黒部丸山東壁緑ルート

1990/10/6~7
メンバー:桜井・立木・尾原・鈴木(直)・小宮  立木 記


今回の山行は、9月初旬に桜井氏より話がありすぐに決まる。しかし、19日に手術をしたばかりの私にとってはいささか不安が残る。週に3回外来で通院しながら先生の顔色をうかがいつつ、決断する。
よしいこう、そうはっきりと心に決めたのは10月1日であった。4名しかオーダーしていなかったバスをあわてて1名追加する。10月3日に新宿にて打合せをし、ルートを決定。桜井、尾原 東壁ダイレクト、立木、鈴木(直)、小宮 同緑のオーダーにおちつく。
5日の夜、自宅を出る時からの雨でいささか気持ちもしずみがち、半分あきらめて家を出る。しかし、新宿につき仲間の顔を見るとそんなことはもうどうでもよくなってしまう。不思議なものだ。毎回決まったくだらない話に心もなごむ。本当に皆精神年令が低いんだから困ってしまう。
さて、扇沢よりトロリーバスに乗り、黒部駅に着く。ダム見学者は左へ、我々は直進して左へ、トンネルを出る。天気は小雨、ガスも出てきた。目の前には大タテガビン南東壁のスラブ状ルンゼ、そしてトンネルの真上には小宮いわく、トロリーバスの運転手の岩場?がそびえている。天気ははっきり言って悪い。そんなことは初めからわかっていたことだ。予定通り丸山めざして歩く。雨もどしゃ降りになってきた。やがて道は二手に別れ、我々は内蔵ノ助谷へと入る一ルンゼ出合をすぎ、20m程行った所で幕営することにする。雨は本降り丸山もガスっていて見えたり見えなかったり、よく見るとL字ハングから滝になって雨がおちているではないか。
これで万事休す。とにかくテントを張って中に入ることにするが、3人用テントなのできつい、きつい。まだ10時30分である。今回一日のことを考えるといいかげんうんざりだな。
夕方5時過ぎ、少し小降りになったところで取付点をさがしに出発、屏風より一回り大きいということだが、下から見上げた高さ、巾の広さはやはり屏風の方が大きいのではないかと思う。テントに帰り、皆で明日のことを相談するが、この雨では明日も無理だと早々と撤退して大町の温泉に行こうなどの意見も出る。
しかし、せっかくだから明日まで待って決めようということになり、せまいテントに5人横になり、テントの中でボディジャミングをみごとに決め、8時には寝る。皆まじめなんだなあ、あんな軟弱なこと言ったりしててもやっぱりクライマーなんだなあ、感心、感心・・・。
夜中、激しく雨がテントを打つ。4時過ぎ起床。一面ガスで何も見えず、とにかく朝食の仕度をしていつでも飛びだせる準備だけはしておくことにする。6時前、明るくなったところで出発する。とりあえず取付かなきゃかっこつかないもんなあ、もちろん他にパーティーなんかいるわけない。
さて、3名は緑、2名はダイレクト。すぐ隣りどうしだ。緑1ピッチ目、立木が取付、T1まで40m、ぬれていて悪い。出だしの数mは、ホールドが外傾していてぬるぬるしている。なんせ水が流れているのだから、ルートとしては2通りとれる。途中よりボルトにみちぴかれて、直上して左ヘトラバースか、そのまま凹角を登りT1へかわいていれば快適なフリクションが得られると思う。
2ピッチ目、小宮リード、A1で直上、ボルト連打であり、傾斜もないが、途中3mほど垂直の部分があり、古い残置、シュリンゲがあり、それにアブミを引っかけて乗っこす。
T2は、安定したテラスだ。ビレイポイントも2ケ所とれる。ここでダイレクトルートに取り付いた桜井、尾原パーティーは、1ピッチ途中でおりて、緑ルートを続いて登ってきた。理由は、残置がまったくなく20mほどアメリカンエイドを使って試みたが、見込みがないのと、ギアーの不足からいさぎよくあきらめたということらしい。
3ピッチ目、直樹リード、出だし一旦直上したが、その上にピンがないのでおりてくる。右上にボルトのラダーが見える。右へ3mほどトラバースしてから直上になる。最初は、フリー、かわいていればなんてことないのだろうが、やはりぬれているので悪いらしく迷っている。しかたなくピトンを1本打ってアブミをかける。体重をかけたとたんピンが抜けて4mほどおちる。衝立でも落ちて、今回も落ちて、どうも落ちるのが趣味のようで、本人もこの傾向はやばいと言っていた。
三日月ハング下でアブミビレイ、一段下で小宮を持たせ、4ピッチ目、立木リード、ビレイポイントの真上がハングである。ハング沿いにしっかりしたボルトがあり間隔も短く、簡単に乗超す。ハングの上はボルト連打であるが、すべてというほど最上段に立つ。
セオリーどおりランニングビレイをとりながら35mザイルをのばし、直樹、小宮を迎える。同時に登ってきた尾原氏がハングすぐ上のビレイポイントでピレイシートに腰かけ、桜井氏を迎える。この時点で最初から予定していた11時になったのでもうおりないと帰れないが、小宮がもう1ピッチのばして懸垂でおりてくる。
今回は天気が悪く、ここまでしかザイルをのばすことが出来なかったが、来年またこようと皆で納得。雨の中、ここまで登ったのだからよしとしなければなるまい。

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