一ノ倉沢 烏帽子沢奥壁ダイレタトルート

1999/10/10
メンバー:山口博・節  山口節 記


このルートの登攀は、4年前に一度トライしたのだが、その時は3P目のハングから滝のように水がしたたり落ちていて、仕方なく2P目途中から下降して、ルートを変形チムニーに変更した経緯がある。それ以来チャンスに恵まれずに今回にいたった。言わば私達にとって長年の宿題を片付けにきたような気分だった。
10日朝6時前出合いを出発。ヒョングリの滝で大渋滞していて、下降点に近づくまでに30分以上かかり、さらに皆、懸垂下降で脈番待ちをしている。私達は合間をぬってクライミングダウンで先に下りることにした。
テールリッジを登りきると、そこには中央カンテ、南稜ルートに7~8パーティー、変形チムニーに4~5パーティーくらいいただろうか。奥壁ダイレクトは私達だけだった。
登攀開始8時20分。

1P目.フェースを右上していく。朝一番の攀り初めは体が重い。私達はリードが空身でザックはセカンドが背負うことにした。
2P目.正規のルートは草付きの凹状を行くのだが、草付の右のフェースYCC左ルートを行くことにする。草つき手前の小さなハングを越えてフェースを細かいホールドをひろいながら直上していく。リードがいやに時間をかけて慎重に攀っているなと思ったらⅤ級+のルートなのにプロテクションがなく、40メートルに5本くらいしかなかった。
3P目.核心のピッチだ。ハングの下を右に回り込みフェースを直上(どちらかいうと左斜上)、ハング下が濡れていていやらしいが全体にスッキリとして快適なピッチだった。3スラを攀っている村上さんと三浦さんのコールが聞こえて来る。グッチーの黄色いズボンが岩に映えて、あの辺たりにいるのだなというのがよくわかる。
4P目.フランケルートと分かれて右にやや下降気味にトラバースし、変形チムニールートのちょうどチムニーの上辺たりに出る。凹角を越えてやや傾斜の強いフェースを左上していくのだが、ルート図はⅣ+になっているがⅤ級はあるように思う。ここも15m以上のランナウトだ。
5P目.パートナーに「リードしてみるか」と突然いわれ、セカンドのお気楽気分で攀っていたので、ちょっと躊躇したが交替することにした。ビレー点の6m程上部にハーケンが見える。その上は白くきれいなフェースにボルトラダーだ。ハーケン目指して直上するが、結構きびしくとてもⅣ級のフリーに思えない。後から聞いたらルートはもっと右のカンテよりでボルトが2本打ってあったとのことだった。人工登攀になる所はボルトの間隔は結構速いのもあり、アブミの最上段でも届かなくボルトの上に乗ったのもあった。このピッチの終了で一息ついて小休止をとる。後はツルベ式でいくことになった。
6P目.正面に見えるチムニーを越えて行くのかと思ったら以外に悪く上がハングしていて越えられない。ボルトが2本打ってありしかも多分皆ここで行き詰まり、このシュリンゲで懸垂下降したのだろうなと思われるボロボロのシェリンゲがぶらさがっていた。私達も同じ道をたどってしまった。右のカンテを攀り直し、傾斜の落ちたフェースに出てくるチムニーはバックアンドフックで越えて右にでる。
7P目.草付きのボロイフェース。
8P目.傾斜の緩いルンゼを40mいっぱい攀って終了。午後1時半だった。
「ああ、ようやく終った。」という気分にそう長く浸る間もなく、「秋の日暮れは早いので下りるぞ」というパートナーの追い立てに6ルンゼを下降する。南稜テラスからやっぱりグッチーの黄色いズボンが見える。こんな所から見るような位置にいて、この先大丈夫かなと思いながら、トランシバーで交信。やはり今日はビバークになるとのこと。私達は、三スラパーティーが今日中に降りてくるなら待っているつもりだったが、4人ともビバークとのことなので、今日中に東京に帰ることにしてテールリッジを下降。出合着17時だった。
奥壁ダイレタトは、結構傾斜があり、グレードのわりにはプロテクションの少ないピッチが多く、アルパインから遠ざかりつつある私達には精神的にきついルートだった。

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