南アルプス上河内岳

1989/11/11~12
メンバー:浦野・他  浦野 記


久しぶりにシブイ山に行こうということで決まった山行だった。
楽しかったのは、始めの2時間位なものだった。まず畑薙ダムにかかる大吊橋に遊園地に来たように喜んで、そして続く雑木林の逆光に映える美しい紅葉に秋の芳醇さを感じ、どういうわけか、ああアップルパイを焼きたいと思った。
そうこうしているうちにヤレヤレ峠というところに着いたが、そのユーモラスな名の意味を帰路でイヤというほど実感するとは、まだ知らない幸せな私達だった。
かわいらしい小さな吊橋をいくつか渡ったころから単調なつづら折の急登が6時間続いた。横窪沢小屋からは、まさに地獄の道中で我慢大会の様だった。だれが最初に弱音をはくか、といったら答えは私しかいない。同伴の2人の男性は、私の子守までしなくてはならず、ずいぶん気の毒だった。
何とか暗くなる前に目的の茶臼小屋に着こうと、今から考えても私も随分頑張ったものだ。目の前の斜面に小屋が霧の中に見えた時、一瞬幻覚かと思った。
小屋には、4時半頃に到着。8時間の長ーい 長ーい登りだった。
こんなルートを登るなんて、私達もよっぽど物好きと思っていたが、小屋に着いて見ると奇人変人はもう1人いた。
翌日も天気はよく、いよいよめざす上河内岳へのピストンだ。稜線は雪がなく、ハイマツに霜がついている。小屋から1時間ほどで頂上、2803mに着いた。
遠く雲海の彼方に、富士山が見渡せ、聖岳、赤石岳もよく見えた。山登りがやめられないわけは、この景色の壮大さと、美しさだろう。あれだけ苦労して登った苦しさも、まっ青な空と、波打ち銀色に輝く雲海、そこから頭を出している山々に瞬間に吸いとられてしまう。この世の絶対的な美しさは何かと云われたら、頂上からの景色と答えるだろう。苦労して登ったから美しく見えるのか、美しいから苦労しても登るのか、どちらなのでしょうね。この世の最高の美しさを見せてくれるから、山が大好きなのだろう。

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