谷川連峰・足拍子川・フトゴキ沢

1994/9/3
メンバー:木元・山本裕・平舘  木元 記


9月の会山行は年間計画では沢登りとなっていて、どうしようかといろいろ悩んだのだが、丹沢はみんなもう飽きてしまったのではないかと思い谷川岳南面を提案した。しかしみんな全く乗り気でなく、結局谷川に行くのは私と裕さんと平舘さんの3人だけで、他は西丹沢の小川谷廊下に決まってしまった。
後で話を聞いたら小川谷の方もとても楽しい会山行になったそうで、やはり会山行というのはあまりひねったことは考えずに、一人でも多くの会員が参加できるように計画する方が良いのかなあと感じた。
一方私たちの方は、他の人も来ないのだし好きなところへ行こうと考えて、山域を谷川岳北面に変更し、初日はまず足拍子のフトゴキ沢を遡行する予定とした。
足拍子に関する資料は少なく、どういう所かよく知らない人も多いと思うので概念を大雑把に説明すると、場所は上越線土樽駅の北東にある荒沢岳から足拍子岳をつなぐ稜線の北側にあり、大漁太川の支流足拍子川がその本谷となっている。その本谷をはさんで右岸はコマノカミ沢などの沢登りの領域で、左岸はグイレクトスラブに代表される岩登りの領域となっている。
フトゴキ沢は悪絶といわれているコマノカミ沢の支流で、コマノカミ沢に比べると楽だといわれているが、結構登攀要素の強い沢らしい。我々3人は期待3割、不安7割の少々暗い気持ちで、6時に林道終点の駐車場を出発した。
林道終点から本谷右岸沿いにはっきりと続く踏み後が途絶えたところの沢が経木沢で、それを下降して本谷に出て、わずかに遡行すると右岸よりコマノカミ沢が出合う。
ニこからフトゴキ沢出合まではゴルジュ状の沢筋に小滝と小さな釜が連続して、微妙なへつりが強いられるところだ。先頭の裕さんは何でもない感じでひょいひょいと登っていくが、2番手の平舘さんは足を滑らせてザプンとやること数回。
私も途中、高巻の偵察でスリップし、右手の指を深く切り出血してしまった。今回の山行では、この血がなかなか止まらなくて困った。
目立たない二俣(フトゴキ沢出合)を過ぎると、沢は大きなスラブ状となった。それを登ると水流は左へ直角に曲り、核心のゴルジュ帯となる。
このゴルジュは幅2~3mと狭くて深いが、水量は少なく、倒木がゴロゴロしていてとても陰気な感じがする。いくつか小滝を越えると、倒木のつまった5m程の小滝が現れた。両岸ともかぶり気味だが、右壁に残置シュリンゲが見えるので、私がリードして直登する.AOを2回でその滝を越え、続く10m程のチムニー滝まで登ってピッチを切る。するとそのすぐ先にも10m程のハング気味の滝が現れた。直登はちょっと厳しそうで、裕さんは「高巻こうか」と言っているが、深いゴルジュなのでそれもなかなか大変そうだ。しかし滝をよく観察すると、下の方にリングボルトが1本確認できたので、これはきっと人工で登るラインがつながっているのだろうと判断し、ザイルを付けて取り付いてみる。すると思ったとおりピンが続いていて、単純なAlで登ることができたが、途中ヒョングリ気味の流水を頭からかぶる部分があって、窒息しそうでまいった。
その上のスラブ状の滝もザイルを付けて取り付く。残置ハーケンのある右壁が一見やさしそうに思えたのだが、ホールドがなく、フリクションで登らなければならない徹妙な部分で水苔に足をとられてスリップ。落ちる途中岩にぶつかり右胸を強打してしまった。あまりに痛いのでここでトップを交替して裕さんに試してもらう。
右壁だけでなく流水中の直登など色々試みたがやはりだめで、再び私がリードすることになった。今度はもう直登は考えず、ビレイ点からハーケン2本打って側壁を人工で登り、右上の草付に入ってそこから大きく高巻いてこの滝を越えた。
その先もしばらくゴルジュが続くが、もうそれほど難しいものはない。ゴルジュを抜けたところで大きな半円状の滝が現れ、その下で大休止とする。しかし七の沢は下山時間も長くなるので、食事もそこそこに下降路についての相談をする。
ルート図を見るとこのまま沢をつめても、スラブ状のやばそうなルンゼで終ってしまいそうなので、結局遡行はここまでで打ちきりとし、クロガネの頭北尾根に抜けることで話しがまとまった。
滝の下から苦しい木登りを約30分。北尾根にたどり着いたときにはもうヨレヨレであった。
「関東周辺の沢」では、ここからクロガネの頭を経由して経木沢を下るよう書いてあるが、登山大系には北尾根も約2時間で下れることが可能という記述がある。
3人ともいい加減疲れていたのでそのまま北尾根を降りることにする。
そこからはさらに苦しい石楠花のヤブの下降が約4時間続いたが、途中少しルートを間違えたりはしたものの問題なく足拍子川本谷まで下降した。その後は駐車場まで約40分、18時頃に到着した。
とにかく、気の休まるところのない非常に疲れる沢だった。そして、私にとっては指を切ったり胸をぶつけたりと、とても痛い山行になってしまった。
この晩は、土樽駅でステーションビバークをしたのだが、酒を飲んでもあまり盛り上がらず21時頓には3人とも寝てしまった。

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