前穂北尾根

1989/8/13
メンバー:松元・鈴木博・浦野  浦野 記


朝、テントから出ると外はすばらしい晴天だ。見渡すと青空の下、前穂、北尾根から奥穂、そして北穂へと美しい岩稜が連なっていてとてもBeautiful。これこそ夏山の醍醐味だと感激。鈴木さんもついに憧れのクラシカルルート、北尾根に行けると興奮気味でした。
一方、今日のリーダーである松元さんは、ひたすら浦野が疲れてグズるかグスらないかが、今日の勝敗を決めると信じ込み、決してグズるなと私にいい聞かせるのに専念していました。
しかし、私も今日はひとつ頑張ってやるゾ!と私もひそかに心に決めていたのでした。かくして我々三人はそれぞれに思いを込めて8:15am、北尾根・奥穂一日周遊パックツアーに出発した。
ます涸沢からⅤ・Ⅵコルへ雪渓を登り、岩のゴロゴロしているガレ場をジグザグに登る。しばらくしてふり返ると南稜のジグザグ道が対面に見渡せ、はるか下には、カラフルなテントが点在しているのが見える。高度をかせいだと実感。
しかし行けども行けどもコルはまだ先のよう。次第に疲れてグズりだした私に鈴木さんが10代のヒップをしているだとか、まんざらウソとは思えない励ましのお言棄をポンポンとかけてくれて、ニンマリ、気をとりもどした私でした。
彼は、なんと出発30分後には「今日のリーダーに」突然昇格して燃えていたのでした。(松元さんはオブザーバーとやらに転じた)やっとの思いで7:30amにⅤ・Ⅵコルに到着。奥又白池や梓川が眼下に見渡せ、奥穂もさらにせまって見える。
北穂もよく見えるし、槍も凛々しかった。ゲンキンな私は、すっかり上機嫌になりました。いよいよこれからが北尾根の登り。比較的広い尾根づたいにしぼらく行くと、難なくⅣ・Ⅴのコルに着いた。
Ⅳ峰の登りが目前にせまっている。どこをどう登って行くのか一瞬不安に思ったが、松元さんの後について左の方にまいていく事で私でも簡単に登れてしまった。先に二人づれのパーティーがいたが、涸沢側のガレた方に行き、ザイルを出したりして悪戦苦闘していたようだ。これが岩登りの醍醐味かと、このⅣ峰を登りながら感じる程余裕のあった私は、すっかり気をよくして、さあ次はⅢ峰だと意気込んだのでした。
これからの本コース、核心部Ⅲ峰の登りを無事完了すればロングトリップの今日のツアーも半分成功したようなものと思ったら、私にしては珍しく闘志がわいてきた。ところが、なんという事でしょう。Ⅲ・Ⅳのコルに人がゴチャゴチャとたむろしているではないか。あれは一体何かと思ったら皆Ⅲ峰の登りWaitingである。
我々は4パーティー目であった。仕方なく休憩もかねて1時間程待ったが、(実際、三人ともよく寝たが強い日差しで焼けこげそうになって目がさめた)まだまだ待ち時間は続きそうなので、松元さんの鶴の一声で撤退することになり、ガックリ。・・・
あれほど闘志があったのに、と口をあんぐりあけて見あげたⅢ峰のなんとまぶしかったことか。岩登りのきらいな私があの時程、岩登りに執着したことはありませんでした。近くに見えたはずの奥穂がずっとずっと遠くにありました。そして帰りの道の長かったこと。行きでは、Ⅴ・ⅥのコルからⅢ・Ⅳのコルまでアッという間だったのに…。
今までさすがに出てなかった私のグズリも、いいかげに長いガレ場の下りで、一気にふき出し、松元さんと鈴木さんにからみまくりました。
彼らも私にからんでましたけど、それにしても雪渓から見上げた奥穂、さらに遠かったなあ・・・。

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