滝谷ドーム中央稜

2015/08/15
三好、齊藤 記:齊藤


北穂小屋 5:08発 / 一般登山道との分岐 5:38 / 取付 6:38着
1P目 7:12スタート / 2P目 8:06スタート / 3P目 8:36スタート / 4P目 9:06スタート / 5P目 9:56スタート / トップ・アウト10:30
ドームの頭 11:00発 / 北穂小屋 11:40着(昼食&荷物まとめ)
北穂小屋 12:40発 / 涸沢14:40着
雨に降りこめられた夏合宿だったが、8/15は快晴!! クライミング日和であった。
前日の8/14は涸沢から北穂まで上がりクラック尾根に挑戦する予定だったが、降ったり止んだりガスったりの安定しない天気だったため断念。夕方少し天気が持ち直したところをついて、取付までの降り口を確認しに行った。

【北穂小屋から取付までの道順】

1.北穂から奥穂へ向かう縦走路で、涸沢側からドームをまき、滝谷側へ出ると鎖場がある。
(この鎖場は北穂から奥穂へ向かう縦走路上で初めての鎖場)

2.鎖場を降りきり、一般登山道は左へトラバースするが、ドーム中央稜の取付きへはそこから更に下降する。(踏み跡あり。浮石が多いので要注意!!)

3.踏み跡に沿ってクライム・ダウンと右方向へのトラバースを繰り返し、三尾根のリッジを目指す。

※注.北穂小屋で入手した情報だと、踏み跡に沿って下ると凹角のチムニー状の箇所に出るので、そこをクライムダウンすることになるとの話だったが、我々は看板が立てかけられた三尾根上にある終了点に出てしまった。目指すT1(懸垂支点)は三尾根の途中のリッジの向こう側ということなのだから、北穂小屋で聞いた凹角のチムニーがあるとしたら現在地の左下になるはずなので、クライムダウンできそうな箇所から左方向へ下って行き、明瞭な踏み跡を発見することができた。

4.三尾根のリッジ上に顕著なピナクルが現れるので、そこからリッジの向こう側を覗き込むとラペル・リングが付けられた懸垂支点がある。(ここがT1)

5.T1からジャスト25m懸垂下降で下りた場所がT2

6.T2からは踏み跡に従って右方向へバンドをトラバースし、リッジを上るとドーム中央稜の取付きテラスに至る。

※北穂小屋で見せていただいた『ドーム中央稜への取り付き方』
1

※ドーム中央稜取付
2

我々が取付きに着くと先行パーティ(1パーティ目)のリードが登り始めるところだった。私たちは2パーティ目。準備をしながら待っていると、後続がどんどんやって来た。この日は私たちが把握した限り、6パーティほどになったもよう。

1P目(Ⅳ):三好リード(7:12スタート)
凹角を右上し、チムニーへ。チョック・ストーン上でビレイ。先行パーティのフォロワーが、チムニー奥に入り込み過ぎ、抜けるのに難儀していた。チムニーに入り込み過ぎないようにするのがキモらしい。
ザックを背負ってチムニーに侵入し、バック・アンド・フットで登るには狭過ぎるため、三好さんはチムニーに入る手前で、ザックをハーネスにぶら下げていた。
登攀後に気付いたのだが、ここでの激闘を物語るように、三好さんの合羽の上着には無数の穴が開いていました…。
私、齊藤はチムニーの入口で悩んだ末、ホールド、スタンスを求めてチムニー奥に入り込み、入口に背を向けて侵入したが180度方向転換してからある程度上がり、スタンスの良い場所で再度180度方向転換した。チョック・ストーンに上がるのが難しかった…。

3

2P目(Ⅴ):齊藤リード(8:06スタート)
チョック・ストーンからフェースを直登すると、広めのテラスに出る。そこからはカンテ沿いに登り、その後スラブを左上。
直登のフェース及びカンテ沿いはホールド、スタンスが豊富で、ハーケンが乱打されていた。高度感があるのでスラブの一歩目(ハイ・ステップ)は思い切りが必要だが、両手でカチを持って乗り込むと結構安定している。短いスラブを登りきるとテラスに至る。

