八ヶ岳 小同心クラックVar.

2014/11/30
高坂、渡邉  記 渡邉


行程:2014年11月30日 日帰り(小淵沢前夜泊)
天候:概ね晴れ、午後からガス・稜線付近で風。気温は一桁台後半といったところ。
時間:美濃戸山荘発0725-鉱泉着0900-大休止・荷物整理-0940鉱泉発-大同心基部11:30頃
小同心基部取り付き12時前-渋滞待ち・登攀準備-登攀開始12:30頃-小同心の頭15:00頃-横岳主峰15:45-硫黄岳山頂16:40-鉱泉17:50-荷物整理・ガチャ分け-美濃戸山荘19:30(終了)

コンディション・装備等特記事項
アックス利用は1本のみ。小同心基部まではノーザイルで行けたが、横岳頂上直下では悩んだ末に1ピッチ出した。
カムは携行/利用せず。ナッツ等はあれば練習は可能。
ビレーポイントは多くそれぞれケミカルアンカーが2本打ってあるが、下降用にクラック/チムニー直下に設置されたポイントがあり(つまりチムニーの入口出口にそれぞれアンカーがある)、登攀時、全体俯瞰なく(初トライの場合等)、出てきた先からピッチを切ってしまうとおかしな配分になる。
トポは2P目を長く取っているが、1P目を小ピナクル下のレッジで(スリング付のアンカー2本。取付テラスから見える)、2ピッチ目をチムニー上のテラスで切り、そこから3P目を小同心の頭(の直下)まで伸ばしても、ロープは流れた。
積雪期の登攀、「冬・朝・西壁」に強風が加わる事を考えれば、短く切っていくことも合理的と思う。尚、中間支点を取るスリングは全て60cmで足りた。

詳細記録
裏同心ルンゼでアイスクライミングの予定で鉱泉入りしたが、小同心クラックに転向。
遅い出発となったが、朝から渋滞が酷かったようで、小同心基部取り付きテラスで渋滞最後尾に着くも暫く待つことに。登攀準備や腹ごしらえをして麗らかな初冬の陽気を楽しむ。
遠くに立山・剱まで見晴らせる、絶景なり!
無雪期の登攀記録には2P目のチムニーでカム使用というのがあったのを記憶していたが、今回カムは携行していない。いつも通り身勝手な私、どうします?と高坂Lに順番を聞かれると、即座に「2P目は高坂さんお願いしまーす♪」と奇数ピッチを勝手に引き受け。前の3人パーティーの2人目がビレーポイントを離陸したのを待って登攀開始!薄く雪のついた岩場を、「あぁLynxの歯が丸くなるぅ!」と騒ぎながらピナクル下のレッジでピッチを切りノロノロと支点構築。

201411_yatsugatake01

1ピッチ目

2P目高坂リード。ビレーポイントの真上のクラックに入るが、足が外れたりするとビレイヤーの顔を直撃し得るため、ここで切る場合、セルフのセットは長めにしておく方が良い(「ほんとうの1P目」はこのクラック上のピナクルテラスで切ると後で解った)。
小同心クラックは二人とも初めて、それぞれ自由な目と心でルーファイ!というコンセンサスだが、SAWAYA高坂、2P 目の名物クラック/チムニーを、その左にある恐ろしいフェースで巻くという豪快さ(よってこの記録はVar.と銘する)。ロープの出が遅くなり不安が募るが、午後の西側斜面は暖かく、阿弥陀北西稜を観察しながら、「けっこう長いな。。。」とつぶやく。暫くしてのコール、あぁやっと着いた!
出だしのクラックを抜け、岩を攀じ、ロープの伸びる方に左上する。どんどんホールドとスタンスが乏しくなり、ピンが消える。グローブで岩の上の雪をはらい、バイルを隙間に差し込み、じわじわと登る。雪の中から掘り起こした木の根にタイオフされたスリングを、「良くこんなの見つけたな。。。」と思いながら回収していると、右側に1人、また1人と懸垂で降りてくる。「頑張ってくださいね!」と明るい声で応援してくれるが、「私、ほんとここのリードじゃなくてよかった!」と泣きの形相でぼやく。
しかしなんでそっちに人がいるのだ?2P目は「チムニー」で「ホールドもピンも豊富」で、「ステミング」で、カムも使えるってことなのに、なぜこんなにペロンペロンなのだ?なぜなぜー?!
急な傾斜が緩くなり、やっと抜けるかというところで高坂Lの姿が見えた。大きな魚が船に引き上げられるように、四つん這いからよいしょと身を起こしセルフをとって、はぁはぁとありったけの感嘆符を連発すると、「良識ある人はこちらから登ってくるそうです、フフフ」と静かに右下のチムニーを指す高坂L、その清々しい笑顔には絶句!

