谷川岳一ノ倉沢烏帽子沢奥壁変形チムニー

1993/9/19
メンバー:秦・中丸  中丸 記


うわぁ、これは大変なことになってしまった。両手両足を大の字に拡げて、 まるで空中に浮いている様だ。
いま私は変形チムニーの中で体を外に向けている。岩壁は私の背中側で、顔の向いている方には空間があるだけだ。股の下には何もない。この高度感は怖い。どうしよう。一刻も早くこのヤパイ状態から抜け出さなければ。パニックった頭の中で「落ち着け、落ち着け。落ちるんじゃない、落ち着くんだ」などと考えていると、秦さんの声が聞こえてきた。何だか、左の方にしっかりしたホールドがあるから、それをつかめば大丈夫と言うようなことをアドバイスしてくれているらしい。
奏さんの声を聞いて我にかえった。拡げてつっぱっている手足は、少しでも動かすとずり落ちるような怖さがあるが、なんとか不様に、変形チムニーを左に抜けてビレイポイントまでたどり着いた。奏さんに「死ぬかと思いましたよ」と言うと、笑って「それが快感になる」と言う。そうだろうなと思う。
前回、南稜を登った時は、天気が悪く景色は何も見えなかったが、今回はよく晴れた気持ちのいい天気だ。テールリッジでは話に開く衝立岩をじっくりながめたが、たまげた。かぶさってくるような感じがあり、とても登れるとは思えないすごさかある。こりゃあスゴイと思う。いっかは登ってみたいもんだ。
さて変形チムニーだが、取付点で準備をしていると、3人組のパーティがあとから釆た。まだ場なれしていない私はうしろに人が待っていると思うと落ち着かず、なんとなくいやな気分で登り始めたか、登り出したら後続のことなど、かまっちゃいられない。グレード4級はむずかしい。怖い場面の連続だか、冒頭の5ピッチ目変形チムニーは、怖かった。怖すぎて、おもしろかった。
変形チムニーをすぎて、次のピッチで中央カンテと合流するが、その合流点で先行パーティがいて、少し待つ。奏さんは待ちきれず、次のピッチで追い越す。
四畳半テラスにでる前のピッチかむずかしかった。変形チムニーの様な高度感こそないが、フリーでは登れずアブミをつかった。へたなアブミで力ずくなので一気に疲れた。
最後のピッチは、岩が脆く浮いているうえに濡れている。いやなピッチだがもうすぐそこは終了点かと思うとうれしい。途中追い越したパーティはまだ来ない様なので終了点で昼食にする。ルートを登りきった満足感にすばらしい景色。岩登りは楽しい。

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