剣岳 八ツ峰

2004/5/1~4
桜井、羽場、中西  羽場 記


5月1日(土)
八王子~扇沢

午後4時集合に余裕を持って家を出たが、16号線の数箇所の工事で集合時間には間に合いそうも無く電話連絡しようにも、携帯を忘れてきてしまい連絡を入れられなくなってしまった。このとき、携帯を持ってこなかったことが「結果ラッキー」になろうとは思うはずも無い。
八王子を予定よりやや遅れて出発。途中、ファミレスで豪華な食事をとり、酒肴も仕込み扇沢へ到着。いつものようにささやかな宴を開き就寝。

5月2日(日)
扇沢8:00~黒四ダム8:35~内蔵助平11:20~はしご谷乗越13:20~真砂沢14:45

扇沢からの始発は7時と思っていたが、連休で6時から動いていたようだ。今日は真砂沢までだからゆっくりと8時のバスに乗る。お客は春スキーと黒部立山観光の人達でいっぱいで、山登りの人は少数派だ。ダムサイトで身繕いし出発。まずは一気に黒部川へ下降。中西は相変わらず雪山の下降が下手糞でスタートから遅れる、やれやれ。夏道だと河原まで時間がかかるのだが、雪がついていると楽である、この先も期待できそう。
内蔵助沢出合いを少し登ったところで休憩していたところ、丸山東壁側から、雪のブロックが我々の少し下に落ちてきて、肝を冷やす。丸山東壁が間近に迫っており、迫力のある眺めだ。夏は木が邪魔をして見えないところだが、これも雪のおかげ。
夏だとハシゴ谷乗越まで嫌になるほどの道のりであるが、雪のおかげで真直ぐトレースを着けられ楽である。歩くのもゆっくりと休憩も多めにとり、松元さんとの山行のペースである。好天にもかかわらず、汗もさほど出ない。ハシゴ谷乗越では、好天の下、眺望を楽しむ。
乗越から夏は尾根づたいだが、ここもルンゼを一気に下降。途中、明日の登路を確認したところ、正面に見えるのは八ツ峰Ⅰ峰であることをはじめて知る。道理で三ノ窓が判らなかった訳だ。真砂沢には、スキーの若者パーティーと雪稜の熟年パーティーがテントを張っていた。
我々もテントを張り、明日の登路を確認し、早めに宴を開き就寝。

5月3日(月)
真砂沢5:40~Ⅰ峰12:20~Ⅴ峰15:15-Ⅴ-Ⅵのコル16:30

明日は真砂沢に戻ってくる予定なので、食料・飲物等木の根元にデポ。八ツ峰の頭だと思っていたのがⅠ峰であったのだから、今日の行程は長そうである。三ノ沢を詰められるところまで登り、途中で稜線に出る予定で出発。日が照る前にできるだけ稼ごうと必死に登るが、そんなには甘くない。ちょっとばかり登ったところで、お日様のお出ましである。暑い、半袖で十分だ。後立の眺望はまずまずだが、鹿島槍は頭に雲を被ったままだ。
随分高度を稼いだと息づたところで見上げると左側のラインがおいでおいでと言っているかのように、うまい具合に雪が着いているかに見えたことから、左側の稜線を行くこととした。この稜線があまり登られていないⅡ稜であることをしばらくして思い知らされることとなった。楽に見えた稜線に出ても一向にⅠ峰の頭は見えず、雪壁も斜度を増すばかりである。
ここで中西ピッケル一本のみの装備で来たことが判明、また、アイゼンの紐が切れるわで、一時罵詈雑言の嵐やまず。ナイフリッジ、急斜面の雪壁を微妙なトラバース、這松伝いの強引な登攀、懸垂下降、Ⅲ級程度の岩登りとなんでもござれで、隣のⅢ稜が恨めしく見えてしまうのだった。こんな時、桜井リーダーに実力を遺憾なく発揮してもらい、残る2名もなんとかクリアー。Ⅰ峰の頭に出たときにはもう達成感十分、お疲れ様でしたと下山しても、良いような気持ちだ。Ⅰ峰を上り詰めたところで、ポツリボツリと小雨が降り出した。思ったより早く降り出したもので、本降りにならねばよいがと先を急ぐこととした。
Ⅰ峰からはトレースがついており楽だ。Ⅱ峰、Ⅲ峰とも懸垂で下降、雨の中ロープワークに少々手間取るも問題なく通過。途中のマイナーピークをひとつの峰に数えていたのか、Ⅳ峰を前についにⅤ峰に着いたのかと勘違い。「誤峰でなければいいね」などと冗談が出るくらいの余裕でもって、取り付くも、やっばり誤峰で、実はⅣ峰でした。ここも懸垂で下降、いよいよ本日のフィナーレのⅤ峰に取り付く。午後3時15分Ⅴ峰到着。記念撮影等して、しばし休憩。
懸垂2回でⅤ-Ⅵのコルに到着。明日の天気は悪化することが予想されていたので、真砂沢に戻る手もあったが、早くゆっくりしたいがためコルに幕営。雪洞もあったが、狭く汚かったこともあり、雪洞は利用せず、後で後悔することとなった。
この日も酒だけはしっかり持ってきており、酪訂する程度に宴を開き就寝。

