北アルプス錫杖岳前衛フェース 3本登っちゃいました

1995/8/16~20
メンバー:松野・平館・桜井・宮城  宮城 記


松野・平館パーティー 8/17・・・左方カンテ、18・・・1ルンゼ、19・・・3ルンゼ
桜井・宮城パーティー 8/17・・・左方カンテ、18・・・1ルンゼ、19・・・北沢フェース

Part1・・・・左方カンテ
アプローチ ☆☆☆、岩質 ☆☆☆
技術度 ☆☆、残置類 ☆☆、総合 ☆☆

8/16、松野さんの運転するMARKⅡは、平館さん、桜井さん、宮城を乗せて猛烈なスビードであっという間(松野さんにとってはそうではないかも?)に新穂高に到着した。
そもそもこの錫杖行きは桜井さんからの誘いがはじまりだったが、Aフランケの事故があり中断していた。が、先週の水根沢山行でまた話が復活したのである。この岩場はアプローチが非常に近く、水場も心配なしということでとても楽しめそうだ。
自分なりにモットーを考えてみた。
「とにかく快適に楽しく素晴らしい山行を…・」
8/17、入山口は槍見温泉で、その少し手前には無料露天風呂がありもう最高!しかも、ここから約1H30MのアプローチでB.Cに着くことができるので超理想的。使えるか分からない装備だって担ぎ上げてしまえ。そして前々からメンバーで是非持っていこうと決めていた“1人あたり2~3Lビール歩符”ももちろん背負わないと話にならない。
AM8:00槍見温泉出発。AM9:30頃予定通りクリヤ谷と錫杖沢出合のB.C到着。前衛フェースが異様にせまっていて、一ノ倉沢をはじめてみたように体中が鳥肌もんで、それだけ興奮しているということ。ちなみにテントは4~5張りOK。
とりあえず1本登ってみましょうということでまずトポでは3つ星の“左方カンテ”の小手調べといりましょう。パーティー編成は松野・平館、桜井・宮城で、後者が先行で出発。基部までは急な錫杖沢を30分程つめ、右にのびる明瞭な踏跡をたどるとまもなく着く。途中岩小屋があるがそこまで重荷を担ぎ上げるのは大変なので出合が一番良く、快適だと思う。
さて、いよいよ本題に入ろう。広場でさんざん一のガリー、二のガリーに迷い一番楽そうなルンゼに入っていく。Start PM12:00
1P目、宮城リード:ただのガレルンゼ。アブザイレン用捨て縄があちこちにありまぎらわしい。
2P目、桜井リード:引き続きルンゼを少々登り、リッジに出て3m程でB.P。このあたりで現在地を確認するがどうもトポ(日本の岩場)とは違うようでちょっと考え込んでしまう。もう少し先に進んで再度考えてみましょう。
3P目、宮城リード:出だしからきついフェースに変わる。残置類はチップの見えるボルトやグラグラのピトンばっかり。分かったぞ、どうやらここがV、A1のピッチらしいぞ。ということは二のガリーでやってきたということなのだろうか。A1といっても多少は遠いガバが連続するため、AOで越すことができる(フリーでも可能)。すると広いバンド帯に出てルートをどこにとるか送ってしまう。20m程でB.Pにたどり着く。ここから北沢フェースの眺めがバッチリだ。
4P目、桜井リード:少々草付を登ってから、垂直のチムニーに入る。(一見とても攀じれそうには見えない。)桜井さんはバック・アンド・フットで超えていった。出口すぎにデカイ大木がありここでピッチをきる。
5P目、宮城リード:膝ジャミンクが決まるクラックからStart。左側のフェースはリングボルト・ラダーになっておりアイゼンの跡が痛ましい。カンテに出て立派なテラスにてビレイ。
6P目、宮城リード:すると目の前にフォールしたらひとたまりもないようなオフウィズスが……。気合いをいれて続けて攀じり出す。なんてったって落ちたらたまらないからね。突然俺をビレイしてくれてる桜井さんは「宮城、落ちたら人間チョック・ストーンor人間ナッツになっちゃうだろうな。」なんてジョークを飛ばしてくる。後に松野さんまで「回収するには石鹸水が必要だね。」という感じ。そりゃそうだ。ルートは恐ろしいオフウィズスからクラック~フェースとつなげるが、途中のフェースに大ガバがあるがそれは浮石なのでご用心。B.P手前の2~3mはスメアで抜ける。
7P目.桜井リード:フェースから緩傾斜帯に入るが全ての岩がフレークになっていて叩いて確認すると空洞化した音しかしないのでは体重を乗せるのも恐ろしい。最後は立ち木てビレイ、終了。  登攀時間2時間45分

