1989/5/28
メンバー:中川・桜井 中川 記
5月28日、朝5時頃出合を、中川、桜井、松野、鈴木の4人で出発する。天気は、思わしくなく今にも降り出しそうであり、先行きに不安を感じる。テールリッジのトラバース手前で小雨となり、松野、鈴木パーティーと別れ先に進む。
彼らは、天気の様子を見て、今日の登攀をどうするか決めるようである。
中央稜基部で準備をし、大キジも快調に打ち、衝立へトラバースし、A字ハングの取り付きを探していると、ついに「ザーッ」と来てしまった。本降りである。
岳人ルートの取り付きにいるパーティーは、雨具を着て、何事もないように登り出している。我々も仕方なく雨具を着こみ、多分A字の取り付きと思われるところから中川トップで登り始める。ブッシュと小ハングを越えると、ドロだらけのスラブとなり、ノーピンのまま5m程行くと垂壁となり、2m弱でレッジにつく。
ここでピッチを切り、次の5級のピッチを桜井がAOを混えてリードする。雨でぬれているため悪く、セカンドの中川は、A1で後続、出しの数歩は最悪であった。
3ピッチ目、A字ハング基部まで40m4級A1のピッチで、一部ピンが遠く苦労する。このピッチは雲稜第一、本庄山の会ルートと交差しており、うっかりするとこれらのルートに入ってしまう。A字ハングルートは大きな立木のところから、いったん左へ下降気味にトラバースしてから直上する。(このため、ザイルの流れが悪く、途中でピッチを切ったほうが良い)
4ピッチ目最初の核心であるA宇ハングに桜井リードで行く。ピンは抜けたり、くさったりでネイリングとなり苦しい登攀となる。途中から2mの水平ハングとなり、完全に空中にぶらさがってしまい、腕力の消耗がはげしく、出口手前で落ちてしまう。
中川がリードを交替して再度ころみるが桜井と同じ所で力つきて、はずかしくもアブミを残したまま落ちてしまう。(ビレイ点に帰るにも桜井さんにロープを引いてもらわなければ帰れない程に力つきてしまった。)・・・。決定的な力不足を感じる(技術面で)。
悔しいが登れないと判断して同ルートを下降する。天気も良くなり中央稜基部で昼寝をする・・・と言うよりも力つきてグッタリとしてしまった。
テールリッジから一の倉沢を降りていると北稜を下降したきた松野、鈴木と衝立前沢出合いで出合った。彼らは登ったようである。これでしばらくは、A宇ハングが頭から離れそうにもない。