苗場山北面・清津川・釜川右俣

1995/9/30~10/1
メンバー:本元・宮城・杉浦 杉浦  記


29日の夜、かねてから予定じていた釜川へ向かう。桜井さんが急用で来れなくなってしまったので、今回のメンバーは3人である。今年は、白井沢、東沢本棚沢、ナルミズ沢、庚申川本流と登ってきて、いよいよという気持ちだ。自分にとっては初めての4級クラスの沢で、期待も不安も今まで以上に大きい。

深夜の関越をとばし石打ICに着くと、目の前に見慣れた車が止まっている。横浜ナンバーで、しかも後部にメットを並べて・・‥・・。もしやと思ったが、やはり裕二郎さんの車であった。佐藤、小林、杉野を含む4人で米子沢へ行くという。お互いの楽しい山行を願いつつ、それぞれの方向に別れた。
その後我々は、色気を出したショートカットルートを間違え、通行止めの林道を大きく巻き、すったもんだの揚げ句、02:00過ぎに出合付近に到着した。何故かノンアルコールビールで乾杯し、すぐに就寝となる。
翌朝は07:00起床。用水路沿いの立派な道から踏み跡をたどり、入渓点の取水域に08:40に到着。いよいよの遡行開始である。取水場を高巻くと、いきなり泳ぎから始まる。朝の水は冷たい。しかも丑天で寒さも感じるが、思いきりよく突破。その上はしばらく巨岩の折り重なったゴーロを歩く。迷路状で、岩の聞からは立派な滝も落している。あちこち行ったり来たりして、ルートファインデイングに気を使うところだ。
しばらく歩くとゴルジュとなり、20mのトロが行く手をふさぐ。突破は困難で左岸よりの高巻き。懸垂で沢床に降りると再びゴーロ。やがて二俣となり、本流である左俣を見送って右俣へと入る。すぐにゴルジュとなり、大釜を持ったCS滝が現れる。「関東周辺の沢」では高巻きとあったが、右岸まで泳いで左壁より直登し、突破する。
その後は深いゴルジュの中に、滝と釜とトロが連続し、そのどれもが適度な難しさをもっていて楽しい。20mの泳ぎなどの見せ場もあり、なかなかの手ごたえである。高巻き、直登、泳ぎ、へつり、徒渉と、息つぐ間もない。
突然視界が開けると、左右に広大なスラブ壁をめぐらした三ツ釜大滝が登場する。あまりの美しさに声も出ない。しばし見とれてしまう。
右のカンテ状を高巻き気味にブッシュに入り、1段目上で出合うヤド沢の沢床に降り立つと、スラブ上に岩をえぐるかのように巨大なプールが出現した。どうしたらこんな風になるのかは判らないが、この自然の造形実には驚嘆の念を覚えずにはいられない。
大滝に別れを告げ、さらに進む。この先しばらくは、ナメとナメ小滝の続く優美な渓相となる。ゴルジュはまだ切れないが、ナメのヒタヒタ歩きは気持ちがよい。が、そうは長く続かず、再び深い廊下状となった。
次々と現れる滝をグイグイと突破していく。ゴルジュは一段と深くなり、S宇状に屈曲したドン詰まりに15m滝が現れる。右岸の草付を落口と同高度まで登り、さらに3mはどの露岩を登る。スリップしようものなら、沢床までまっさかさまといううところだ。Ⅳ-程度であろうが、緊張する。
懸垂で先の河原に降りると、そこが清水沢出合であった。予定よりずいぶん早い。
本来ならこの辺りをビバーク地と考えていたのだが、まだ13:00前である・・このペースに気を良くして、さらに奥へ進むことにした。というのも、この先まだ10mのトロの泳ぎが控えており、できればそこを突破してからビバークに入りたいと考えたからだ。朝イチの泳ぎはもう沢山である。その10mのトロの手前で大休止をとった。ここで宮城と杉浦は竿を出すが釣果はなし。木元さんはひたすら火を燃やしていた。
しばらくくつろいだ後、トロの通過に入る。水に入りたくないのでなるべくへつっていくが、奥に控えた幅2mはどの廊下であえなく泳ぎとなった。しかし宮城君は絶妙のトラバースで奥の滝までつなげてしまった。あいかわらずのクライミングセンスである。
続く12m滝lま、シャワークライムとなるので高巻く。ここで宮城君は、さっきまで濡れるのを嫌っていたのに、果敢にも水流をシャワークライムで直登していった。つまり彼は、ルートが選択できるのならより難しい方を選ぶ男なのだった。
ゴルジュが切れると河原となり、右岸にすばらしい台地を発見。本日の寝床とする。その夜は3人とも少々つかれ気味で、木元さんのとってきたフキなどをつまみに酒を飲んでいたのだが、21:00過ぎにはツェルトに入って寝てしまった。
1日の朝は07:00に起床。なんと9時間以上も眠ってしまった。たっぶり睡眠をとったので気持ちの良い朝だ。朝食をとり08:00過ぎに出発。
しばらくゴーロを歩くと、突然林道が横断してくる。建設が予定されている原発へ続く道らしいが、深い谷を遡ってきただけに、この突然の人工物は、原発のことも含め、まったく腹立たしい限りだ。
ブックサ言いながらゴーロを歩いていくと、3段10mの滝が出現する。ここは左岸よりツルツル滑る草付を登って高巻く。滝の上が横沢の二俣で、右俣に入っていく。水量はぐっと少なくなり、釜を持った小滝を次々越えていくと、奥の二俣である。ここも右俣に入る〈確かに入った)。
水量はどんどんと少なくなり、プッシュの密生した窪状になっていく。やがて水は渇れ、プッシュは凄まじいものになっていった。もうとっくに小松原の登山道に出ても良さそうなのだが、そんな気配はない。見落としたのかと思ったが、ままよと稜線まで詰め上げることにした。最悪は左の尾根に出れば登山道を拾える。その時はそう思っていた。
やがて一面の笹ヤブとなり、10分もすると稜線へ飛び出した。ここは日蔭山と釜ヶ峰のコルであるらしい。我々は奥の二俣を右に入ったつもりだったのだが、実は左俣を詰めていたのだった。キツネにつままれたような気分だったが、ブッシュかなにかで本来の二俣を見落としていたと考えるのが妥当だろう。
多少時間はロスしたものの、稜線に出るのはやはり気持ちがいい。紅葉もたけなわで悪くない気分である。ツメのブッシュはうるさかったが、まあたまには野性的なのも良いであろうと思い直して下山にかかる。このころから小雨が降り出し、小松原湿原に着くころにはけっこう本格的な雨となった。
しかし小松原湿原は、釜川のフィナーレにふさわしく、ひっそりとして美しい。雨にけむる湿原も、また趣があってよろしいと、なかば強引に納得し、大場への下山を急いだ。
釜川は、非常に美しく、また荒れた感もなく、とび抜けて困難な箇所があるわけではないが、適度な難しさが連続し、何かちょっとした沢の核心が続くといった感じで、とても楽しいものであった。盛夏のころに、もう一度訪れてみたい谷である。

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