※下降は同ルートを6回半のアプサイレンで取り付きまで。各々の支点は捨て縄ばっちりで安心して下降できる。
なお、終了点から上はNO ROPEでP2までいくことがてきると思う。(僕達は終了点から100m程登り穂高連峰を見ることのできるポイントまでしか登ってません。)

夜の出来事:B.C前のクリヤ谷は水が枯れて?いるため、たき木(かん木)を捜すのがとても容易。逆にたくさんありすぎて困ってしまう程。気持ち良く燃え.天国まで届きそうだ。佐藤さんまで届くかな?
そして本日は宮城が持ってきた3Lビヤ樽で乾杯、最高のご馳走のかつ丼で一日をしめくくった。

Part2・・・・1ルンゼ
アプローチ ☆☆☆、岩質 ☆☆☆
技術度 ☆☆、残置類 ☆☆、総合 ☆☆☆

8/18、今日も十分睡眠をとった。さあ1ルンゼと参ろう。アプローチは前日と同じでもう勝手知ったる所。取り付きは広場より基部を2~3分トラバースした所の押し出しですぐに分かります。桜井さんからStart。
1P目、桜井リ~ド:垂直のフェースをら攀じるわけだが、すこくいやらしい。ホールドはカチっとしているが細かく、スタンスも微妙だ。朝一の運動だけあってAOを使いたくなってしまう。この先もこんなにヤバイのかなあ?と思いつつ桜井さんの待つビレイ点に顔を引きつらせながら到着した。
2P目、宮城リード:まだまだ体が動かず、妙に動きがいいのは手の内を流れる汗だけ。小ハング抜けロでフールを恐れてしまい、AOを使ってしまえ。ただし残置類にはご注意を!左下から上がってくるバンドと合流した所でピッチをきる。
3P目、桜井リード:スラブからガレ状を進む。出だしてキャメロット(#0.5を決め順調だ。このあたりは傾斜がゆるい。
4P目、宮城リード:正面のV字岩壁が僕達に襲いかかってきそうだが、回り込むように浅いルンゼから逃げる。ここも立派なテラスで残置ビナでビレイ。(V字岩壁はここ最近登られていないと聞いたが、見る限りリングボルト・ラダーの中に新しいのも交じっていたり、敗退の跡なのか残置ビナがいっぱいぶらさがっていて以外に登られていそうだ。)
5P目、桜井リード:凹角を右上後直上。途中右への一歩が難しい。枝井さん更に凹状をつめビレイ。「ビレイ解除。」の声ですかさす攀じり始める。すると、「宮城、登りすぎちゃったみたいで左下にテラスがあるからそっちの方がよさそうだからそこまでトラバースしてくれないか.」とのこと「分かりました」 このあたりあちこちにB.Pがあり本当にどこへでも登れてしまうのだ。ここは素晴らしい大テラスで、桜井さんもアプザイレンしてきた。ビバーク地にも適したところで、他にパーティーもいないため30分の大休憩をとる。頭上にはハング帯がありどういこうか見とれてしまう。
6P目、宮城リード:快適な細いクラックからStart。これ以後A1のピッチとなる。残置はピトンが主で比較的よくきいている。2つ目のハングを直上と考えたがうまいリスが見つからず、カム類もきかないため強引なピトン・ラダーを左上する。フェースに出るとピトン×いボルト×1のB.Pに出会うが3~4m先に立派そうなのがあるので(ピトン×3、ボルト×1)そこを利用する。
7P目、桜井リード:快適な傾斜の緩いスラブを直上.左のフェースは前傾した白壁ルートでピトンの効き具合は分からないが是非登ってみたいー本だ。途中RCC・リングボルトがそれぞれ1本ずつあるビレイ点らしきものにぶち当たるが更に上にいき安定した小レッジでビレイ。
8P目、宮城リード:最終ピッチ、気をゆるめずしっかりホールドをさがし、ばっちりランニングをとっていこう。傾斜の緩いチムニー状でルートは2通りある。僕は左のチムニーに取り付いた。ホールドはガバの連続でレイバックまで登場する始末。しかし岩の脆さには少々参ってしまったが……。横断バンドに上がる一歩も要注意。すると目の前にはボルト連打のビレイ点が見えてくる。ここで終了だ。
P3まで偵察でもしてみようかと思ったが、結構悪そうなのでV字岩壁の終了らしき地点までフィックスをはり、松野・平館パーティーを待つことにしよう。ここは素晴らしいテラスになっていて.また桜井さんがジョーク。「ここでいきなり将棋をさしていたら登ってきた人はアセルだろうな!」  登攀時間3時間30分

