雨天ダイレクトカンテ完登

1990/6/30~7/1
メンバー:立木・小宮・鈴木(直)   鈴木(直) 記


土曜の夜、新宿の集合場所で、我々3名と博道氏の4人で集合し、一ノ倉を目指す。松野氏も立木氏と組んでダイレクトカンテを登る予定であったが、バレーボールの試合で突き指をしたとのことで、おそらく来れないであろうとのこと。
従って、もともと小宮君と私で、松野・立木パーティーの後をついて行く予定であったが、立木氏を加えた3名で登ることにする。 時間がかかるという難点はあるが、立木氏に入ってもらえるとなると心強い。
途中の赤城高原サービスエリアで、偶然にも3ルンゼを目指す尾原、本郷の両氏と出会う。
共に、一ノ倉出会いまで行き、恒例の宴会となる。本郷氏は、今日は酒は一滴も飲まないと宣言していたようであるが、明日は雨らしいとの理由により、早速、宣言は取り消されたようである。
翌頚、5時前。博道氏は、山開きに出席すべく、シュラフにくるまっていつまでたっても起きない我々を後に、一人でセンターまで走っていった。先輩を車で送りもせずに走らせるなんてとんでもない後輩であるが、眠さには勝てない。
少したってから、山開きを終えた松元氏ら岳連の方が出会いに到着。途中の車中で、博道氏が一人歩いて行くのを見かけたとのことを聞き、涙を誘う。
さて、我々ダイレクトカンテ隊は、雨もたいしたことはなかろうということで、6時に出発する。7時にはテールリッジを抜け、そこから、トラバースと懸垂下降で、右側にある取り付き点へ進む。途中のアンザイレンテラスでは、2人組が、雲稜ルートに取り付いてるのを見かける(その3時間後には懸垂下降で撤退していた)。その他に、衝立岩に取り付いているパーティーはなさそうである。
8時取り付き点。ガスがかかっていて展望はなし。小雨まじりの天侯。
1ピッチ目は、小宮君がリード。草付の中を右上、すぐに、視界から消える。 登りきったところにもビレイポイントはあるが、ここから、バンドをそのまま左に進んで行ったところが正解。ここは、広くてよい。
さて、核心部の2ピッチ目を立木氏が行く。右方に見えるななめに走るハング帯を目指して登り、その後は、ハング下を左上する形となる。
と、テールリッジ上部から「やっほー」との雄叫びが聞こえる。こんなこと連呼するのは3ルンゼ隊しかありえない。聞けば「勇気ある撤退をしてきた」とのこと。
立木氏が登りきり、自分の番。ハング下にたどり着く手前はピンが遠くて苦戦する(一番の核心!)。さすがA2である。あぶみだけでなく、シュリンゲをかけてホールドを作るなど、とにかく、なりふり構わず登った。途中、残置のシュリンゲに安易にあぷみをかけてしまい、(ぶちっ)とちぎれる危ない場面もあったが、もう片方のあぶみに体を残し、なんとか無事に登りきる。
3ピッチ目は、私がリード。ビレイポイントからそのまま直上し、ハングに突き当たったら、右に逃げて終了である。途中までは、ピンも適度な間隔に打たれていて、危険な箇所はない。但し、とにかく疲れる。うまい人なら、あぶ
みの掛け変えでヒョイヒョイ登るんだろうなと思いつつ、一歩進む度に、尾原氏より借りたフィフィでひと休み〈尾原氏に感謝!)
この終了点のビレイポイントは、あぶみビレイである。やはり、両足でしっかり大地をふんでいないと休んだ気がしない。
ビレイポイントが狭くてザイルの交換が難しいことから、鈴木がそのまま、4ピッチ目をリードする。すぐ右にあるカンテを乗り超え、フェースのトラバースとなる(4級、A1)が、早速、ピンがなく、ハーケンを打つ。乗ってみると少々ゆるんでいる。仕方なく、全体重をのせないようにして、右に飛び移る?(後で立木氏がハーケンを打ち直す)とにかく、ピンがない場面が多く、たびたびフリーを強いられる。その度に、濡れた岩を掴んでひやひやものである。
少々登ったところで、岩に触れるとぐらっと来た。あわてて手を離し、横で見ていると、およそ10秒後、50cm四方くらいの岩が大音響を立てて落ちて行った。
あぶみの残置はしないぞという一念で進む(但し、カラビナ、シュリンゲ各1本を落とす)やっと、右側に樹林部分が見え、そろそろ終了か。最後に、あぶみからフリーで、樹林部分へ移動、完登だ。
続けて登ってきた立木氏、小宮君と成功を祝して握手を交わす。時間は既に4:30頃。
北稜を3本の懸垂下降。後は、沢沿いに降りていく。が、沢を一本間違えたようで、スラブ状の沢に出る。小宮君が足をかけた岩が崩れ、沢をすさまじいいきおいで滑り落ちていく。下にいるはずの立木氏の姿はガスに煙って見えず、その身が案じられたが、声で無事を確認する。「全力疾走で逃げた」とのこと。
これ以上下るのは危険で、仕方なく左の尾根を登り返す。今度はやぶこぎだ。木にぶらさがり、尻で滑ること数回。やっと、正しい?沢にたどり着く。
尾原氏の「やっほー」コールが聞こえる。
辺りはそろそろ暗くなってきた。テールリッジ基部付近まで3氏が出迎えに来てくれる。予定より5時間も遅れてしまい申し訳ない。下に着いたのは、8時近かった。当然、出合に残っているのは、我々のみ。どうも夜行性が抜けないようだ。
帰りの道は、異常な程のすきようである。満足感と、眠さにひたりながら帰途に着く。

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