赤石沢奥壁左ルンゼ

1992/8/8~9
メンバー:鈴木(直)・桜井  桜井 記


8月8日
前日ダイアモンドフランケA~Bを継続してこの八合目に辿り着いたのが8時半であった。翌日は左ルンゼを登った後に甲斐駒と摩利支天を越えて南山稜を下降しビバーク、最終日に中央壁を登ろうという計画を立てていた。間題は水の補給で、左ルンゼに取付く前に補充しておかなければならない。ガイドブックによると右ルンゼの基部で水が取れるとあるがこれがまったくあてにならず昨年痛い思いをしているので今年は水の補給には気を使っていた。
翌朝5時に空身で右ルンゼ迄往復するが、思った通り水は得られなかったのでビバークの用意をせず左ルンゼを登って八合目迄もどり七合目へ下りて水を取ってくる余裕が有れば中央壁へ向かおうということになった。そんなことで左ルンゼの基部に着いたのが7時になってしまい、すでに先行パーティが3人で登っていた。
先行パーティのセカンドが2ピッチ目を登り出すのを見て我々も登髪開始。8時を回っていた。1ピッチ目、桜井リード。白ザレの不安定なバンドを右へ行きルートに入る。右上のフリーからボルトラダーとなりロープスケール一杯でレッヂへ着く。hidarirunnze
2ピッチ目、左上のフリーであるが残置もとぼしく中々難しい。この辺りから見る奥壁は解放的で気持ちがいい。第二バンドは広々としているが浮き石がたくさん乗っているので気を付けたい。
3ピッチ目の取付きは分かりずらくどこからでも上がれそうだが、どこも難しい。思ったより左側が取付きで右へ大きくトラバースするのでローブの流れが悪くなる。続く4ピッチ目は草付きが多くハーケンを捜しながらのA1である。
5ピッチ目。いよいよ左ルンゼを最も特徴付けている流水溝に入っていく。左への難しいトラバースをすると左右狭まった流水溝で上を見上げるとかぶりぎみなのか全容が見わたせないが何か異様な風景である。A1とフリーを混じえて体をすり上げていくがフリーの所はほとんどが両手両足を開いてのステミングである。続くピッチも同じ様な登り方で15m程登ると幅も広がり傾斜も落ちてくる。
左のコーナーに走るクラックを登るとビレイホイントになる。このピッチ50mで2.7バンドに達するのであと15m程をつるべで登る。7ピッチ目、F4を直樹リード。このピッチは残置が少なく再び傾斜も出てくるので難しい。これを越すと風化も激しくなってくる。ザイルを伸ばすだけでも石を落とす様になる。
次の9ピッチ目はボロボロのせいかビレイポイントも無い。このピッチを直樹がリードしている特に大きな落石があり私の頭上をかすめていった。最終ピッチ。今迄なんとか持ちこたえていた天候が崩れだし、ハング下を右上し左に回り込んで潅木でビレイ。直樹を迎える頃にはかなり強く降り出してきた。この先草付を辿り中央稜から稜線に出る迄道が分かりずらく、最後は再びローブを出して4級ぐらいの岩登りをしたら稜線に飛び出した(残置有り)雨は小降りになったが、そのままピークは踏まず、黒戸尾根を下降八合目にて最後の夜を過ごす。
台風は九州から日本海へ抜けた様だが風雨が強く明日は下山と決める。摩利支天の壁は今年も登れなかった。
8月9日
6時に八合目を後にする。登りはきつかった黒戸尾根も下降は早い。ただこの雨で途中の道は沢になっている所もあり、全身ビショビショになってしまった。きっとこんな日は右ルンゼの取り付きでもコッフェルが飛ばされる位に水が流れているんだろう。9時過ぎには駐車場に着いた。台風の影響であまり登れなかった今年の夏合宿のことを思うと我々、3本も登れてラッキーだったと思う。
赤石沢ダイヤモンドフランケAは本当に素晴らしいルートなので絶対にお薦めします。そしてA~B~奥壁と継ぐことを是非やってもらいたい。
 
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