八ヶ岳小同心クラック

2003/12/13~14
メンバー:山本(裕)、羽場、中西  中西 記


八王子駅南口におりると、青い車のおにいさんが声をかけてきた。「あのう、宮田さんですか?」「ちがいますけど」どこかの山岳会の人らしい。後から来た「宮田さん」は私とは似ても似つかぬ女性だったけど、とにかく落ち合えて青い車は出発した。ところが、こっちのメンバーは誰もこない。約束の時間ジャストに羽場さんから電話だ。「今、多摩川の橋の上。あと20分くらいかかりそー」ちっ。裕さんもこない。さっきの宮田さんになりすましとけばよかった。結局3人が集合したのは11時40分過ぎでした。
その後、美濃戸口に着いたのが午前2時頃。雪がないじゃん。おかげで美濃戸山荘まで車で行くことができたけど。駐車場のあたりはうっすらと雪化粧。テントを張って寝付けのお酒を飲んで就寝しました。羽場さんの「各地の物産」もいろいろご相伴に預かりましたが、今回の「ホヤ」のするめみたいなやつは絶品でございました。
翌朝、快晴の土曜はすっごく寒くてみんな7時には起床しちゃいました。のんびり出発して赤岳鉱泉のテン場に着いたのが午前11時頃で、積雪が少しあります。このままテントに入るとお昼寝タイムになっちゃうので、ジョーゴ沢にいってみるべぇということになりました。裏同心ルンゼは凍ってる
らしいからきっと混んでるだろうってことで。で、ジョーゴ沢のF1はかろうじて凍っています。登れないことはなさそう。ふんじゃ、羽場さん登ってみてよ。つららをボキボキ折り、薄い氷をバリバリ落とし、せっかく成長しかけている氷を落としながら登っていきました。その後、中西と裕さんがさらに氷をはがしたのでした。期待のF2も結氷とまでは行かず、大きな氷のかたまりのど真ん中にドームができていて、その中を水がどうどうと流れ落ちています。ああやって氷は成長するのかあ。勉強になるなぁ。しょうがないので滝を巻いて右俣へ進みF3を見てきましたが、これもとても登れそうもありません。しょうがないので引き返すことにしました。偵察結果「アイスクライミングには不適」(裕さん記)。F2の巻きはちょっといやらしかったので(補助ロープがついてた)懸垂下降で降りることになったのですが、確か穴ぼこの中は冷たい水。まわりはつららだらけだったはず。もし、降りたところが薄氷だったりしたら。。。いや、先輩方を信頼しよう。最初に勇敢な裕さんが下降し、次に中西が降りました。いやあ、水しぶきの音を聞きながらつららをこわすのってスリル満点。さっきのF1では7、8人が集まって登っていました。もう氷は残らず落ちちゃったかも。この日はこれで終わり。
日曜の朝4時起床。寝れなかったよお、うるさくて。隣のテントのおやじらが10時過ぎまで大声でしゃべっているし、羽場大臣が大いびきをかいているし。6時出発なのでのんびり準備をしていたら、裕さんにちっこい目で怒られました。しゅん。
へッデンを点けて出発、鉱泉から大同心沢に行く道に入ったところで男性4人がうろうろしてます。変なのと思いながら先に進みました。ところが彼らが後ろを歩いてきて、一番後ろを歩いていた羽場さんに「どこに行かれるんですか?」「小同心です」そして、彼らは私たちの後ろをつかず離れず追いかけてくるので、私たちはせっせと歩き続けるはめになったのです。途中、お先にどうぞと裕さんが薦めたのに「いえ、私たちは遅いんで」と遠慮したとき、5月連休の鹿島槍を彷彿させたのはなぜだろう。彼らは小同心への道がわからず取り付きもよくわからなかったので、誰かがくるのを待っていたらしいと後から結論。鹿島槍のときと同じだわ。まあいいけど、おかげでほとんど休憩もとらずに大同心取り付きまできました。ルンゼの向こうに小同心。このあたりまでくると積雪は平均15センチくらいでしょうか。
「げ、ここをトラバースするんですか?ロープなしで?ロープなしで?ロープなしで?」雪がもっと深かったらまだなんとかなりそうだけど、落ちたら下まで一直線じゃん。「だいじょうぶだよ」あっそ。羽場さん、もっとゆっくりいってくださーい。恐いんだから、まじで。「げげげ、ここを登るんですか?ロープなしで?ロープなしで?ロープなしで?」「だいじょぶだよ」いや、そうは思わないぞ。途中、すっごい恐い岩場のトラバースでどうしても一歩がでなくなりました。左稜線のときと同じだわ。恐怖がピークに達して修復不可能なエラーが発生しました。ロープだしてください。
下りられません、進めません、動けません。ああ、かっちょ悪いけどしかたない。こうして再び同じ「泣き」が入ってしまったのでした。しくしく。
