黒部丸山 左岩稜

1996/12/29~1997/1/1
メンバー:遠藤・鈴木(直) 鈴木(直) 記


会報に記事を書くのは何年ぶりであろうか?昨年は例年に比べるとアルパインクライミングに励んだ年であったが、そんなこともあって遠藤さんからの誘いについ乗ってしまい、冬の丸山に入ることになった。ただ、11月に下見に行っているのでコース自体に不安はない。

<初日>
12月28日夜車で出発し、大町の駅で泊まる。翌朝、同じく大町駅で泊まっていた北鎌尾根パーティと分かれ、扇沢方面へ車を走らせる。聞いていた通り、日向山ゲートはしっかり閉まっており、他に数台止まっている車の連中と前後して、7:00前、いざ歩き出す。雪すらほどんど付いていない車道を重い荷物をしょって歩くのもむなしいが、2時間もかからずに扇沢に到着。ここから黒部ダムまでは関電トンネルを歩くがトンネル内は以外と暖かい。1時間半でダムにつき、同じく左岩稜を目指すYCCの3人パーティと内蔵之谷方面に行く地元山岳会の3人パーティとともに黒部川を下る。
雪が少なく、水がしっかり流れているため夏道を進むことになる。2時間程で壁が見えてくる。雲一つない快晴で歩いていると暑いくらいだ。壁もあまり雪がついていない。
左岩稜に4人ほど登っているのが見えるが、遅々として進んでいない様子だ。1日かけて広場では遅すぎるのでは‥。?他には11月の下見のときにいたYCCの2人組が大ハングルートに取り付いている。こちらはリードが核心のハングを抜けており順調そう。
取付地点は雪壁となっており、ツエルトはどこでもはれる。YCCパーティの若手二人が元気よくザイルをフイックスしに出かけるのを見送りながら、我々はというと2時をまわっているため本日の行動はここまでとする。なけなしの酒をすすり、夜の7時過ぎには寝てしまった。

<2日目>
YCCがユマーリングで登るのを待たなければいけないため、5時起床の7時発とするが、デポを木の下において実際に登り始めたのは7時半過ぎになってしまう。
夏の1ピッチ目は雪壁で、2ピッチ目からザイルを出す。まず、鈴木リード。左側から稜線に出るが、力づくで乗越すのは不安で早速あぶみを出す。
3ピッチ目はリッジの人工(遠藤)。
4ピッチ目は出だしの左トラバースをびびりながら超え、木登りの後人工(鈴木)。
5ピッチ目は雪の凹角から左に巻いて、再度木登り(遠藤)。
6ピッチ目は右の岩場を超えたらもう広場であるが、安易にのったあぶみのハーケンが抜け、鈴木が数メートル落下。2本のランナーで止まる。落ちたあぶみを拾いにさら10メートル程下降して再度登り直し、雪稜を上り詰めて広場。
7ピッチ目は草付きまじりの璧でいやらしいところだ(遠藤)。
8ピッチ目は人工(鈴木)。
9ピッチ目は洞穴に突き上げる凹角(遠藤)。
何とか16:30頃、予定通り洞穴までたどりつく。何と、昨日広場に泊まっていた4人組が今日は洞穴にテントを張っている。G登はんクラブで、剣まで継続するという。確かに荷物が多いと大変なのであろう。我々はデポで荷物を減らしてリードの荷物を軽くし、荷上げはせずにフォローしている。
YCCはGパーティを抜いて上まで行っているようだ。洞穴は2人であれば快適。出口をツエルトで覆ったのみであるが、全く寒くない。

<3日目>
昨日と同じく5:00起床。Gパーティのスタートが遅くじりじりする。少々待たされて7:40、ユマールで登る彼らの隣で、雪の凹角を鈴木が登り出す。行き詰まったところで、右のプッシュに人工で乗越す。
2ピッチ目遠藤。
3ピッチ目は人工で、このピッチのみ直上に近いということで、鈴木リードの後、荷上げし、遠藤ユマーリングとする。結果的には
ユマーリングの練習を二人で一度もしていなかったこともあり、かえって時間がかかってしまった。
4ピッチ目lまバンドに到達して、右に回り込む(遠藤)。
5ピッチ目(鈴木)、6ピッチ目(遠藤)は左上のバンド沿いに草付きの岩場を登る。今日もいい天気だ。
Gパーティはチムニーを登らずに右の壁をユマーリングしている。彼らが邪魔ということもあるが、下見の時と同じくチムニーを鈴木
が行く。さすがにチムニー内はベルグラが張っており、ボルトや足場の氷をピッケルで叩き割りながら登る。荷物が邪魔でなかなか参った。
8ピッチ目は樹林の中を左に回り込んで雪の凹角を進む(遠藤)。
9ピッチ、10ピッチと樹林の雪稜を進んで(実際は1ピッチで行ける)、11ピッチ目に右のちょっとした岩場を登ると、突起状岩峰と壁に挟まれたちょっとしたスペースに出る。ここでGパーティの時間待ち。17:00でもう日没のためここでビバークとする。
ラジオによると翌日から気圧の谷間が来て西日本から天侯が崩れるということであったので、本当は頂上まで行きたかったが仕方ない。この日も快適なビバークとなる。

<4日日>
登攀がほとんど終わったということで安心したせいか、二人とも寝坊し、6:30に起きる。朝食を腹にかきこんで8:10、遠藤リードで出発。1時間半も寝坊した割にはあまり出発時間が変わらない。ここでザイルをしまい、後は稜線を辿って行く。
途中、岩場も出るがフイックスロープがあり、ザイルは不要だ。11月にやぶこぎであれはど苦労した部分であるが40分程であっ
さり頂上に立ってしまった(9:30)。剣を初め360度良く見える。さらにうれしい誤算が北尾根下降で、稜線のすぐ左の凹角状を尻セードを交えて下るが、わずか30分で丸山岩壁の下まで戻ってきてしまった。少し登ってデポ品を回収し、再びデカイ荷物に戻って黒部ダムを目指す。放水を止めた黒部川は静かでまるでハイキングに釆ているような気分になる。
ダム到着が14:00。ここで遠藤さんが目ざとくキャリアを発見し、ザック2つを積んでトンネル出口まで拝借することにする。
最後の扇沢からの車道が長かった。だんだん暗くなる中、黙々と歩き、18:00車を止めてある場所に到着。予定より1日早い下山となった。
その後は大町温泉郷で体をほぐし、そばを喰って東京に戻る。今回は一にも二にも天候様様といった感じの、さながら春山クライミングであった。

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