谷川岳 烏帽子奥壁

2006/6/25,29,2006/8/3
横澤 記


数年前、矢野さんと南稜フランケ・エキスパートを登ろうとしたことがあった。

エキスパートは残置ピンが皆無のため取り付きが良く分からず、結局、微風快晴の出だしからスタートしたのだが、先の読めない不安とランナウトの恐怖に、まったく前進できなかった。
やっとこ1ピンかけると、ちょうど雨がポツポツと降ってきた。
これ幸いと、敗退の大義名分を得てさっさと下降を開始したのだが、我々の隣では、烏帽子奥壁のド真ん中を登攀しているパーティが見えた。我々と比較するまでもなく、文句なしに格好よかった。

それ以来、いくつかのルートを谷川で登ってきたが、鳥帽子奥壁だけは、手付かずの状態で残っていたので、今年から登りこみたいと思う。

○南稜
2006年06月25日 羽場・玉田・横澤・塚田(日本登攀倶楽部)

朝起きると小雨が降っていた。
もちろん、一ノ倉は真っ白で、一寸先はガス。

とりあえず、いけるところまで行ってみようと、のんびり準備をしている玉田・塚田ペアを尻目に、羽場さんと雪渓をサクサクと詰めていく。ひたすら詰めたところで、ダブルアックスが必要そうな雪壁に行く手を阻まれ、あっさりと下降を開始。すぐに駐車場に到着した。
羽場さんは到着するなり駐車場にデポしてあった、パック酒をがぶ飲み。
帰宅の咆哮をあげた。
いざ、一ノ倉に別れを告げて、湯テルメへ、と、後発の玉田・塚田組がいない。
そういえば、雪渓を下りながら、すれ違った記憶もない。

敗退が確定した後の下りはよいよい、2度目の登りはつらい。
羽場さんの顔の赤みがみるみる増していく。

よーやく先行に追いついたのは、「南稜テラス」。
しかも、こんな天気のなか、黙々と登攀の準備をしている先行ふたり。
我々も予定していたエキスパートはさっさとあきらめて、南稜第二登を目指す。
登攀そのものは濡れていていやらしい箇所もあったものの、岩は硬くてビレイピンも良い。残置の多さが気になるが、人気ルートである意味を充分に理解した。
が、下降は散々足る結果であった。

久しぶりの6ルンゼをまっすぐにくだり、南稜テラスの下までダイブ。
ロープの解除や登り返しなどに時間も食ってクタクタ。
どんな山行にも教訓がある。
アルパインとは何か、深く考えさせられる山行でありました。

○南稜フランケ エキスパート & 南稜フランケ ダイレクト
2006年06月29日 玉田・横澤

やっぱり、岩は乾いていなくては。
と、平日貸切状態の一ノ倉。僕らの他には、南稜ガイド登山が一組だけ。
梅雨の晴れ間、絶好のコンディションの中、幸せをかみしめながら登攀を開始。

1P:下部でナッツをかませた次にクリップしたピンはビレイ点。グレード的な難しさはないが、ウワサ通りのランナウトを堪能。
2P:ランナウトにもなれ、クライミングの楽しさを満喫しながら高度を稼いでいく。
3P:目の前のハングを超えて汗まみれで草付に飛び込む、豪快なピッチ。

南稜をさっさと懸垂して、引き続き、ダイレクトへ。

鎌型ハングの真下よりスタート。

1P:ハングを直上する(Ⅳ)ところをⅤ級の右上ルートへ迂回。
途中でこぶし大の浮石が外れたため、一ノ倉沢へ遠投。後続がいないって素晴らしい。
2P:ヨレヨレの木を踏みつけて、カチカチフェースを登る。
3P:最後の凹角がややいやらしいか。
4P:エキスパートの出ロへ草付を掻き分ける。
特に魅力的でない、上部はカット。

エキスパートは谷川にしてはめずらしく岩も硬く、フリークライミングを楽しめる非常に良いルート。
ダイレクトは上部をカットしたのでなんともいえないが、どこを登らせたいのだか良く分からない、なんだかすっきりしないルートでした。
と、長年の宿題を片付けて、帰宅。

○南稜フランケ
2006年08月03日 玉田・横澤

「日本の岩場」を繰り返し読み直しては、“机上”で何度も完登しているルート。
そして、自分にはずっと早いと思い続けてきたルート。
過去、飯田・矢野ペアがルートファインディングに苦しみ、闇夜からへ電下山をしてきたときの記憶が鮮明によみがえる・・・二人とも泥まみれだった。

1P目:ボロイランナーを頼りにフェイスを右上。
傾斜がゆるくなるとお決まりのランナウト。
2P目:草付の凹角を左上し、ハング下手前から右ヘトラバース。
トラバースはポロくて、非常に怖い。
3P目:ハング下を右へ回りこみ、フェースを直上。気持ちのいいピッチ。
4P目:左上し、左壁を目指す。
5P目:南稜を左に見て、フェースを直上。
6P目:南稜へ合流する予定が、馬の背への脱出口が分からずに直上。YCC左へ突っ込む。
ハング下の草付をトラバースし、馬の背へ到着。

・・・思っていたよりも、あっさりと終わった。というのが、終了点での感想。
それが積み上げてきた経験によるものなのか、何なのか、よく分からない。残念ながら想像していたような感慨深さは沸いてこなかった。

奥壁には何丈ものルートが引かれており、それらは複雑に交差している。 今回3本ルートを登ったことで、鳥帽子奥壁でのルートファインディングにある程度自信がついた。 ここを初見で登れるような、岩を読む能力のあるクライマーはすごいと思う。 ちなみに、今の流行は残置ピンをおうことなく、岩を自然なラインで登ることらしい。 そのレベルには、到底およばなそうだが、まずは地道に既存ルートを登りこんで、岩を読む能力を高めたいと思う。

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