鹿島槍ヶ岳天狗尾根

2003/4/26~28
メンバー:桜井(L)、山本裕、羽場、矢野、中西  中西 記


25日の夜、八王子に集合して出発しました。土曜から天気は回復するという予報を信じたいけど、外はどしゃぶり。サービスエリアで車中ビバークとなりました。
翌26日早朝、晴れてる。大谷原の駐車場で準備をしていたら、見知らぬ若者が「増水してますよねえ。われわれは東尾根に変更しようかと思って」と話しかけてきました。よく見たら見知った若者、磐田山の会ケルンの山根さん。ずいぶん迷っているようでしたが、わたしたちはさっさと歩き始めました。
大川沢の残り少ない雪渓を踏んで右岸を歩いていき、吊橋手前にくると、ACMLの記録と増水の様子から渡渉はせず高巻くことになりました。投稿主が赤テープをつけておいてくれたのでそれを目印にせっせとやぶこぎをします。途中、ザックをおいて休憩していると、さっきの磐田ケルンの人たちともう一組のパーティがやってきました。なんだ、やっばしこっちにきたんだ。
でも、同じように休憩しているわ。遠慮してるのかしらん。120mほど高巻いてやせ尾根を越えると雪渓が残った急傾斜の下方に荒沢が見えます。おぉ、かろうじてスノーブリッジがあるぞ。だだだっと(気持ちだけ)駆け下りて、スノーブリッジをこわごわ渡る。でも、意外とだいじょうぶそう。カメラを
かまえる矢野さんに「ピース」。 うしろから2パーティがやってきました。ここから少しだけ彼らが先を歩きましたが、でもそれだけでした。
南面には雪がぜんぜんなくて、標高1450メートル付近までは辛いやぶこぎが続き、もうええかげんばてるわ、テンションぉ願いしますぅ。とかなんとかいってるうちに、ようやく雪原にでて生き延びる。青い空がすがすがしいけど、とっても暑い。ときどき頬をなでる冷たい風にうっとりしっとり。
第1クーロワールの手前で桜井リーダーが「そろそろアイゼンをつけるか」というので、みんなでごそごそ準備をしていると、後続の2パーティがやってきました。抜かしていくのかなと思ったら戻っていってしまいました。しかも2パーティとものんびりすわってる。私たちが先に行くのを待っている
みたい。ほんとに遠慮深いんだから。
やせ尾根のとんがった雪の上をこわごわ渡る。アイゼンつけて木登りをするとは思わなかったけど、ここで泣きを入れるわけにはいかん。
第2クーロワールは、カラビナにロープを通すだけの簡易確保で登りましたが、雪渓が切れているところから最後の雪棚への一歩が恐い。羽場さんが左の岩壁を登っていったんですけどかなりきびしそう。桜井さんは左にトラバースして上に抜けました。裕さんの「こりゃこわいわ」を聞き、矢野さんが大きな雪の塊を落としたところで、中西は「こりゃ、落ちたらまっさかさまじゃ。すいません、ロープだしてくださいませ」これは、泣きじゃないぞ。しかし、ロープは出してくれたものの、「このスノーバー、わりと効いてるから」と言葉を残してさっさといっちまった。ビレーしてくれないのね。
ロープを回収しながら、矢野さんと少し遅れて広い雪原にでました。なんてすばらしい展望でしょう。雲海が下界を完全に覆っています。上のほうで3人が休んでる。と思ったら、どうやら整地している様子です。そういえば、もう午後6時だわ。やぶこぎのおかげで時間がかかってしまったのでした。
磐田ケルンのパーティが第2クーロワールの手前の小ピークにテントを張るための穴を掘っているのが見えます。東尾根上にも計8つくらいのテントが見えます。「確か、黄色いテントが酒屋だよ」裕さんおもしろいなあ。そうしてゆっくりと日が沈みます。
朝6時頃、後続のパーティ(磐田ケルンじゃないほう)がテントの脇を通っていきました。7時頃食事をしているときに、やっと磐田ケルンのパーティもやってきて、よろよろとテントにぶつかったり、なんやかんやいいながら先行パーティのあとを追って消えていきました。わたしたちもゆっくりと出発しました。朝の空気がおいしい。真っ青な空に今日も暑くなるだろうなあ。広い雪原を20分も歩くと天狗の鼻の突端に着きました。
天狗の鼻。ここから北壁の全貌が見えます。まっくろじゃん。桜井リーダーが全員に言い渡しました。「このまま天狗尾根を抜けていく」荷物を全部持ったまま。。。
天狗尾根も雪が少なくて、ときどきやぶこぎもあって、暑いし、疲れるわ。でも、がんばる。がんばる。がんばって、岩場の手前までやってきました。
ここから岩場に取り付くのね。磐田のパーティもここでゆっくり休んでいたのが見えたけど、その気持ちよくわかるなあ。ちょうどよく飛び出た岩棚から冬山の景色が一望できるんだもの。矢野さんが「この餅、うまいっすよ」と、つぶあんの大福餅をみんなに配給してくれました。よくこんな重いもの