201411_yatsugatake022P目 クラックの左を巻く

気を取り直して3P目渡邉。薄かぶりのオフウィズスからスタート。ザックが邪魔で中に入るのに苦労するが、強引に膝でピナクルに乗っかり突破。気休め程度のスリングを岩に掛けながら凹角を抜けた先に小テラスあり、壁にケミカルアンカー2本。早速セルフをとってビレー解除のコールをしようとしたが、その先、もう一段上がった右上数メートルのところ、小同心頭の下の小さなデルタテラスの右壁にまた2本打ってあるのが見えたので、そこまで繋いでピッチを切った。後続をセカンドビレーセットのままで頭に送り出し、続いて頭で合流。15時。急にガスが上がってきて風が強くなる。

一旦ロープをたたみ、フリーで進むが、主峰直下で斜度が増す。少し平らになった狭いテラスの先には斜度の強い岩が薄氷の下に冷たい光を放っている。あぁこういうの好きじゃないなぁ。先もガスで見えず、時間が遅いのに申し訳ない思いで一杯になりつつも、高坂Lに上に出たらロープ垂らして下さいとお願いする。しかし程なく、その先もかなり悪いとのことでロープを出すことに。待つ間、上着を着込み、アンカーが無いか辺りの雪壁の雪を落として探してみるが見つからない。足元の雪を踏み固め、落ちてきたロープを手繰り、アックスビレーを整える。
お願いだから落ちないでねと祈りながら見守り(視界無いけど)、程なくビレー解除のコール。ロープが引かれ、キョロキョロしながら登ると15m程だろうか、主峰の標識が見えた。ふぅ、やっと着いた!
高坂Lと握手を交わすも、感動に浸る間もなく、暗くなる前に赤岩の頭まで行けー!ということで、亀スピードの私はロープを片付ける高坂Lを置いて硫黄に向かう。雪もそれなりに固く、鎖も埋まっておらず、トレースもあり困難はないが、長い。うーん、長い。
硫黄岳山荘付近で合流するころにはガスは晴れてきた。気分は悪くないが、ケルンを辿るスピードは上がらず、夕陽に目を細めながら数を数える。

201411_yatsugatake03硫黄岳への最後の登り。ガスが晴れてきた。

日没前に赤岩の頭を通過、樹林帯に入り少し休憩し、ヘッデン準備、日の名残りに浮かぶトレースを黙々と辿り下山。鉱泉で大休止、栄養補給して多少元気になり、滑り台の様に凍ってツルツル滑るスリリングな橋を越えていく。

(風邪症状で)美濃戸待機となった玉田兄には、小同心の頭から適宜状況を伝えており混乱はなかったが、暗くなったのを案じて美濃戸から上がって迎えに来てくれた。小屋の明かりが見えるかなというあたりで、向こうから来た大きなヘッドライトに、小さなヘッ電で応え、19時半ごろ無事「収容」される。
「随分かかりましたねー」と、文句ひとつ言わず、車を回してくれた。離れていてもつながっている仲間ほど有難いものはない。
遅くなって本当にごめんなさい!でもシーズン初めのミックスルート、とても楽しかったです。今度ペロンペロン壁のVariationをご案内しますね、勿論玉田さんリードで!!!

戻る

Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Google Bookmarks