなくよかったのだが、上部に抜け完全に現在地が確認できるまではヒヤヒヤした。16:00過ぎに岐阜県警と思われるヘリが見回りに来る。理由はわからないが、我々の頭上で一分程度ホバリングしたので、俺たち遭難者と思われてないか?など苦笑する。(入山者の確認記録をしていたのではないという説あり)2600m付近まで登り返し、シールを外してトラバースする。すでにカールはアイスバーンとなっており、転んだら死なないまでも谷底一直だろう。17:00にテントに戻る。とにかく戻れてよかったと安堵する。で、宴会開始。

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5/4双六小屋→双六岳→三俣蓮華岳→黒部源流滑走→三俣山荘→三俣蓮華トラバース→双六小屋

6時起床。本日は黒部源流を滑る予定である。ゆっくり8時頃出発する。それにしても、多少雲と風あるも本日も天気はよい。双六ピークは右上していく感じなのだが、早く稜線にあがりたくて直上ぎみにジグザクにシール登行する。その後、稜線を双六ピークへ、そして三俣蓮華に向う。右側はセッピの大きな張り出しが認められ、三俣手前のピークへののぼりはちょっと緊張した。時折オートルートのツアー者とすれ違うぐらいで静かなものである。11:30頃三俣ピークに到着。シールを外し、純白の黒部源流に滑り込む。2400m付近まで滑るが、雪質もまあまあで快適、快感である。樹林帯の手前で終了し、シールをつけ緩やかな坂を三俣小屋に登り返す。
小休止後、いよいよ本日の核心?である三俣蓮華直下からの大トラバースに向う。頂上直下の到着時間は14:00となり、異様に張り出したセッピがさらに不気味に見えてくる。前方には今日崩落したブロック雪崩れのあとも見える。稜線経由でもいいかなと思うも、みな少々疲れており、ちょっと判断に迷うところだ。結局、一人ずつ間隔を大きく開け、無線を有効に使い最短を狙おうということで合意した。先頭は私となった。カールのトラバース先の露岩帯下の安全箇所まで150メートルはあろうか、大きなカール地形をトラバースするのだが、雪は腐っており、スピードも出ずストックを必死で漕いだ。もちろん延々と頭上はセッピで押さえつけられている。どうにか全員が露岩帯下部に集結する。その後はふたつ目のカール入り口目指し、40度(たぶんもっとある)近い斜面をトラバースする。尾根を巻き込み、ようやく昨日滑った樅沢上部にでた。ようやく緊張感から開放された。
さらにトラバースを時にはヒールフリーにして歩くように延々と進む。ほとんど登り返すことなく、16:00には小屋に戻った。さて、最後の宴会だ!しかし、みな荷を軽くするため最小限しか持ってこなかったので早々と酒切れとなった。無念である。

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5/5双六小屋→双六谷滑走→大ノマ乗越→秩父沢滑走→わさび平→新穂高

最終日、本日も天気は晴れた。ここまで毎日晴れたGWは少々記憶にない。7時に双六小屋を後にする。また荷を担ぐことになったが、少しは軽くなったようだ。カリカリのバーンとなった双六谷をエッジを立てて少なくても私には楽しい滑りだ。右手からの双六南峰からと思われる雪崩のデブリが恐ろしい。この谷底でこんな大きな雪崩をくらったらひとたまりもない。雪が多い年、大ノマ乗越経由で入山する場合は、要注意である。午後の双六谷内は、左岸を巻くように登高するべきである。谷底で上部が見えないのでなおさらだ。8:00前に双六谷が屈曲する登り返し点につく。視界さえあれば地形的に迷うことはないだろう。下山組みには他にも2パーティいる。1パーティはツボ足、もう一組はシールである。我々は迷わずバケツをもらってツボ足とする。かみさんと私はスキーを引いた(コルまではほぼ直線なのでラクでした)。1時間で大ノマ乗越(2450m)にたどり着いた。もう登ることはないのだ。雪質は気温の上昇で、すでにグサグサ一歩手前だが、フィナーレは蒲田川左股(1450m)への標高差約1千メートルにおよぶ大滑降だ。出だしのみ斜度があるが、あとはおおむね30度程度、下部は15度ぐらいのゲレンデのような広大さである。なるべくシュプルールのない雪面を探して滑る。またしも狂喜し乱舞する状態となる。今までの疲れを忘れさせ、そして最高に贅沢な滑りをさせてくれた。これこそ山スキーの醍醐味である。
出会いで大休止、途中デブリ跡を越え(疲れた体にこれがきつい)、わさび平へ。12:00には新穂高バスターミナルに着いた。
お疲れ様でした!

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その後は、平湯の「ひらゆの森」で温泉につかり、ターミナル傍の食堂でカツ丼と山菜のてんぷらを食す。美味なり。渋滞は拍子抜けするほどなく、16:00時に出発するも19:45分には八王子に到着した。満足いくGWでした。

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