3P目(Ⅰ):三好リード(8:36スタート)
コンテで4P目のスタート地点まで移動。

4P目(Ⅳ/A0):齊藤リード(9:06スタート)
壁面右端にクラックがある、越沢のすべり台を思い出させるスラブ。抜け口がキモ。
左から抜けようとするも無理だったため、トラバースし右からのチョック・ストーン越えを敢行。(このピッチはA0しまくりであった…)
ステミングで身体を上げたのだが、左壁に目ぼしいスタンスは無く、しかもヌメり気味だったので冷や汗をかきながらも、何とか気合でこなした。

4

※北穂~奥穂間の縦走路に一般登山者がものすごく沢山いた。中には危なっかしい人も…。後で知ったが、この日も涸沢岳付近で滑落して亡くなった方がいらっしゃったとのことで、登攀中に滝谷上空でヘリが飛び回っていた。
5P目(Ⅴ):三好リード(9:56スタート)
ホールド、スタンスが豊富な凹角を登り、小ハングを右から乗っ越すとドームの頭に出る。
このピッチの核心である小ハングは、露出感・高度感がハンパないが、それでもよくよく探るとホールド、スタンス共にあるので落ち着いてこなせばそれほど難しくはなかった。
特に私はセカンドで落ちてもたかが知れているので、思い切ったムーブを試すことができた。

トップ・アウト:10:30
三好さんの笑顔に迎えられドームの頭へトップ・アウト。互いの健闘に敬意を表し、固く握手を交わした。二人で力を合わせつるべで登り切れたことが、本当に誇らしく、感無量であった。登攀時間3時間20分はちょっとかかり過ぎかなーとも思えるが、とんでもない渋滞にはならなかったし、許容範囲であろう。人気ルートだけあり非常に面白いルートであり、自分史に残る良い登攀だったと思う。
滝谷は、遠い…。だが北穂小屋という強い味方がある!!歩荷力のない女性には、小屋利用をオススメします。北穂小屋の従業員さん、感じのイイ方ばかりでした。
標高3,000mでのクライミングということで、8月だというのに1-2P目は手がかじかむほど岩が冷たかった…。全く日が当たらないし。その分日の光がさんさんと降り注ぐドームの頭に抜けたときの感激はひとしおでした。
人気ルートなので支点はとても多い。が、ぼろぼろのリング・ボルトやハーケンばかりなので、カムやナッツを積極的に使用することをオススメします。

————————————————
記録追記:三好

連日の雨から一転、やっと天気が安定した。駆け出しの二人だけで、まだ足を踏み入れたことのないエリアに入るのはこれが初めて。拒絶するかのような谷の雰囲気に緊張する。

下降路を探して谷にどんどん分け入ると、踏み跡らしきものあり。生き物の気配のないこの場所で、人のいた痕跡を見つけてホッとした。

取りつきで順番を待っていると、後続が次から次へと現れて、あっという間に3パーティ待ち。そしてここから先はトップアウトするまで、後続パーティと何となく和気あいあいと登っていった。

初見のリードは緊張したが、ルート中、ここはどうやって越えようか、と躊躇するポイントには必ず、何らかのお助けアイテムがある。思うところはみな同じようだ。

ルートはほぼ日陰で、8月なのに寒い。私はずっと着込んでいたが、斉藤さんはこの日も熱い人だった。
上空をヘリが飛び回る中、元気にコールで怒鳴り合い。こんなコールが恒例になるのはちょっとイヤです。
次回はヘリは飛ばないでほしい。

最後、トップアウトした気分は爽快だった。登り方はハチャメチャでも何とかなるのだな、と変な自信がついた。
そして楽しかった。

戻る

Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Google Bookmarks