5月4日(火)
Ⅴ-Ⅵのコル11:30~剣沢出合12:20~剣沢小屋14:50

深夜から天候は大幅に悪化。暴風でフライが飛ばされた上に雨脚も強まり、気がついたらテントの中に水がたまり、風上に頭を向けていた羽場がまずはシュラフまで水が潜み込み寝られなくなる。まだ早朝でもありどうすることもできない。水を避けるためには痛さもがまんし、ガスカートリッジの上でも寝ていたが、震えも出てくる始末。そのうち全員が水没。
さらに桜井さんはドライアイの悪化で唸る始末。横になっているときに中西が「靴、靴」というが自分では口を出すだけで、体は動かさず。羽場が2度目に見たときには、遅かりしで、羽場のアウターが飛ばされていた、ガックリ。そのうちテント内はプール状態となり、水をかき出してても、テントの中で雨が降っている状況では、水は増えるばかりである。結局、無駄な抵抗はやめ、プールの中の3つの小島に皆座り込んで膝をかかえて強風と雨にただ耐えるばかり。強風と強い雨は一向にやむ気配無く、11時に撤収を決断、強風の中無事だったテントも破き、またガックリ。桜井さんは目の痛みに耐え、羽場はインナーでの歩行と歩みはなかなか捗らない。なんとか剣沢出合に到着、デポをどうするか話し合うも、とても取りに帰る気力なく、残置を決定。剣沢小屋までの道のりは遠く、へとへとになり小屋に到着。生き返った!小屋では、乾燥室があり助かった。小屋の温かい食事に満足し、その日は皆疲れていたこともあり、宴はそこそこに就寝。桜井さんは朝まで唸っている状態。
被害:桜井/ドライアイ悪化、携帯水没;羽場/アウター、テントポール、テント破損;中西/なし

5月5日(水)
剣沢小屋7:20~室堂9:50~扇沢11:50-八王子

小屋の温かい朝食を取り、今日は帰るだけなのでゆっくりと出発。羽場の登りはインナーでおそるおそる、桜井さんは目の痛みに耐えての歩行と相変わらず順調とはいえない状態での帰り道である。途中の下りで桜井さんが転び流されるにおよんで、目の状態が思いやられる。
だましだましで何とか室堂に到着、ロープウェー、ケーブルカー、電動バスを乗り継ぎ扇沢に到着。山小屋利用といい金のかかる山行であった。桜井さんの目の状態もあり、風呂にも入らず、そばを食べるだけの帰還と相成った。
来年は残りをやらなくっちゃ。

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