不帰岳3峰B尾根

1989/5/5
メンバー:川崎・中川・桜井 川崎  記


前日、夜行の疲れでヨタヨタ、1人で歩いた唐松岳へ頂上手前まで今日は3人で駆け上がる。鞍部に近い下降点をやり過ごし取り付きにダイレクトに降りれる沢を選ぶ。中川氏がヒョイと降りで確かめ、「いいよ」の声で続いたのはよいが、後ろ向きのダブルアックスの急峻で、桜井君が控えのバイルを貸してくれなかったら到底下れやしないところだった。そのままバックで約百メーター降り、あとは雪崩を気にし腐った雪に足をとられて唐松沢を越え、取り付きに至る。
右側上方のA尾根で別パーティがナイフエッジをスターカットで通過しているのが危なっかしく見え、当方もやや緊張する。
桜井・川崎・中川の順でブッシュ雪壁を攀じり始める。小生にとって登攀は久し振り。這松が良くも悪くも手掛かり足掛かり。アイゼンに踏まれる這松の痛さを思いやる分、桜井君は別に待ってもないし、50メートルのザイルに3人が繋がっているのでは動かぬ訳にいかず後を追っていく。
ザイルが這松に絡む。雪稜からリッジ、チムニーを越えたところでつるべ式にトップ交代。積雪はトレースが既にバッチリで、急なところは適当に枝がでていてそれを掴めるので不安はないが、ホールドの岩が浮いていて神経をつかった。主に雪壁といえどヘルメット着用が望まれる。
先行パーティ2人に追いつき、彼らはルートを誤って詰まっているとして右側から登る。中川氏が彼らのザックにスノーバーが着いているのを見つけ当会のものでないかと問う。彼らも正直なもので2本とも今日拾ったことを告白する。トランシーバーで交信し松元さんから“新しい方”との指定を受けたが、結局古くて小さい方を受けとっていたのは何となく遠慮があったのかもしれない。
さらに雪壁を攀じり、A尾根の上部岩壁と同じ高度になったところで昨日眺めていたところでは通過パーティはそこからナイフエッジを越え、左側Cルンゼをつめていたので、“終了近し”と交信すると“直上せよ”と話が合わない。ままよとナイフエッジを越え雪壁を少し登り岩壁をまた攀じると、トレースのない切れたナイフエッジが控えており、トップの中川氏を気持ちだけピッケルで確保し、皆が渡りきり終了。稜線にはかなりの人が休んでいた。この間休みなく、コンテで、むしろ藪でザイルの扱いに苦労したぐらいであった。
良く踏まれていたので安心感があり、ぐいぐいと登れたが、新雪時ではルートファインディングと雪庇の注意でこんな具合にはいかないのは当然だろう。また若い練達の2人にはさまってよく状況も見る余裕もなく登らされた感がある。登攀を正味時間1.5時間位であったと思われる。このスピードは、より大きな雪稜を登りきるのに、大切な武器であるに違いない。
一言。前日の盛り上がっている日にA尾根に参加したかった。

戻る

Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Google Bookmarks