1989/5/4
メンバー:秦・養田・松野 秦 記
入山日の昨日とはうって変わって今日は、快晴、無風。絶好の登攀日和だ。朝日を浴びて輝く豊富な残雪に埋め尽くされた唐松沢本谷を取り付き目指して下降する。
取り付きでB尾根パーティーと別れ、松野、養田、秦の3名でA尾根をうかがう。
A尾根の未端は岩壁で、ルートはそのすぐ上部の雪壁なのだが、先行パーティーがいるので、B尾根との中間のルンゼをつめ、その上の雪壁から取り付く。すでに陽は高く、雪はかなり腐っている。
尾根上に出たところに小さな岩場があり、ここでアンザイレンし、まず松野トップで行くが、かなり悪いらしく、ザイルはなかなか伸びず、ときどき雪塊が落ちてくる。触れるそばから崩れていくような雪で、結構アルバイトだ。
この上のピッチは、ちょっと高度感の出るナイフリッジで、B尾根パーティーとは、指呼の間である。いつ足元が崩れるかわからないような、雪の尾根を登って行くと、岩場が現われた。これが核心部のようだ。垂直の10m程の凹角。アブミは2台しかなくトップの松野が残置し、ラストが回収することにした。
人エが苦手で、かつ大きな山行が久しぶりの私には、この10mの垂壁が大変こたえた。ずい分長い間アブミにぶらさがっていたような気がする。それでも必死に通過はできたのだが、その後、稜線直下のピッチでもう一度出てきた、人工の部分には本当に参った。
日照時間の長い五月とはいえ、もう時間もだい分経っている。ザックの中のトランシーバーが、ビバークだのナンだのと言っている。なんだか悲しくなってくるのをやり過ごし最後の力をふりしぼって登り切った(大げさだナァ)ところが、稜線だった。ホットするまもなく、丸山ケルンのベースキャンプへ急ぐ。
帰幕したのは、日没からかなり経った8時頃だった。ヤレヤレ。