※下降は同ルートを6回、1時間のアプザイレンで取り付きへ。ピッチの切り方によっては少々恐いおもいをしなければならない場合もある。

夜の出来事:本日は松野さんが荷上げした2Lビールと平館さんが持って来たバーボンで乾杯だ。そして最後にこの1ルンゼは実質1.2P目が核心であったと思う。だがそれぞれのB.Pはしっかりしているので残置類さえ気をつけれは、☆☆☆以上の楽しさを味わえるだろう。(残置類、不安を感じたら必ずセットするように心がけよう。)

Part3・・・・北沢フェース
アプローチ ☆☆☆、岩質 ☆☆☆
技術度 ☆☆☆、残置類 ☆、総合 ☆☆☆

8/19、とうとうクライミング最終日がきてしまった。なんか早すぎるなー。まあ、楽しい日々はあっという間に過ぎ、楽しみにしている日々は首を長ーくして待っているしかないものだ。
B.C出発間際、松野さんが「登り終わったらB.Cを撤収して下までおりない?」という提案を持ちかけてきた。みんな大賛成。早く登って温泉に入ろう。本日はそれぞれ別ルートを攀じる事になっていて、松野パーテーは3ルンゼへ、桜井パーティーは北沢フェースを攀じる予定だ。どちらにしても基部のデボ地点までは一緒なのでまたいつものアプローチを歩き出す。
彼らを見送ってから僕達もSETする。さあ、本日も桜井さんTOPでAM10:00Start。
1P目、桜井リード:濡れ濡れのルンゼから攀じり出す。1ルンゼの1P目同様、非常に悪く思う。ホールドは全て外傾しており不安を感じたら迷わずAOを使おう。やはいルンゼから次は木登りになる。体格の大きい人やでかいザックを持った人は相当ダメージをくらうことになるだうう。潅木でビレイ。
2P目、宮城リード:とても草付とは思えない階段状の岩場を25m程で大テラス。正面には白壁ルートのリングボルト・ラダーが続いている。北沢フェースのバリエーション、チムニールートもぱっちり一望できる。
3P目、桜井リード:このピッチもⅡとは思えない左上バンド(ピナクルバンド)をトラバースし40mでハングの基部に達する。左には初日に攀じった左方カンテ2P目終了点がすぐ目の前に見える。
4P目、宮城リード:ここから4ピッチ、アブミの登場だ。ボルト・ラダーが小ハング下まで続いており、乗っ越しはアブミ最上段に乗ってヤバイピトンに掛け変えて以外に姿に顔すことができる。しかしピトン・ボルトは全て不安定てグラグラするものやチップが見えているものばっかりた。タイオフ用スリングを多量に使う。B.Pはリングボルト2本であるが3~4mmしかうまっておらずうまく残置を使ってバクアッブをとる必要がある。
5P目、桜井リード:出だしからアイスハーケンにランニングをとらねけれはならない.グラグラのピトン・ラダーに桜井さんは発狂しながら攀じっている。そしていよいよ問題の地点だ。トポでは扇ハングを越すと書いてあるが、メンバー4人でB.Cから見ても近くから見てもハングらしきものが見当たらない。実際「このあたりがそうなのかな?」というくらいにしか分からなく、はっきりしないまま通りすぎてしまった。安定したバンドでビレイ。
6P目、宮城リード:頭上にハングがせり出していて、ルートは左上してから右に攀じっていく感じ。常に体は岩から離れているため高度感が素晴らしい。リングボルトが根元からひん曲がっていたり、リングがとんでいるものもあるので3mmシュリンゲに体重を乗せたりとなかなかスリル満点だ。2~3ヶ所最上段に上がらなくては届かないところもあった。そしてなんてったって木のクサピが残置としてのこっているではないか。手で触ってみると体重は支えてくれそうだが、「本当にこれにかけるのかよー。」ととりあえずあたりを探しまくるとラッキー、サビサビではあるがボルトを1本見つけ、そっちにかけヒイヒイ言いながらハングを越し洞穴に入る。この時少々ランナウトするのでキャメロット(#1.0)を決め枯れ木に乗ってビレイ点に達する。なかなかおもしろいピッチです。
7P目、桜井リード:木のクサビが3本打たれているが壁の中央にリングボルトが2本ありわざわざ使う必要もないだう。6~7mで「ビレイ解除」
8P目、宮城リード:直上よりも左に少々トラバースしてクラックに入ったほうが快適。それにに自然だ。クレードはV-程度。
9P目、桜井リード:フェースを少々登りブッシュ帯に入る。まもなくコール。どうやら終了のようだ。  登攀時間4時間45分