小同心の取り付きに着き、準備をしていると、さっきの4人組が追いついてきました。くそ。裕さんも羽場さんも登ったことがあるということで、私がリードをさせてもらうことになりました。しかし、さっきの動揺が残っている上、4人も待ってるとプレッシャーが。。。でも、この機会を逃すといつリードできるかわからんし。ということでそろそろと取り付きました。
1ピッチめはでこぼこのフェイスからチムニーに入ってそのまま行けぱビレイ点があるからと教えてもらい、かじかんだ手で岩をつかむ。確かガイドブックには2ピッチ目のチムニーが難しいけどあとは簡単と書いてあったぞ。でもホールドはいっばいあるのに支点がぜんぜんないじゃん。岩っころにシ
ュリンゲを巻きつけてごまかしつつ登りました。さつきのトラバースに比べたら、こんなんちっとも恐くないもんね。2ピッチめも1ピッチめと同じようなもんだよといわれ、ちょっと安心。チムニーを抜けるときに支点がないのはちょっと恐かったけど、ここで下りま~すなんて言うわけにもいかんし。
3ピッチめになると超特大「エビの尻尾」が成長しまくっていて、どれが岩なのかエビなのかわからなくてかたっばしから砕いていたら毛糸の手袋がぼそぼそになってしまったわい。フェイスを抜けると眼前にすばらしいパノラマがとびこんできました。「おお、きれい」冬の凍てついた空気の向こうに北アルプスが。でも、ここからどっちにいくんだろう。まさかあそこをトラバースするんじゃあ。いかん、びびりがひたひたと寄ってくる。「あのお、こっからどっちに行くかわかんないんですけどぉ」といって、無理やりピッチを切らせていただきました。でも別のガイドブックには、ここでピッチを切ると書いてありました(補足またはいいわけ)。次のピッチは左にトラバースして少しの草付きを登るんだけど、やっばし支点がないなあ。後ろから「がんばれっ」という掛け声に思わず「がんばりますっ」勢いで登ったら目の前に支点があるじゃん。草付きを登ったところがたぶん小同心の肩ってとこじゃないかなあ。ここから上のフェイスを登るらしい、でも最初の一歩がでない。
ここに足をのせるのよって感じの岩が突き出ているんだけど、ちょっと足の長さが足りない。苦労して登ったら、あれ?ここで終わりなのかなあ。「あのお、この先も登るんですかぁ」ちゃんとガイドブックを最後まで読んどけよ。でもさあ、もし上まで行って戻れなくなったら困るじゃん。ピナクルで無理やりビレイをとって二人に来てもらい、確認作業。「ここで終わりだよ。あっちに踏み跡がある」と裕さんに笑われた。ちっ。しかも「今の登り、どこが難しかったの」ちっちっ、背の高い人には理解できない難しさなのよ。おまけに「今だからいうけど、あんな小さな岩に支点とっても役に立たないよ」
ちっちっちっ。
小同心左岩峰の頂上で休んでいると、後続パーティの最初の人がやってきました。4人のうち最初の二人はわりと早く登ってきてましたけど、残りの二人はすっごく遅いみたいでした。ま、彼らのことはほっといて、私たちはここから横岳山頂直下の岩を登るのかしらんと思ってたら、西壁基部から左の一般登山道へトラバースするんだって。ぶっ。でも今度は最初からロープをつけてくれたので安心安心。どきどきしながら雪壁をトラバースして登山道へ出ると、先々週は真っ黒だった硫黄岳経由で下山です。
羽場さんはとっとと歩いて先にいってしまったので、あとからてろてろと歩いていたら、裏同心の出合いのところで道をまちがえてしまいました。裕さんはそっちは違うよと言ったのに、なぜかいっしょにそのままその道を進んでいきました。たぶん赤岳鉱泉に着くよ。踏み跡をたどっていくと取水管沿いに続いていて、沢下りになってしまった。何回か沢を渡り、ちょこっとやぶこぎすると、あら、テン場だ。羽場さんが妙な顔をしてこっちを見てました。午後2時45分でした。
かたづけが終わると、羽場さんが「残ってる焼酎ちょうだい」えっ今飲むんですか?「だって、運転しなくちゃ」そんなに飲みたいんならビールで乾杯にしましょうよ。というわけで鉱泉でビールを買ってきて乾杯。おいしかったわあ。
なんだかエビ天蕎麦を食べたいと主張したら、蕎麦屋に行くことになりました。おっこと亭というおいしいお店があるというのでいってみました。確かにそばはおいしいんですけど、ざるそばともりそばとかけそばしかないよ。きりだめ(木で出来た入れ物のこと)ってやつを三人で四人前を食べ、大好きな蕎麦湯を飲み干して、お風呂に寄り、帰途につきました。アプローチのことは忘れよっと。

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