滝谷クラック尾根

1993/8/13
メンバー:中丸・下野  中丸 記


8月13日(金)
つい五日ほど前に、一の倉南稜で岩登り初体験して、もう穂高にいる。そして滝谷を登るという。あれよ、あれよ、という間で自分でも、まだ、実感がわいてこない。ゲレンデで練習したわけでもなく、基本もちゃんと出来ないのに、本当に滝谷が、登れるのだろうか。
そんな事を考えているうちに、B沢に着いた。ひどいガレ沢で足をそっと置いても、石がくずれる。B沢からクラック尾根への取付点で初めて、滝谷の岩を登ってみて、こんなに脆い岩を登るのかと驚く。ホールドなんか安心してつかめやしない。足だってへたに動かすとすぐに石が落ちる。ザイルが動いただけで落石が起きる。動いた石を落とさない様にもとにもどすのに神経を使う。
いよいよ登攀開始。山口、秦氏パーティが先に行く。その後下野氏のリードで私が登る。本チャン二度目なので少しは気持に余裕があるのだろうか、浮石が怖いが登る事自体は楽しい。となりの一尾根の垂壁では、松元、立木、遠藤氏のパーティが登っているのがよく見える。垂直の絶壁にやっとへばりついている様に見える。まったく何を考えてこんなあぶない事をやっているんだろうかと思う。
高度感がすばらしい。一端のクライマーになった様な気分だが、よく考えてみれば、下野氏のリードで登らしてもらっているだけのことだ。こんな気持のいいルートを自分の力でリードしてみたいと思う。気持が浮き浮きしてくるが岩も浮いている。
夢中だったため、ルートのこまかい事、時間や内容などは、あまり覚えていません。ザイルさばきひとつ取ってもまだへたなためビレイ中も登攀中も、とにかくいそがしかったという感じです。
それにしても思うのは、クライミング中の楽しさ、緊張感、満足度にくらべ、アプローチのつらさにはまいりました。体力のなさを痛感しました。

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