※ここよりロープをはずし少しの藪漕ぎで左方カンデ終了点に出る.あとは同じだ。二人とも結局へロヘロマンに変身してしまい松野さん達と約束したB.C、PM4時は守れず、5時頃になってしまった。彼らは3時頃には着いていたということでだいぶ持たせてしまった。桜井さんが荷上げした2Lビールを味わいB.Cを撤収して下山にかかる。さあ下りようとした時3人パーティーが上がってきた。どうやら最近遭難があったらしくその追悼山行のようだ。
貸し切りだった錫状をそのパーティーに受け渡しタ闇せまる中、槍見温泉へ下山した。

Part4
だが、今回の目的は山行だけではないのじャ。実は温泉めぐりも立派な計画に入っておるのじゃ。まず一つ目は新穂高終点に近い笠何とかという(各前は忘れてしまいましたが、笠新道に向かう右側にある温泉)ところの風呂に入った。入浴料¥500なり。ここは素晴らしい温泉ですぞ。冷やしトマトは食べ放題、女風呂はのぞき放題?食事をとった後、二つ目の槍見温泉下の露天風呂に入るのじゃ。(この間老いほれ酔っ払いキャンパーにからかわれたりしたが、ちゃっかり天ぷらをご馳走になりました)混浴なのだが平館さんは勇気をふりしぼって入ってきた。(皆さんの想像に任せます。ちなみに回りの女性は水着持参です。)そしてここには、もう好きにしてと言わんはかりのクライマ-泣かせのボルダーがあり、即我々はまわりの視線を気にも止めず素っ裸でとりあえず3本のルートを設定してきた。収り付いている者は本気そのものだが、なにせ素っ裸のブルンブルン状態だから後から見ているともう爆笑もの。しかし真剣にやりすぎて大切なものが擦りむけてしまったら大変です。是非トライしてもらいたい代物だ。
さあ、翌20日は朝一でまた例の露天風呂に入るがボルダーの気力は沸いてこぬ。朝食にトンかつ定食を食べた後、当初予定していた飛騨牛ツアーを中止し温泉にもう1件つかった後帰りましょうということになる。最後の湯は平湯温泉・神の湯。この頃になるとクライミングのと温泉の疲れで長湯もできず早々出てしまう。桜井さん得意の尻打たせ技もここでは見ることができなかった。
まあ以上が今回の報告であるが、それにしても錫状は素晴らしいところだ。温泉はあるし、アプローチは楽。岩場も快適でたき火もできるときたもんだ。もちろん初心者から上級者まで楽しめる。これだけ条件のそろったエリアもめずらしいのでは。今回のメンバー一押しのエリアだ。どうだろう、来年あたり夏合宿等で集中山行というのは…

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