一ノ倉沢・衝立岩雲稜第二ルート

1994/6/4
メンバー:木元・遠藤  木元 記


前夜車で出合に入って幕営し、翌朝4時に起床、5時に出合を出発する。ダイレクトカンテを目指す立木さん、宮城君とずっと行動を共にする。
私が最後に-ノ倉を登ったのは一昨年9月のコップ左岩壁なので、今回は約1年8ケ月ぶりということになる。しかし、今年は春先から真面目にトレーニングしてきているためか、プレッシャーはほとんど感じずに、気楽にテールリッジを登って行く。
だが中央稜基部が近付くにつれて、右上の衝立岩が覆い被さってくるような、何とも言えない嫌な圧迫感を感じるようになってきた。まるで壁全体が、巨大なオーバーハングになっているように思えてくる。段々とビビッてきたが、まさか登れないことはないだろうと気を取り直して、烏帽子を登る人達と別れて衝立スラブヘと足を踏み出す。
アンザイレンテラスヘのトラパースでは少々道に迷ったものの、比較的草付も安定して登りやすい。ここで話合い、私が奇数ピッチ、遠藤さんが偶数ピッチをリードすることにする。懸垂していくダイレクトカンテの二人を見送り、登攀開始となる。
1ピッチ目:雲稜ルートを登る。特に問題はない。二人用テラスで遠藤さんをビレイしていると、ダイレクトカンテ1ピッチ目をリードしている宮城君の動きがよく見える。セカンドで登ってくる遠藤さんは、少し体調が悪そうな感じ。そのすぐ後ろを、雲一へ行くという雲表パーティが登ってくる。
2ピッチ目:遠藤さんリードで行くが中程で直上しすぎてしまい、一度クライムタウンして今度は右へ右へと進む。鳥型の岩のくちばしの部分でピッチを切るが、立木さんが2ピッチ目をリード中で、普通に話をする事ができ、ゲレンデにいるような感じがする。
3ピッチ目:単純なA1から大ハングヘ。途中、抜けそうなピンがあったので打ち直す。その上はリングのとんだボルトに30cm位の長い3mmシュリンゲにアブミをかけなければならず、乗り移るのに勇気が入るところだ。5m右には3ピッチ目をリードし終えた宮城君がこちら向いて「木元さん、恐そうですねー」と言いながらニコニコしている。大ハングを越えた所でアブミピレイとなる。
4ピッチ目:遠藤さんリード。所々交じるフリーが悪いらしく「頼みまーす」との声が3回ほどかかる。セカンドで登って行くと確かに嫌らしいフリーが入って恐いピッチだ。しかし、岩の弱点を縫って行くようなラインで、単調な人工よりは面白いピッチだとも言える。
さて、遠藤さんが4ピッチ目をリードしている間に、立木さんと宮城君は終了点に達し「じゃあ先に降りるから気をつけて」と言い残して下降していった。下を見ると南稜フランケダイレクトを登り終えた尾原さんパーティ三人がテールリッジを下って行く。何か妙に里心がついてしまって、「これでエスケープしませんか?」と遠藤さんに話すと、即座に「そうしましょう」という返事が返ってきた。これで5ピッチ目は北稜へのトラバースと決まった。
5ピッチ目:ルート図には3級と書いてあるが、一体何を基準にしているのだろうか?草木の茂った泥のバンドを右へ右へとトラバースしていくのだが、滑りやすくて嫌なピッチだ。北稜に抜けるとピンが2本あって、これで終了となる。
あとは北稜~衝立前沢~本谷と問題なく下降し、出合では先に降りていた人達から盛大な拍手で迎えられた。
ルートについて振り返ると、核心はやはり4ピッチ目だと思うが、2ピッチ目もピンが腐っていて、以外と悪さを感じた。3ピッチ目は豪快に大ハングを越えて...等と書いている本もあるが、3mmシュリングにアブミをかけて登って行く箇所がほとんどで決して豪快とは言えない。帯状ハングから上を登っていないからそうなのかもしれないが、余り印象に残らないルートだった。

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