大同心沢大滝~小同心 大同心右フェース

1993/3/27~28
メンバー:佐藤(寿)・遠藤   遠藤記


発車五分前、間に合った。頭はまだフワフワしている。気楽に車内のサトウ氏に手を振る。ムーツとした顔がのぞく。とんでもない山行の始りだった。茅野にて、1時間ちょっとの仮眠。
バリバリの凍った道を、赤岳鉱泉着9時。先についたサトウ氏、黙々とテントをたてている。
急いでギアをそろえて、10時前出発。
そこそこしまっていて快適だ。(気分はフワフワ)20分程で大滝直下の傾斜が始り、アイゼンをつける。ざらめのような氷が流れている。
取付にステップを切り、アックスでセルフビレイ。
当初の予定は、中央フェースをダイレクトに、だが? サトウ氏とりあえず、ビレイ点2本のスクリューをねじ込み、その左上ランニングを1本取る。
イボイボが流れ始めた。氷にはまったくきかない。スクリュー1本をねじ込み左上。どうも左ルートをとった様子。中間支点、氷柱の影にかくれてコール。
直前、2・3mの垂直に近い氷柱の後、傾斜も緩み、シャワーのカーテンを抜けて、氷室に逃げ込む。中は快適な二畳程の氷の部星だ。
2P目、ずぶぬれになりながら、サトウ氏、凹角(というよりチムニー)のつららの中直上。エンドー体を氷室からのりだしてビレー。
ふりあげるバイルの前のつららがバリバリ、うしろもバリバリ、苦闘の末、2~30分でヤメ。もろすぎる。巻く事とした。
左右共可能とあるが、とりあえず、現在地、右岸側ルンゼをトライ。サトウ氏、悪いトラバースの末、右上、姿が消えた。ザイルの流れもあまりよくない。
案の定、水の流れる逆層のもろい岩にドロドロの草付、雪付。ハーケンもだらしなく点在している。
ビレイ点は大滝4・5m頭上の立木。
再び、大同心沢に降り、コンテでザイルをひく。
どうにも体が重い、はうように登る。憎らしい程の晴天だ。
汗をかいてもまだねむい。今夜のシュラフが目の前にちらつく。
樹氷をちりばめられた樹木が、薄桃色に輝ききれいだ。下界ではちらほら花見時。
「満開の桜のようだね」サトウ氏。「ハァ」気のない返事。
そう観賞などしていられない。もう1本小同心を片づけなくては。
大同心稜からのトレースが1人分残されているのみ。人の姿はない。
取付、2時40分。終了4時。
1時間20分かかかってしまった。何といっても私がぐずだった。(1P目)
シュリンゲの選び方のもたつき、ランニングのとりすぎ、etc。
2P目は、サトウ氏のフレンズ、ナッツのエクササイズにて。3P目、終了点からクライムダウン。同下降。
あまい岩角に6mシェリンゲをかけての懸垂はいい気分ではなかった。
明日の大同心右フェース取付、確認後、大同心稜を下る。ヒーヒー。
ヒンシュクを重ねて寝酒をぐぴ。コーヒーをしんみりと飲むサトウ氏を残して、バタンキュー。天国だあー。
翌起床4時。満点の星空だ。
カモシカの声がひぴく。我がオタケビの声もカなく、5時半出発。小屋を背にしたその一歩、足が鉛だ。情ないが、先に行ってもらう。
取付7時。サトウ氏、すでに準備バンタン。
ハーケンまったくみあたらず、かぶっているか、エンドウとりあえずいくがパンブ。
岩角でビレーを取り、下降。力が全然わいてこない。
ルートも違っていた。左に2 3m移動。
「つるべが一番いいんですが」を繰り返すサトウ氏に無理を言ってトップをお願いする。
昨日確認の赤いボルトにハーケンを打ち足して(ビレイ点)開始 8時近くになってしまった。
左上から小ハングをトラバース気味に左に回り込んで超え、遠からずコールがかかる。
エンドー昨日同様、頭がパンプしたまま。のっこしたとたん、アブミがするり、下でガシャン。予備がない。
アブミの心配よりサトウ氏のカオ色をうかがう。
2P目タメ息をつきながら、カベをながめる。どう見てもルートは右の方が素直そう。しかしザイルは左にのびている。察したのか上で「こっちの方がおもしろいでしょっ」とにかく早くいかなくっちゃと人工ついでだ。ふくらんだスラブにアブミをかける。「そんなとこでアブミですか?」と。ああ残る1本もするり、ガシャン。
サトウ氏の怒りも頂点に達し、おまけに、雲行もあやしくなってきた。3P目を終えて、ドーム基部に馬乗りになった時は、かなりのいきおいでガスってきた。
サトウ氏登りだしてまもなく、風、雪共に強くなり、ホワイトアウト。
さっきまで見えていた小同心2パーティも見えなくなった。吹雪かれてのビレーはいつも情けなくなる。
直下4、5mのふくらみを超えて程なくゴール。
エンドービナ付シュリンゲ2セットでしっちゃかめっちゃか。どの位時間をくったのか?
最後の一歩なんかゴボウだ。
12時終了。4時間、ハァー(サトウ氏のタメ息)
南稜下降。2P半。50m2本の回収はユマールをもってしても最後まで重かった。
2時半前取付に戻る。もう最終バスは間に合わない。
新雪の積もる大同心稜をそろりと降りる。
サトウ氏には申し訳ない山行になってしまった。
体調いかんにかかわらず、ひっくるめて、これが実力か?とも思った次第だ。

戻る

Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Google Bookmarks