不帰Ⅰ峰尾根

1989/5/3~4
メンバー:中川・桜井 桜井 記


5月3日定着パーティーと別れ、我々2名は上・樺から、八方支尾根を下降する。パーティーのメンバーに対しては、何とも思わないが、ザックの中に入っている“すきやき”には未練が残る。
支尾根を下り途中から左側の急斜面を唐松沢に下降する。この辺りからはⅠ峰尾根全容が見わたせ、その長大さを感じさせる。下を見ると先行パーティーが3組いて、1組はⅡ峰の三角岩壁へ向かった様で、2組は我々と同じⅠ峰尾根の様だ。
先行パーティーのトレースを追い、唐松沢をトラバースして、P1、P2間ルンゼを登路にⅠ峰尾根に上る。対岸から見たときはかなり急に見えたが、何という斜面でもない。この頃から雨が落ちてきて、尾根に上がった時には、雷を伴った雨になってしまった。ここで仕度をしてザイルを着けるが先行パーティーの順番待ちで体が冷えてしまった。
ようやく我々の番となり、中川トップで這い松をたよりに登り出す。雪稜はいいが急な雪壁は足元を今にもすくわれそうでいやらしく這い松を出来るだけ掘りおこして、だましだまし登る。スタッカートとコンテを混じえ、先行パーティー1組を抜いて登っていくが、ガスで視界がほとんどきかない。 晴れでいれば定着パーティーとこちらで確認出来るのだろうが、今はトランシーバーだけが頼りだがそれも交信出来ないでいる。
断壁基部と思われた所は桜井トップで越すが、たいした困難さもないまま通過、今年は雪が多いので埋まってしまっているのだろうと話をしていたのだがこれが後で、まだ断壁でなかったことに気づく。
もう一組の先行パーティーに追いつくが彼らはビバークの用意に入っており、午後2時を回った頃でまだ早いが雷がひどくなりそうなので我々もシュルンドの切れめに良いビバークサイトを見つけたので、幕を張ることにする。
夕刻にガスが晴れで視界が回復すると目の前に断壁基部のハングが姿を現わした。全身ビショ濡れの体でのビバーグは朝まてほとんど寝れないきびしいものであった。
4日、前日の天気がうその様に朝から晴れ上がった。気合いを入れて3時起床、5時半出発(というより寒くて寝ていられなかった)s
前夜、近くでビバークしていたパーティより一足先に断壁基部のハングに取り付く。中川トップにて、垂直カンテの右側フェースをアブミのかけかえで登り、カンテを左に超え段々に岩が積み重なった様なハングを直上、雪稜を登り、ハーケンを打っ てビレーとする。
お互いにアブミを2台ずつ持っているのに、何故か中川が途中に1つ残していった。桜井フォローで登るが中川の残したアブミの回収に手こずる。納得! 桜井が、この上でアブミを一台下に落とし、下のパーティに拾ってもらった。kaerazu この上も急な雪稜、雪壁が続くがコンテで(というよりお互いザイルにつながっているだけ)スピードアップを計る。支稜の上がってきているジャンクションで断壁が終ったことを確認し、登行を続ける。
最終ピッチのブッシュの多い急峻な雪壁を何故かスタカートでピークより左側に中川トップで抜け、桜井が続く。這松をこいで1峰のピークに登り、時間はまだ9時を回ったばかりだった。ここで始めて西側の日本海側の山なみが見わたせた。
唐松岳迄の縦走も途中いやらしい所が有ったりして結構長く感じられた。2峰の頭で濡れたものをすべて広げて乾かしたり、お茶を飲んだりして大休止。3峰A尾根、B尾根を登る我々のパーティがよく見え、トランシーバーも感度良好で、上で見ている分には実に楽しい。
唐松岳のピークに着くと一人で八方尾根を登ってきた川崎氏と合流出来た。しばらくA尾根、B尾根パーティの登っているのを見ていたが川崎氏を交信係として残し、我々2人は先にベースへ降りた。

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