を。。。「お抹茶がほしいなあ」とわがままをいう中西に、「はい、どうぞ」おお、裕祐さんの手に抹茶ミルクが!
登攀は、裕+矢野チームと、中西+桜井+羽場チームに分かれることになりました。「中西さん、リードね」「は、はい」
最初に祐さんチームが登りました。核心部がちょっとむずかしいみたい。どうやら磐田ケルンの人たちはバガブーNo6を使ったらしい(と、ACMLに投稿していた)。冷たい空気に寒くて震えるのか、初めてのリードで緊張して震えるのか、それとも武者震いか。とにかく、今度はわたしの番。裕さんが支点をつくっていってくれたのでほんとのリードとはいえないけど、「いきますっ」。 最初の岩を巻き気味にして階段状の草つきを登るとすぐに核心部。右側のホールドは細かくて、左側は大きいけれど外傾気味で持ちにくい。 足を外にだして、えいっと体を上げて、ほっと一息。あとはむずかしいところもなく次のピッチへ。ビレーしている矢野さんが「ワンポイントらしいですよ」と教えてくれました。なにがワンポイントなんだろうと思って行くと、ちょっといやらしいトラバースでした。
2ピッチめも無事に終わり、さてビレーしなくっちやと思ったら、しまった、ルベルソをおいてきてしまった。前を見ると裕さんの腰にルベルソがぶらさがっています。「すいません、ルベルソ貸してください」「こんなもん借りるか?」「へい」
ところがロープが重くてひっばれない。しょうがないので裕さんと矢野さんに1本づつひっばってもらって、おおこりゃ軽いわ。白い目で見られながらなんとか確保。ルートがジグザグだったので、ロープがどこかでひっかかってしまったらしいです。とにかく、無事リードを終えて一安心。満足感いっばいで、すでに北峰をめざして歩いているみんなの後を追いかけました。
鹿島槍の北峰で記念撮影し、磐田のパーティの影を追って南峰でまた一休み。アイゼンをやっとはずしてちんたらと冷池小屋のテン場へ到着、と同時に矢野さんが小屋までビールを買いに走る!
翌朝、さわやかな朝焼けにおじさんたちもしばし口を閉ざす。7時半、テントを撤収して出発しました。冷池小屋のわきを、ピッケルで喜んでいた矢野さんが小屋の人に怒られ、謝りながら通りすぎ、すっかり雪がとけた夏道を赤岩尾根の分岐まで歩き、一休みした後、雪の西沢に入りました。
どうも急な雪斜面は苦手だわ。みんなから遅れがちな中西はひとりでぶつぶついいながらせっせと歩きました。このままだと三日くらい遅れて着きそうだなと思っていたら、誰かが尻制動ですべっているのが見えました。そうか、わたしもやってみよっと。
尻制動っておもしろい。らくちんらくちん。矢野さんが犬みたいにころがっている。お尻がびっしょり滞れてしまって、羽場さんがテントシートを出すと、桜井さんがその切れ端をお尻にガムテープでぐるぐる巻く。かっこわりいなぁ、うちのリーダー。というわけで、あっという間に駐車場まできてしまいました。

おまけ。車上荒らしのおはなし。駐車場に着いて車のドアを開けたとたん「金、とられた」と羽場さん。「俺もだ」と桜井さん。どうやら現金だけ抜き取られたらしいです。同じように財布を置いていった中西のお金は無事だったので、単に運がよかっただけと後で掲示板に書かれてしまいました。
大町警察署にいくと、若くてかっこいいおまわりさんが応対してくれました。そばかすがかわいいなあ。最初に小さな部屋に案内されました。「第5取調室」。窓には鉄格子もはまっているぞ。おまわりさんについて外にでると、「鑑識」と書いてあるジュラルミンの箱からカメラをだして写真を撮った。
現場検証だ!車の持ち主である羽場さんが、財布を置いていた場所を指差して記念、じゃなくて現場写真の撮影。話を聞いたり調書を書いたりで1時間近くかかりました。帰りの車中の暗かったこと。。。

*ACML=AlpineClimbingMailingList

26日:8:30大谷原の駐車場出発→9:07吊橋手前→10:35荒沢スノーブリッジ→(標高1480m位まで雪がなくて薮こぎ)→12:15第1クーロワール→18:00テン場(天狗の鼻から20分位手前)
27日:9:00出発一→9:20天狗の鼻→11:00岩場取り付き→岩場3級2ピッチを初リード)14:25鹿島槍北峰→15:25南峰→冷池山荘テン場
28日:7:30出発一→7:50赤岩尾根分岐→(西沢)→10:15駐車場

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