衝立岩正面壁 A字ハングルート

1992/6/13
メンバー:桜井・鈴木直  鈴木直 記


桜井氏と鈴木の間で昨年来の課題であったA字ハングルートであるが(桜井氏の場合は中川氏と取り付いたこともあり、リターンマッチでもある)、金曜日に桜井氏から鈴木の会社へ「今日どうすんの?」と電話が入り、急遽、実行に移すことになる。
さて、場所はとんで一の倉。出会い出発は、鈴木が寝坊したことが響いて6:00。既に多くのパーティがテールリッジに取り付いている。7:00、テールリッジの最上部に到着するが、案の定、先行パーティあり(小松猛氏ら2人)。これはしくじった。
少し待って、7:30取り付き。Å字ハングでの雪辱を果たさんとする桜井氏の希望で、奇数ピッチは桜井氏のリードとする。1枚岩のすそ左から取り付くが、ブッシュの中をこぐように登っていくのでルートを見失いそうだ。
2ピッチ目はスラブのフリー(4級+)であるが、濡れているのとプロテクションがほとんどないのとで緊張させられるピッチ。これもラインが読みづらい。ここでこんなに難しいなら、上にある5級のピッチはいかほとであろうかとマジでびびってしまった。
3ピッチ目は本庄ルートと平行して走るA1ルート。木の生えているところでピッチを切る。桜井氏は2度目でもあり、ルートファインデイングは頼もしい。aji
4ピッチ目は、ます左にトラバースしてから、簡単な動作のA1で進む。ところが、5ピッチ目のビレイ点に先行パーティがつまっているので、やむをえず、鈴木はビレイ点手前であぶみとフィフィにぶらさがって待つことになる。先行パーティのA字ハングでのお手並拝見である。
ルーフの張り出しは最長部で3mくらいか。結構苦労しながらハングの出口までは進むが、最後にルーフすぐ上のタイオフ3mmシュリンゲにあぶみをかけるのが厳しく、ここで停滞している。やがて力つきたトップが落下。交代してリードしたもう1人も力つきてクライムダウンとなり、そのままあきらめて懸垂下降していった。
結局1時間半も待たされて、あぶみの上で足と尻が痛い鈴木は結構いらいらしていた。既に12:00。今日中に登れるかどうか・・・・不安がよぎる。
リード桜井氏が順調にルーフを進む。先行パーティの例もあり、慎重に行こうということで、出口手前でサックは璧に残して乗っ越す。
A字ハングをクリアしたので一安心であるが、次の6ピッチ目も核心と言われるているとのこと。しかし、ほとんとA1で、後の方で出てくるフリーも5級というほど難しくはない。石楠花テラスにはザイルが届かず、鈴木が途中でピッチを切る。桜井氏がテラスまでつなげて、7ピッチ目も鈴木が行く。テラスの右瑞からきれいなスラブをA1で直上していく(後で考えるとこれは実は本庄ルートであり、本当は右のフレークをフリーでこえるのか?誰か確かめて下さい)。ピンはよくないがそれほど困難ではない。
鈴木がここで早めにピッチを切ってしまったので、上の立木のあるテラスまで桜井氏がつなげて(ここのフリーが5級かもしれないがそれほと困難でもない)、8ピッチ目のL字ハングも続けてリードする。
ここは2段ハングになっており、体力を要するところ。特に2役目は、出口で3mmシュリンゲをセッティングしての乗っ越しになり、リードはかなりきつかったと思われる。
困難な部分は終わり精神的に楽になる。9ピッチ目は4級もない簡単な草付きであり、その次もつるべで進んで頂上までザイルを伸ばす(最後は雲稜第1と同じコース)。
終了は18:30・取り付きから11時間かかった(待ち時間を除いて9時間くらいか)暗くなるのは覚悟で下降に入る。が、あせっていたせいで、懸垂1ピッチ目でザイルの末端の結び目がひっかかり回収不能となる。登り返しで30分程ロス。既に陽も落ちた中、懸垂を繰り返すが、途中、桜井氏が首からザイルを降ろす時にヘッドランプがすっぽぬけ、キラキラ光りながらしばらく転がった後、闇夜に消えて行った。
懸垂は暗くてもどうにかなったが、問題は、衝立前沢手前の雪渓である。思った程雪の量もなく一応ザイルを固定して無事渡る。前沢自体は特に問題なく降りる。ただし、最後、雪渓に上がるところのシュルンドはおっかない。出合い到着22:30。
さすがに疲れはて、セブンイレブンで夕食のカップラーメン(おにぎりも農協ご飯もないセブンイレブンなんて!ひとすぎる)を買って食うと、酒もろくに飲まずにその日は泥のように眠る。翌朝、車を転がして帰途に着く。

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