谷川岳一ノ倉沢衝立岩雲稜(第1)ルート

1992/7/4
メンバー:木元・佐藤(寿) 佐藤(寿)  記


出合発4時45分。中央稜の取付で靴を履き替える。踏跡を右へたどり、少しよじ登ったところにアンザイレン・テラスがある。
6時10分、木元さんのリードで登攀開始。25mをフリーで直上する。Vはないと思う。二人用テラスからは第1ハングにぶら下がっている残置スリングが何本か見える。多分あれを目指して行けばよいのだろう。
2ピッチめ、佐藤凹角を登り、右に移りかけるところで、アブミを取り出す。残置ピンに導かれてハングにたどり着く。細いスリングにアブミをかけるのはあまり気が進まないが、せいぜいそっと乗るように心掛ける。
ハングに入って2本めだったか、乗っているアブミのピンが抜けた。乗っているだけならよかったのだろうが、脚を突っ張ったため、抜ける方向にカがかかったのだ。かすかな音が聞こえた次の瞬間身体は空中にあった。ロープが伸びきった後で着地したので、それほど衝撃はない。ランニングが利いていて助かった。7~8mほど落ちたようだ。
再び登る。本郷さんにお借りした3本めのアブミが役立った。何とかハングを乗り超えて、狭いビレイ点に立つ。ここに上がる1歩が、消耗した腕には辛かった。
下を見ると、木元さんの右に私が落としたアブミがある。回収をお願いしてビレイに入る。木元さんがハングの影で見えなくなる頃、アンザイレン・テラスをさらに右へ行く3人組がいる。カラビナを給ってくれたようだ。それにしてもいつ落としたのだろうか。などと考えていると、テールリッジを行く直樹さん・本郷さん・三好さん・平舘さんが見えた(声をかけてもらったからわかったのだが)。落ちたことは出合に帰るまで内渚にしておこう。
木元さんが上がってきた。追い超してもらうのに少し手間取る。第2ハングは右の張出しの小さい部分を超える。このピッチは30mほどで終わり、右寄りに登りすぎたのかとも思ったが、ビレイ点もしっかりしておりこの先のラインも見えるのでこのまま行く。
左上して4ピッチめの終了点。ボルトが3つ並んでいると喜んだのも束の間、真ん中のはボルトの周りにヒビが入っている。さわると動いた。
第3ハングを越え、快適なボサテラスヘ。ここでいったんアブミをたたむ。6ピッチめの初めは踏跡を歩く。湿った凹角を途中1回のAOを交え、内面登攀風に登る。洞穴の入口でビレイ。涼しくてこの時季には気持ちのよい場所だ。
7ピッチめの洞穴ハング。リードする木元さんの姿が空を背景に浮び上がる。残念ながらカメラは彼のザックの中だ。
ここを超えれば実質的には終了となる。後は2ピッチのやさしいところを進み、衝立の頭と北稜の下降点の間に出る。終了14時45分。
この季節としては天侯にも恵まれ、たまには日が射すときもあった。標準時間を大きく超えてしまったが、新人がいてそいつが墜落したということで、いくらか割り引いて考えてもらいたい(甘いかな)。ルートは予想していたよりはわかりやす
く、それよりも残置ピン・スリングのチェックに気を使ったほうがよいと(しみじみと)思う。
ひと休みして、キンクしがちなザイルをほぐしながら北稜を下降。衝立前沢から危なっかしい雪渓を巻いて、出合に戻った。ビールがしみる。

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