前穂高 4峰正面 甲南ルート

1996/8/17
メンバー:村上・小田桐、桜井・田島寛・伊平  伊平 記


中日の8月13、14日に、台風12号の直撃を受けた今回の夏合宿でしたが、両日とも雨天の中、ヒュッテ脇ボルダーでレスキュー訓練を実施したのは、涸沢で唯一「登高会 嵓」だけでした。元気印か、真面目なのか、始めての夏合宿に参加して、その意欲に驚くとともに、雨天の中新人のため訓練を実施してくれた各リーダーや尾原さんに感謝の一言です。
本題の、北尾根4峰正面壁甲南ルートですが、前夜の打合せでは午前3時30分起床で、北尾根4峰正面壁松高ルートに向かう予定でした。
当日は、台風一過のド晴天に恵まれながら、なぜか全員寝過ごして、北尾根ルート予定の山本さんに起こされたのが、午前4時。村上さんの「今日はだめだな」のつぶやきを聞きながら、大慌ての出発準備でなんとか午前4時45分に出発。
5・6のコル到着が午前5時45分、奥又白側に下降して、奥又白谷雪渓下部から、アイゼンで登高を始め、松高ルート取付は雪渓右側のC沢ということで、雪渓右側を詰めたのですが、いつの問にか4・5コルから落ちる雪渓に入り込んでしまい、松高ルートの取付を発見出来なかったのです。
4峰正面壁上部を観察すると、甲南バンドT1下部より更に奥に入り込んだ地点らしいので、下部岩壁を登り甲南バンドに達することとし、雪渓と岩壁の問の3m程のシェルンド内に降りて登攀可能ルートを探すと、15m程の垂壁下に古いピン2本がありました。午前8時45分頃、村上さんが空身となり1ピッチをピンを打ちながらリードし、草付きの緩傾斜帯こ出てロープを固定し、残り4人がユマールでここを何とか突破したのですが、ボロボロで落石の嵐でした。
目的の甲南バンドは更に上部でバンド下はハングしており、突破するルートはハングまで垂壁を直上してハング下を左にトラバースするしかないように見えました。
村上さんが僅かな凹角をたどって垂壁を直上し、ハング下で思わず、「こりゃ、いやらしい」と声をあげる程のⅤ級以上(?)のスラブをトラバースして甲南バンドに達すると、いきなり村上さんがニッコリと○のサイン。そこは、甲南ルートT2のビレー点でした。田島さんと私がユマールで登り、桜井さん小田桐さんが末端を結んで続き、甲南ルートに入りましたがこの時点で午後12時30分でした。
その後は、上記のパーティ編成で甲南ルート2ピッチ目から登り始め、途中ルート図とは若干違う部分もありましたが、3ピッチで甲南ルートの核心であるⅣ+のピッチに達し、その後上部の易しい草付と階段状を2ピッチ登って午後4時30分に終了しました。
取付を間違えて登り始めた下部岩壁から合計8ピッチの登攀でしたが、下部岩壁にも古い残置ピンがあり、前にも誰かが今回と同様に間違えて登っているようでした。
4峰を下降し、5・6のコル経由で涸沢に到著したのは午後6時45分で、長い1日が終わりましたが、全員の感想は「疲れた」と「アルパインは、取付まで行ければ、もう成功」ということで、新人にとっても大変勉強になったバリェーションルートでした。

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