大同心右フェースルート

1991/2/11
メンバー:立木・尾原  立木 記


前回の復習戦をすべく私はまたこの大同心にやってきた。前線の通過でアプローチは天候が悪く明日の登攀を思うと気が重くなる。しかし避けては通れぬ宿命を、早く片付けなければいけない。とりあえず鉱泉で前哨戦と称して酒を飲む事にしよう。私が一升の酒を買おうとすると馬原氏がそんなにのむんですかと言うので、そーお、じゃやめようかと言うことで5合にする。
あっと言う間に飲みほして飯の支度をしていると、いつの間にか尾原氏が1升また買ってきた。だから言ったじゃないのと私がいうと、まあ飲みましょうとやけに嬉しそうな尾原氏、今日の赤岳鉱泉は本当に賑やかだ。アルパインガイド協会の客やそれをガイドするそうそうたるプロガイド、それに大阪、京都の岳連、神奈川の高体連などがひしめいている。いいかげん酔っている尾原氏が、池学のスライドを上映している時に、まったくピントはずれな質問をしたり、こっちまで恥ずかしくなってしまう。最後にとどめだとばかりにまた2合買って来る。なんだかんだって本日都合2升の酒を飲み寝ることにする。
AM4:00起床予定。アラームが鳴っているああーむかむかする。尾原氏は鯨のようにまだ寝っている。だめだ2日酔いで気持ち悪い。とりあえず出発しよう。空は満天の星空だ急登の大同心稜をつめる。右フェースに取り付くのは私たちだけのようだ。雲稜に1パーティ南稜に2パーティぐらいか、雲稜パーティは途中で敗退していった。
まず1ピッチ、立木リードで頭上の凹角を8mほどフリーで登り、小ハングをアブミをつかって左上に回りこむようにのっこす。その上はフリーで10m程登ってビレイポイントにつく。
2P目右斜上ぎみに1ポイントのアブミを使用、壁は立ってる。そこから4級程度のフリーで直上してゆく(結構高度感あるよ!)続く3、4は3級程度の岩を一旦右にバンド状をトラバースして直上~左上そしてドームの肩下の岩を左から右へ回りこんでドーム基部へ。このピッチ声が聞こえないのであらかじめザイルを何回引いたら解除とか決めておいたら良いと思う。また残置ピンがないので露岩にプルージックでランナーをとることは勿論最低限、ハーケンは持ってゆくべきだ。
さて、いよいよドームのピッチ、やはり敗退した壁というのは大きく見えるものだなあ、いささか興奮気味で先行の東京白稜会パーティの次だ。まだ相当待たせられると思って覚悟したところで白稜パーティが出だしのフリーで登れなくて敗退してしまった。それ
もランニングビレイを残置しているので、私が登る時に回収してくれと言う。そう言われて自分がもし登れなかったら、カッコつかねえなあーと内心思いつつ気合が入る。
10mほどフリーで登り途中数ポイントのアブミ、そしてちょっとしたレッヂヘ上がる直上が、またフリー、そこで頭上がちょっとカブっており、ハーケンが3枚かさね打ちしてある。そこへ3mmシュリンゲをかける。カラビナが入らない為だ。こんな時、シュリンゲにフィフィをつけてAO用フィフィがあると便利だと思った。
その上もアブミのかけかえ、そして最後の2m程の乗越しがちょっといやな感じ。むずかしくはないのだがアブミのかけかえになれているとフリーにうつる瞬間がこわい。初めてきた大同心の頭、思わず少し熱いものがこみあげてきた。誰もいない。フォローする尾原氏を迎えかたい握手をかわす。これで私のとりあえずの宿題は完了した。
そして次はもう決まっているのだ。3月にV字右、滝沢第三スラブとそして5月の不帰、鹿島北壁の継続と、今回の帰りは足どりも軽く、また相当の酒を飲んでしまった。でもまあいいや、明日酒を抜けばいいやと思いながら杯が進むのであった。
やっばり登ってなんぼ、登らなきゃ只の人、冬初級の大同心をこれで一応3本登ったが、壁に雪があまりないのが余計に難しいところもあると思う。(アイゼンの前爪のみで登る為)強風に舞うアブミ、足をつっこむのは至難の技だ。そんなところでも体力をいたずらに消耗するものだ。ガイドブックのとおり、きっとここで冬壁のなんたるかを学び、次なるステップヘと飛び立ってゆくのだろう。

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