槍ヶ岳

1990/11/23~24
メンバー:秦・立木・鈴木博・直樹・本郷・高岡・木元  木元 記


11月13日の集会で23日~25日の3連休を使って立木さんたちが槍沢往復で槍ヶ岳に登るという計画をだした。以前から雪の積もった槍ヶ岳には憧れを持っていたし、早くアイゼンに慣れたい、という気持もあって、私も同行させてもらう事にした。
22日の夜、10時に新宿で持ち合せとなったが、いろいろあって出発したのは11時過ぎになった。
途中2回程休憩をして、坂巻温泉に着いたのは午前3時頃となった。すぐに路上にテントを張って仮眠をとった。5時すぎに起床しテントの外に出ると小雨がパラついている。少し気が重くなるが手早く仕度を整え、軽い朝食をとって出発する。小雨は序々に強くなり、釜トンネルを通る頃には雪となっていた。
大正池、上高地、明神を過ぎ、徳沢の冬期小屋で大休止となった。小鳥の中は暖かく、とても快適だった。小屋の人の話によると、ここら辺の雪は全部今朝になって積もったということだった。
皆ジュースやビールを飲み、行動食をとって程良く休んだ頃出発となった。外に出ると雪は完全にやんでいて所々青空も見えていた。
横尾で昼食をとり、なおも歩き続ける。単調なみちがどこまでも続いてうんざりしてくるが、しかたがない。途中に槍見河原を通りかかったが、雲がかかっていて槍ヶ岳は見えなかった。
一ノ俣、ニノ俣を過ぎ、槍沢ロッジに着いた。もしかしたら誰かいるかなと思ったが、完全に閉まっていた。上高地からここまでずっと前後して歩いてきた4人パーティーがいたが、彼等はここでテントを張るらしい。我々はもう少し先の旧槍沢小屋まで進んだ。
旧槍沢小屋の天場に着いたときは、少し暗くなりかけていた。風の当らない場所を選んでテントを2つ張り、早速日本酒を温める。熱い洒を飲むと生き返ったような心地になる。夕食を終えると皆疲れているせいか、すぐに就寝となり、6時過ぎにはシュラフに入った。
午前2時半、あまりの寒さで目が覚めた。マットがうすいせいか背中が耐え難く冷たい。しかし、他の人はよく寝ているようだった。結局起床までずっと寒さを我慢した。
4時になると誰かの腕時計のアラームが鳴り、起き出す。あまりの寒さで体がガチガチだったが、朝食のラーメンを食べて、やっと調子が出てきた。
体が温まったところで出発の準備を始める。昨日から足の調子が悪い本郷さんにテントキーパーをお願いし、残りの6人で出発する。
歩き初めて間もなく稜線の方がオレンジ色に染まりだした。まるで絵に描いたような素晴しいモルゲンロートだった。2、3枚写真を撮ってまた歩きだす。大曲りを少し過ぎた所でアイゼンを装着した。
いよいよここからが本格的な登りだ。所々ひざ位までのラッセルはあるが順調に登っていく。夏のグリーンバンドの辺りでやっと槍の穂先が視界に入ってきた。3ケ月ぷりに見る槍の穂先だった。肩には槍岳山荘も見える。私は今年の夏、約2ケ月間あそこでアルバイトをして過ごしたのだ。少しなつかしさがこみ上げてきたが頂上はまだまだ遠い。
急な斜面を登って殺生平に着く。ここから肩までは今までよりもっと急な斜面となっていて、夏でもとても苦しいところだった。登り始めると、アイゼンがはずれてしまった。2本締めのバンドを使っているのだが具合が悪く、きつく締めてもすぐにゆるんでしまう。それでもごまかしながら登り、何とか肩に着いた。
山荘は所々が雪に埋もれていた。入口は閉められていてひっそりとした感じがする。唯一冬期小屋の出入口が開いていて、何人かが利用しているようだった。夏とは全々違う所にいるような感じがした。
肩で小休止をして、いよいよ穂先を登り始める。夏に何度も登り降りをしていたので今回も簡単に登れる自信があったが、ホールド、スタンスが雪に埋もれてなかなか手強い。それにアイゼンを着けて岩場を登るのも初めてで、ゴツゴツとぶつかりどうも登りづらい。予想以上の苦労をしてやっとのことで頂上にたどり着いた。11時だった。
空は雲一つなく、空気も澄んでいて最高の眺めだった。2週間前に八合目まで登った富士山、そのとなりに八ヶ岳、浅間山の噴煙もよく見えた。反対側には日本海まで見えた。
記念撮影をしてすぐ下降を始める。降りるのは登る以上に難しく、なかなか足場がきまらない。途中から懸垂下降をしようという事になってほっとする。20mの懸垂下降を2回して安定した場所に降り、そこからは比較的楽な岩場となっていて、簡単に肩に降りられた。
しかしほっとしたのはつかの間で、すぐに殺生平への下降となった。斜面がとても急な上に雪がダンゴ状になってアイゼンにへばりつき、歩きづらくてしょうがない。滑落停止の練習をしていない私は、万一のスリップに不安を感じてしまって、腰が引けてなかなか進めない。横になったり後向きになったりといろいろ試したがスピードが上らず、とり残されてしまいそうになった。結局直樹さんに尻セードを教えてもらい一気に滑り降りた。
殺生平からは特に悪い場所もなく、難なく旧槍沢小屋のキャンプ場に着いた。今日はさらに横尾まで下がって避難小屋に泊まろうという事になっていたので、荷物をまとめてさらに下った。
槍沢ロッジの辺りから横尾まで、ずっと博道さんと一緒に下った。嵓のことや私の今までの登山のことなど、いろいろ話しながら歩いた。途中槍見河原で振り返ると、今度ははるか遠くに槍の穂先が見えた。ほんの数時間前にあそこに登ったとは、信じられないような気がした。
横尾に着いたときはもう暗くなっていた。先に避難小屋に着いていた立木さんと高岡君がストーブに火をつけようと頑張っていた。今夜は暖かい夜を過ごせそうだ。

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