屏風岩 三つの登攀

1989/8/6~13
メンバー:中川・他  中川 記


8/5(土)

焼岳小屋の宮本さんのジムニーで新村橋まで入り、30キロ近い荷を背負って横尾にキャンプを張る。夜中より雨。

8/6(日)

雨、時々晴。台風のため、一日中天気が悪く屏風の偵察で終わる。

8/7(月)

曇り、屏風はガスで見えない。8時80分横尾出発。T4尾根取り付き9時50分、T4テラス11時、11時30分雲稜ルートに中川リードで取り付く。ぬれた岩は悪く、上部2ピッチで時間を思ったよりくい、午後3時30分終了する。
ザイルをしまい、4時に終了点を出発し、最低コル5時、パノラマコースから徳沢着。6時30分ビールとイワナ、うどんを徳沢園の奥さんに御馳走になり、風呂もすすめられるが、さすがにことわる。横尾に帰ろうとすると引き止められ、徳沢園泊まりとなる。

8/8(火)

ど快晴。遅く起きて、徳沢園でおにぎりを御馳走になる。テント場のゴミ焼きを手伝いミソをもらって横尾に帰る。川原で日光裕をしてゆっくり休養。

8/9(水)

快晴。5時起床。6時10分出発、7時30分東壁ルンゼ取り付き、すでに1パーティが取り付いている。3ピッチ目で先を譲ってもらい、9時30分下部スラブ終了。休憩後、10時中川リードで上部壁に取り付く。
出だしから5級の難しいフリーでハング出口とトラバースはAO~A1としてしまう。2ピッチ目は、A1から2mの水平ハング越えで田岡君リード。
3ピッチ目A1で2m直上後、AOトラバースし、5級の垂壁をA1で越え、4級程の凹角からカンテを回り込んで、ピッチを切る。
4ピッチ目10m程の3級AO、5ピッチ目+の凹角から草付きへはいずり上がり、4級程度の凹角に出る。ここでルートがわかりずらくなり、迷ったあげく、左上の凹角をA1で越え、次の垂壁2mをA1で抜け、草付きを少し登ると、左にかぶり気味のクラック、右にもろい凹角がある部分に着く。
正しくは、左のクラックだったのだが、ピンが遠く、フリーも5-はありそうなので右の凹角からカンテを強引に抜け、ピッチを切る。
6ピッチ目、右上か、左上か迷ったあげく、左が正しい事がわかり、5m程ピナクルの上を左に下降気味にトラバースし、草付きを10m左上して、大テラスに着きピッチを切る。
7ピッチ目、田岡リードで、への字ハングに取り付く。最後の核心だ。張り出しは4m程あるが、ピンも近く、常に足が着くため快適である。ただし、出口のボルトが遠く苦労した。への字ハングを抜け、A1で10m程直上した所で登攀終了(2時40分)として下降に入る。同ルートを4回の空中懸垂でT3まで下り、あとはT4尾根を下る。午後5時横尾着。ビールとワインで乾杯する。

8/10(木)

曇り、時々晴れ。休養日。屏風を偵察後、田岡君と嘉門次小屋へソバを食べに行く。小屋の主人にヤマメの塩焼きを御馳走になり、テクテクと横尾のテントに帰る。
途中スリッパでボルダーをして、左足に血マメを作ってしまう。

8/11(金)

晴。東壁大スラブと雲稜、東稜の継続のつもりで出かけるが、T4から大スラブルートへのトラバースが意外に悪かった事、ボルトの遠いA1に中川が苦労した事、左上していくルートで同ルートの下降がしずらい事で継続をあきらめ、だらだら登って大スラブに6時間もかかってしまった。
パノラマコースで涸沢ヒュッテまで行き、オデンとビールで乾杯!
今回の屏風岩登攀はこれで終了した。午後7時ヘッドランプもつけずに横尾につく。再び、ワインとビールを飲む。今回で一番長く疲れた一日であった。

8/12(土)

晴。午前10時、田岡君は小川山へと移動し、横尾山荘の前は,入山者でごったがえしている。嵓の本隊は、11時頃到着の予定なので川原で日光浴をする。
11時30分になっても来ないため、仕方なく小屋の前でビールを飲む事にする。あいかわらずビールはうまい。!!飲み終ったころ、嵓のメンバーが到着。もう12時を過ぎている。どの顔も生々として見える。今日から合宿かーと、思うと義務感みたいなものがわいてくる。

8/13(日)

晴。滝谷P2フランケ 準備万端のつもりで7時にテントを出発し、10分も歩かぬうちに、谷中君がザイルが1本しかないのに気がつき、テントに取りにもどる。
北穂沢から見る涸沢は、カラフルなテントで色どられ別世界のようである。早く出発した登山者が南稜に列をなし、青空の下で汗を流している。のんびりした一日になりそうだった。 谷中君がもどり、中川も2回目のトイレから帰り、出発する。久しぶりの南稜は長く数回の休憩を入れて、ようやく南稜上部のテント場につく。船橋さんに出合い、一緒に北穂小屋まで行き、ビールを飲む。ずいぶん遅れていると思っていた谷中君が、思ったより早く小屋に着く。船橋さんがテント場に下っていき、こちらも重い腰を上げる。彼は、クラック尾根のようである。
B沢は、ガラガラで慎重に下りていく。5分もしないうちに、後続パーティーがつかえ、途中から先に行ってもらう。クラック尾根を登るようなので後からついていく。(P2フランケは、クラック尾根を廻り込む)ところが、B沢を下り過ぎた事に気がつき、クラック尾根末端で、1時間近くロスしてしまった。
P2フランケへのトラバースは、我々が先に始める。(クラック尾根パーティーも2ピッチトラバースしてから凹角に取り付いた。)出だしからもろく、ザイルはシングルにして中川トップで行く。40m程で古いハーケンを見つけピッチをきる。
ハーケンを打ち足そうとするがうまくいかず、古いハーケンでセルフビレイを取って、谷中君をボディビレイで後続させる。足場が安定しないままビレイしていると、中間地点でいきなり谷中君の体が横へ飛び視界から消える。大きな落石と同時に気が付くと俺は、前に引き倒されていた。後続パーティーの指示で谷中君を安定した処まで下ろし、登りかえしてもらう。
無事な姿でビレイ点まで谷中君が来た時には、本当にホッとした。後続パーティーの話だと、うまく背中のザックから岩にあたったようである。運がよかった。
もう1ピッチ右にトラバースして、広いテラスにつき、軽く食事をする。これで登攀を中止するか、ルートを変更してクラック尾根にするか迷うが、谷中君は大丈夫そうだし、P2フランケはもう目の前で、岩もしっかりして見える為、予定通りP2フランケに行く事にする。
教ピッチ右へトラバースして、無事基部に着くと、ガスが出始めた為、少し焦るが3時間程で登攀を終了する事が出来た。途中、2ピッチ目でとなりのクラック尾根を登攀中の船橋さんからコールがあり、何か心強いものを感じた。
ガスが晴れ、目の前にドームが見える。人間げんきんなものでドームも登りたくなるが、時間と事故の反省もあって、今は無事登攀終了出来た事を感謝して、帰りを急ぐことにした。

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