前穂高岳 4峰正面壁 北条・新村ルート

2015/7/31~8/01
田中,他 記:田中


「前穂北尾根に行こう」と誘われた。
付近の他ルートを探してみたら北条・新村ルートが目に留まり,奥又白をベースにそれぞれ登攀するのがいいのではないかと提案した。

7月31日 晴れ(アプローチ)
06:00 上高地
09:30 新村橋
11:20 中畠新道取り付き
15:15 奥又白池

肩の荷は27㎏もある。あまりの重量に,家を出る直前で500mlビールを抜いた。
上高地からパノラマコース分岐までは,一般道を喘ぎ喘ぎ行く。
ほぼ平坦といえる登りも苦痛である。これじゃ道玄坂も越えられない。
中畠新道は尾根末端の左寄りから取り付く。そこから木登りを交えた1級の急登を4時間。これはかなり堪えた。

rimg0446    中畠新道の登りはずっとこんな感じ

踏み跡は明瞭だが,部分的に足場が雑草で見えない・スラブだったりするので注意を。
池は突然現れる。徳澤から見たら急峻そのものの尾根の,どこに隠れていたのだろう。

rimg0533    貸し切りの奥又白池

rimg0454    今回の我が家

今回導入したDXフライシートはテントライフを快適にしてくれた。
N君はビール1L,ワイン700cc,ベーコン500gをボッカ。すごい体力。

テン場の情報は以下
・池の水は常温(虫がたっぷりで飲めない)
・2-3人用テントなら10張りは平坦な場所をとれる
・トイレは丘の上で前穂東面を望みながら
・水場は,奥のテン場を1分ほど下ったところにある。時期が遅いと枯れそうに見える。
・飛翔する虫の大群に襲われる(防虫ネット大活躍)

rimg0453  水場はちょろちょろだがとても冷たい

rimg0456  つまみにベーコン

8月01日 晴れ(北条・新村ルート→5・6のコル下降)
06:00 BC発
07:50 T1着
08:45 2P目
09:50 4P目(ハイマツテラス着)
10:40 5P目
13:10 アンザイレン解除
14:30 5・6のコル
14:50 アリ地獄(トラバース)
17:30 BC着

N君は半ズボンと軽アイゼンしかないらしい。
注意しておかなかったことを激しく後悔したが,とりあえず出発する。
奥のテン場から尾根を登り,ガレ沢に下りる分岐まで。分岐には踏み跡と目印があるので迷わないと思う。
ガレ沢に降り立ち,適当に真横へトラバースして,雪渓に乗る。
雪渓をC沢へ向かってトラバースし,C沢の雪渓を60mほど登る。チョックストンの7m手前で左岸の踏み跡に入る。

RIMG0469   正面の大きな沢の左側の雪渓がC沢

RIMG0470  頑張ってトラバース

遠くから見るとC沢からT1までも急であったが,踏み跡通りにいけば何の問題もない。
T1から10時の方向へ10mほど上がったところが取り付き。左に傾いた大岩が目印となる。
古ハーケン3本と,青い捨て縄がかかっていた。

RIMG0466  4峰正面壁

RIMG0466kakikomi  辿ったであろうルート

1P目(N) 25m Ⅲ級
取り付きから1時の方向へ登る。
中間支点は古ハーケン4本くらい。
小さく凹角になっているところを登っていくと,ハーケン3枚+残置スリングの終了点あり。

2P目(田中) 25m Ⅲ級
1時の方向へ登る。
中間支点は古ハーケン4本+0.3キャメ。
1P目と同じような感じ。
RIMG0481                                          2P目の終了点から

3P目(N) 45m Ⅲ級
1時の方向へ登りハイマツテラスまで。
中間支点は古ハーケンが適度にある。
上部のルンゼ状は外に出たら簡単だった。ハイマツテラスはめちゃくちゃ広く,余裕でビバークできる。

RIMG0482    ハイマツテラスはセルフビレイもいらないくらい

RIMG0483    写真の真ん中に向かってハングの右端を抜けてゆく

3P目まで,支点や岩質に特段の不安を感じることはなかった。各ピッチの終了点はいくつかあるので,適当に切ればいいと思う。

4P目(田中) 25m Ⅵ級(5.10-)
ハング右端の切れ目を狙って登っていく。
中間支点は古ハーケンが大量にあり,残置プレートアブミのおまけ付き。もし切り落としたら怒られたのだろうか…。
1つ目の小ハングは,出だしのホールドの角度がいまいちで力任せに越えた。(5.8)
2つ目の核心ハングはオブザベの結果,横に遠いガバを2手つないでハングの切れ目に出て,あとのホールドは神のみぞ知る。
神様たのんます,落ちたらあんたのせいだ。
ヒィヒィなりながらなんとかフリーで越えたわけですが,その後のトラバースも微妙だったので体感10a/bくらい。詳細は割愛。

5P目(N) 25m Ⅳ+級
3時の方向に15m,11時の方向に10m登りテラスまで。
残置は古いハーケンが適度にある。
カンテから直上するところの高度感がすごかった。
終了点のテラスは2段構成で,1段目のテラスから目の前のスラブを更に5m登った先が,ピナクルレッジである。

6P目(田中) 40m Ⅲ+級
直上し,ハイマツに囲まれる。(おそらくルート逸脱)
残置ハーケン1つと踏み跡らしきものにつられて直上してみたら,小リッジのハイマツ帯に阻まれた。
左に引っ張ると容易に動く石で騙し騙しビレイし,Nを迎える。

7P目(N) 25m ??級
もはやルートでないことは確実なハイマツリッジを直上し,平坦な場所まで(正規ルートに合流?)。
中間支点は束ねたハイマツで。

終わりと信じてロープを仕舞い,登山靴に履き替える。
ほぼ平坦な踏み跡を右へ100m程トラバースして(30mくらいで少しのスラブ),北尾根に合流した。(4峰の左右分岐の下あたり)
4峰,5峰をクライムダウンして5・6のコルまで。下りの踏み跡はルンゼの右寄りに明瞭についていた。
100m程下ったところで,切れ落ちたアリ地獄状態のザレ場があったが,ピカピカのリングボルトが打たれていたのでロープを出した。

RIMG0492   アリ地獄を振り返る

直後に尾根ルートと雪渓ルートの下降を選べるが,アイゼンがあれば雪渓ルートの方が早い。

RIMG0494   左へ行くと尾根,まっすぐ下ると雪渓

尾根ルートの場合,途中で雪渓の左岸を下ることになるが,超ザレのため前後の間隔には注意。どえらい岩雪崩も起きた。
沢の末端まで下らされ,ガレ沢をトラバースして池まで登り返す。つらい。
各ピッチの終了点でゆっくりしていたら随分と時間がかかってしまった。反省しながらベーコンとビールを頬張る。

アルパイン用のシューズがバックパックに詰められなかったので,ミウラーを持ってきたが失敗だった。
そんな細かいエッジングは必要ないし,何より痛くて脱ぎ履きに時間がかかった。明日はゆっくり休みたい。

・下りの雪渓末端で給水できたが,日の当たった日中以降でないと水は枯れている
・東面の岩場なので日当たりがよく,1Lの水ではとても足りず死にそうだった
・黙って12本爪を持っていくべし。軽アイゼンなんて,ほぼゴミ

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