奥多摩 犬麦谷

1992/10/18
メンバー:立木・木元・平舘・猶岡・杉浦  木元 記


10月17日(土)・18日(日)の2日間は奥秩父の井戸沢へ行く計画を立てていた。ところが天気予報では17日に台風22号が本州付近を通過するといっている。やむを得ず井戸沢は中止し、一日で登ることができる奥多摩の犬麦谷にルートを変更した。
17日21時に奥多摩駅集合の予定だったが、みんな時間の読みを誤ったのがか(武蔵五日市より30~40分多くかかる)全員が集合したのは22時をまわっていた。
その夜は奥多摩駅下の河原にある東屋でビバークし、翌朝の始発バスで日原へ向かう。東日原から犬麦谷出合までは2時間ばかり車道と林道を歩かなければならないが、稲村岩や燕岩など所々の名勝があるので意外と退屈しないで済む。しかし昨夜飲み過ぎたせいか、みんなの表情はすぐれない(特に楢岡)。
妙に水量の少い犬麦谷出合で身支度をし、遡行を開始する。堰堤を2つ高巻くと伏流となるが、適当に進むとまた水が流れだした。沢を横切る林道に懸かる橋の下を潜ると、6~7mの滝が落ちている。そこからが犬麦谷の核心となるはずだった。
連続する5m前後の滝を快適に越えると、急に水がなくなった。周囲の様子はどう考えても沢の源頭、といった感じで、ルートを間違えたことは明らかだった。
とにかく、はっきりする所まで戻ろうということになり途中1回の懸垂下降を交えながら沢を下っていく。さっき下を潜った橋の上の林道に出て、遡行図を見ながらルートを検討する。犬麦谷というのは特に目立った支流はないのだが、唯一、大栗窪という枝沢がこの林道よりやや下流で流れ込んでいる。
もし、我々が今登った沢が大栗窪ならばこの林道を左へ少し行くと犬麦谷が流れているはずだ。ザックを降ろして偵察に行くと、200m程先に水量の多い沢が流れている。あれが犬麦谷に間違いないだろう。そちらへ移動して林道脇から沢に降り、遡行を再開する(このルートミスで1時間ぐらい無駄にした)。
5分も進むと沢は急に右折し、その先に15mの滝が懸かっている。真ん中あたりにシュリンゲがぶら下がっているのが見えるが、水量が多いので道登しようという気は全く起きない。左岸の巻き道を行くと、その上にさらに大きな滝が落ちているのが見える。これが有名なタツマの大滝で、水量が多く、両岸は逆層のスラブでボルトでも打たなければ直登は難しいだろう。
巻き道をさらに進むと、上へ続く踏跡と、左へトラバースするものとに分れていて、我々は左へ行くことにする。沢に戻ると10mの滝になっている。タツマの滝というには3段になっていて、これはその最上段なのだ。ここは直登できそうに見えたので、ザイルをつけて取り付く。意外に悪い滝で、残置ピンにシュリンゲをかけ、AOで強引に登った。
ここを過ぎるとモリノ窪瀑流帯と呼ばれる連瀑帯となり、5~10mの滝がいくつも続く。どの滝も3級程度なのだが、苔がついて滑りやすいので油断はできない。それでも次から次へと直登できて、とても楽しい所だ。
途中15mの垂直の滝は難しそうに見えたので左岸から高巻く。その上も滝が続いていいかげん疲れてきた頃、瀑流帯出口の10mチョックストーン滝が現れた。この滝は傾斜がやや強いのと、抜け□でまともに水流を浴びそうなのでザイルを出すことにした。目の良い立木さんが左壁に残置ピンを見つけたのでそちらから取り付く。この滝も思ったより難しく、左壁のバンドから滝の正面に移る時は緊張した。
これを過ぎると滝は小さくなり、水量も乏しくなってきた。水流が消える前に、水筒に水を入れるため小休止をする。止まるととても寒く、もしこの状態でビバークになったらかなりつらいなあ、と感じた。井戸沢に行かなくて良かったと思った。
ツメは笹ヤブの急斜面を15分ばかり登らなければならないが、踏跡はしっかりしていて結構楽に登れる。最後はあっけなく登山道に出て、そこから気持ちの良いゆるやかな尾根を2時間歩くと東日原のバス停に着いた。
犬麦谷は面白い沢で、水無周辺の沢よりは絶対充実すると思う。ただ、シャワークライムとなる所がいくつかあり、とても寒かった。水量が多かったせいもあるが、この時期の沢登りとしては辛いものがあった。

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