八ヶ岳 大同心正面壁 雲稜ルート

2004/2/21-22
矢野・横澤  横澤 記


大同心への挑戦は、昨年に引き続き2度目となる。
1度目は昨年(2003年)の3月で、その時は1ピッチ目の途中から8m程落下している。これが本ちゃん初フォールで、思いっきり左半身を強打。肩が上がらなくなり敗退。おそらく人工入り口の残置3mmシュリンゲが切れたことによる落下と思われる。坂口さんにロアーダウンで下ろしてもらいながら思いっきり味わった敗北感。
絵に描いたような見事な敗退劇に、リベンジを近いながら美濃戸口へトボトボ下った日からはや1年。

まるでGWのような暖かな陽気の2月末、矢野さんとともに再挑戦する機会を得た。
朝4時30分に起床。昨晩新宿を23時に出発し1時過ぎに到着。2時ごろまで起きていたので約2時間30分の睡眠だ。さすがに眠い。
石尊稜予定の羽場さん・井出さんの銀行コンビが軽快に林道を飛ばす中、若手(?)二人のスピードがなかなかあがらず。しまいには「先にいっているよ」と、おいていかれる。
寝不足やら風邪気味やらで、本日の晴れ渡った天候とはウラハラに体の調子は最悪。
「明日にしませんか?」と寝不足で苦痛の叫びを上げる矢野さんに「天気は今日しか持たないよ」と、風邪気味で体が重い自分に自虐的なハッパをかけつつ赤岳鉱泉を目指す。

赤岳鉱泉には8時30分到着。上の駐車場から約3時間。こんなに時間がかかったのは久しぶりである。のんびり準備をして大同心稜を上がる。おもわず汗ばむような暖かさだ。見上げる大同心正面壁には雪一つない。微風・快晴・雪着なしの最高のコンディション。それだけに、今日登れなければ本当に登れるだけの実力がないのだろうと、変なプレッシャーがかかる。

取付きでザイルを出していると、ザックの中からこぼれたガスヘッドが足下から裏同心目指して転がっていく…
また、山での落とし物が増えた。。。
屏風でツェルト、デナリでカメラ、阿弥陀南陵で食糧、大同心でガスヘッド。荷物が転がっていく時の虚無感はなんとも形容しがたい。ザイルを結ぶ前に、早くもやる気がそがれる思いがした。

10時00分 横澤先行で登攀スタート。
1P 左から周りこんで大きくトラバース。直登よりも回り込んだ方が簡単な感じ。しばらくフリーのセクションが続くが、ホールド・スタンス共に豊富。ふと目前にペツルがある。頼もしい存在に安心して突っ込む。小ハングにぶち当たるところでアブミをセット。また落ちたらいやだなと思いつつ、人工をつないでの出口がちょっと怖い。途中Zクリップ気味のミスもあり、のんびりリードして40分ほどかかった。

2P 矢野さんリード。左のフェースを人工でつなぎ、傾斜が落ちたところもかけかえで処理。快適なA1。ビレイ点をひとつ飛ばして、カンテを右手に回り込み直上。回り込んだ後のフリーがなかなかシビア。裏同心を登ってきたパーティが下に見える。「ガスヘッドを見かけなかったか?」問うと、見なかったという素っ気ない返事。うっすらと太陽がでてきたし、後続もいないのでのんびりとやる。

3P ピナクル目指して右上。傾斜が落ちてきてひと安心。雪がついていたら厳しいところだろう。

4P 人工で凹角を乗り越えトラバース。人工からフリーに移るところがちょっと難しい。

5P トラバースの途中でピッチをきったため横澤がつるべでドーム基部まで。

6P 残すのは見上げるドームのみ。ここで最後にどちらがドームを登るか?とやりとりがあったが、結局矢野さんに譲ってもらった。人工の合間にほどよくフリーを交えて高度を稼ぐ。最後はすっきりした気持ちのいい人工ピッチ。岩がぼこぼこ飛び出しており、ホールドにはこと欠かないが、その分、岩が外れそうで怖い。3mmシュリンゲを頼りに体を乗り越えると、急に景色が変わって見えた。大同心の頭だった。

条件の良すぎる時に登ったせいか、リベンジ達成の気概はあまり感じられなかった。それでも気持ちの良いクライミングで、ひさしぶりに満足いくものだった。
大同心沢の源頭を忠実に辿って、大同心稜を下る。途中で夕闇が迫ってきたが、ヘッドランプはつけずに鉱泉にたどり着いた。
いいクライミングの後で潜り込むシュラフは最高である。今後も自分が納得のいくトライを重ねていきたい。
大同心はビレイ点も結構しっかりと整備されており、おすすめのルート。また来年もチャレンジしたい。

【行動記録】
5時30分 :出発
8時30頃 :赤岳鉱泉着
9時30頃 :取付き
10時00分:登攀開始
16時30分:大同心の頭
17時30分:赤岳鉱泉着

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