前穂高岳 屏風岩雲稜ルート

2002/9/21~22
メンバー:山本(裕)・羽場・横澤  横澤 記


日本国政府のハッピーマンデー対策とやらで、我々サラリーマンにうれしい3連休がやってきた。山に行くには絶好の好機であるが、皆も似たよーなコトを考えるようで、最近、金曜夜の高速が非常に混雑している。羽場さんの車で松本までの長い旅路を終え、AM2時30分頃、ようやく沢渡村営駐車場に到着。そのまま駐車場にテントを張り就寝した。

翌朝5時ころ周囲のざわめきで起きてタクシーで上高地へ。
6時00分 上高地 着
8時00分 横尾  着

こんなに混雑している上高地は始めてだ。横尾まで人の波にもまれて進む。多くの登山客でにぎわっていている新道の岩小屋から屏風岩目指して徒渉すると、そこはもうクライマーだけの静かな世界だった。枯れた沢を登るほどに威圧間のある赤茶けた壁が目前に迫る。
そんな風景にドキドキしながらそのまま屏風の取付へ進む。T4尾根はすでに順番待ちの列。先行の2パーティがずいぶんのんびりしている。どうやら新人研修中のようで、スタートまでに結局1時間近く待たされた。
12時00分 登攀開始 T4尾根 羽場
T4尾根は羽場さんのリードで進む。アプローチどころか、結構厳しい登攀である。T4尾根2ピッチ目で羽場さんリード中に、大きな落石が落ちてきて、思わず屈み込む。岩塊の崩れていく音に、本ちゃんムードが一気に高まる。先行の新人さんは途中で勝手にセルフビレイをはずすなど、危険行為が目立ち、裕さんより指導が入る。
14時00分 いよいよ屏風岩のスタート
1P 裕さんのリードでスタート
実はこの計画は、「前穂東壁」や「北尾根」への継続も視野に入れての登攀であり、この時点では、今日中に屏風を登りきってしまおう、あわよくば、北尾根のコルまで行こうなどと本気で考えていた。
登るほどに傾斜の増す凹角を重い荷物を背負いながら進む。セカンドの羽場さんがアブミを使わずにフリーで突破していくので、僕もフリーで行かざるを得ない。ピナクル下のビレイ点へヒーヒーいいながら辿りついた。腕がすでにパンパンに張っている。荷物を背負いながら登るのが、こんなにつらいとは...。
2P ピナクルを力業で乗り越し、右へアブミトラバースした後、フェースを左上して扇岩テラスへ。ルートファインディングが難しい。東稜ルートのクライマーを眺めながら上へ。
3P 横澤がリードさせてもらうべく、テラスでザイルを組みなおす。ここは単純なボルトラダーのアブミのかけかえなのだが、いざやってみると難しい。1ピッチ目で使ったウデが回復していないこともあり、ペースが全く上がらない。完全に練習不足だ。
どうにか登りきったビレイ点で羽場さん・裕さんをビレイ。2人を迎えるころには屏風岩に夜の帳が迫ってきていた。「タイムアップ」。真っ暗な中、懸垂下降を開始。ヘッドランプを出すべくザックの雨ブタをあけたところ、シュッと何かが闇の中に吸い込まれていった。「?」。敗北感一杯で闇夜の懸垂下降。懸垂中に、さっき落としたものがツェルト(ICIで購入。使用回数1回)であったことに気が付き、敗北感にさらに拍車がかかる。とほほ。扇岩テラスに降り立った。
今夜のお宿は「大テラス」。ツェルトとの惜別を噛みしめながら、シュラフカバーだけではさすがに肌寒いが、雨が降らないことを感謝。裕さんからもらった梅酒を10倍に薄めて飲む。うーん。ゴゾーロップにしみわたる。
翌朝、3Pを結局裕さんにリードしてもらい、登攀開始。リードできないのが残念だが、昨日の散々たる結果で自分の実力不足を認めざるを得ない。順調に伸びるザイルを眺めながら、アブミのかけかえ方法を学ぶ。裕さんはさすがに安定した登りだった。昨日に引き続いての2度目のボルトラダーはいい練習になった。本来はゲレンデできっちり仕上げておくべきだったなと、反省しつつ昨日よりはマシなタイムでビレイ点へ到着。
4P ビレイ点上のバンドへ上がるところのフレークが浮いており、はがれそうでいやーな感じ。緊張しながらバンドへ這いあがり、ヘルメットをガンガンぶつけながらトラバースルートを行く。
5P フェースを直上し、左へ回りこむ。ランナウトする箇所にはフレンズの1番をかませてランニングをとる。
6P ここで、横澤がリードさせてもらうべくザイルを組みかえる。快適なスラブ。グングン高度を稼ぐ。このピッチが濡れていたら悲惨だろうなぁと思いながら、暑すぎる日差しを浴びて進む。
7P 草付き混じりの簡単なピッチ
8P もろく湿った土混じりのルンゼ。ロープいっぱいで終了点手前の立木でビレイ。
そのまま踏み後を辿り、屏風の頭へ。所々土壁がでてきてモロイため、落石に注意しながら登る。
ハイマツの森をかき分けて屏風の頭に着く頃には、暑さでバテバテになってしまっていた。当初はやれ東壁やら継続やら威勢のいい話をしていたが、あまりの体力不足に自分の実力を思い知った。やはりアルパインの基本は体力である。結局、そのままパノラマルートを下ることに。またまた敗北感いっぱいで、上高地まで走るように下った。
相変わらず混雑している上高地で、タクシー待ちの列に並びながら前列の人と雑談。「屏風岩を登ったんですか?」との賞賛の驚きにも、気恥ずかしさを感じる。本ちゃんの厳しさを痛烈に味わった屏風岩デビューであった。

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