北岳バットレス

2014/9/13-15、9/27-28
高坂、渡邉  記 渡邉


行程
(1回目)2014年9月13~15日(四尾根取付大テラス敗退)
(2回目)2014年9月27~28日(成功)

天候
両週末共に概ね晴れ、時折ガス。微風。

装備
ロープ(W50m×2)クイックドロー12本(8本アルパイン)、スリング長短数本、カラビナ数個、捨て縄長短各3、ハンマー、ハーケン、カム(C4 0.75,1,2)、など。

食事
両回ともに行動食以外は共食。

Dガリー大滝/五尾根支稜から四尾根取付き大テラスへはルートが複数あるため、時間的余裕あればピラミッドフェース6-7ピッチ目を絡めると下部も充実する。
b沢大滝⇒c沢トラバースは通行可能だが、c沢横断時に落石を起こさない様、特に留意の要ある。

【1回目】

9月13日(土) 快晴 アプローチ
道の駅しらねで仮眠の後、07:55の芦安駐車場発のバスに乗ろうと出発。
ところが芦安駐車場は既に満車、ガードマンに芦安小学校下の空地に誘導される。
小学校前の下りバス停に大勢人が集まっており(登りのバス停ではないのだが混雑していると停まるらしい)、とても時間がかかりそうだったので、乗合タクシーが上でピストン(広河原~芦安)しているはずと、芦安駐車場迄歩きはじめる。途中で男女ペアに会い、一緒に歩いていると空のタクシーが2台降りてきた。乗せてくれと頼むが1台目は甲府に帰るからと断られ、2台目も同じだったが、懇願すると了承してくれ、広河原まで「むかし道」の案内付で親切に運んでくださった。10時広河原着、二股経由で白根御池13時。設営、食事休憩の後、dガリー大滝取付きの偵察。テン場から往復2時間程。中間尾根下部には幾つかトレースがあり、最初は迷うがどれを行ってもcd沢に下りない限りは大丈夫。

9月14日(日) アタック
2時半起床3時半出発。5時dガリー大滝取付き、まだ暗いが五尾根支稜とも既に大混雑。7時過ぎにやっとランぺに出るが、その先も大渋滞の上に、落石が非常に多い。
ピラミッドフェース5p目上部にある脆いトラバースを慎重に渡ると、横断バンド歩きルートに入り先行が見えなくなる。バンドを少し右上すると、壁の上から人の声がする。
あれここc沢に向かって巻くんじゃなかったっけなどと思いつつ、エスカレーターに吸い込まれる鉄道旅客の様にピラミッド6p目に吸い込まれてしまった。6p目フェースクラック取付き10時半。
そこでは先行していた高坂Lのご友人(2名=東京P)が順番待ち中(ピラミッド6p目は途中で切る方が合理的)。いやー、混んでますねー、などと言いながら仕方なくお茶を啜っていたら、後続の静岡の山岳会3人Pもひょっこり上がってきた。うっかり確信犯大集合である。
これに本家ピラミッドから合流した大阪1Pが加わり、こうなったら酒でも飲むしかないですねと言いながら、露出感いっぱいの逆層フェースのクラックを超え四尾根取付き大テラスに到着、12時。
ここまでの行動時間8時間強、はじめてのおつかいだってこんなに時間はかからないだろう。まずい。
大テラスには既に30人以上が蠢いており、診療所の受付さながら、後続が来る度に最後尾の名前が大声で呼ばれ確認される。
それとなく人々は離陸しているものの、中々順番が来ない。暫くすると上部がスタックしてしまい、全然進まない、うーん、進まない。
13時半、すっかり仲良くなっていたうっかり確信犯グループはお互い顔を見合わせ始める。明るいうちに、撤退するならそろそろ進退を見極める時間である。大分ガスも上がってきて、冷えてきた。
まず静岡、続いて大阪が撤退を決める。14時過ぎ、高坂L撤退のご発声。「待ってました!」とは声には出していないが、私の顔にはそう書いてあったに違いない。
それまでの進捗速度を考えると、この先のマッチ箱や城塞ハングでもまた渋滞が予想され、このままブッ込めば明るいうちにはトップアウト出来ないばかりか、明るくなるまで帰って来れないかもしれない。
この山で無理をすることはない、また何時でも戻って来られる場所である(私見)。
下山開始後間もなく後ろに東京Pがやってくる。
懸垂開始地点からうっかり確信犯グループは徐にラッペル連合を結成、総力を挙げての敗退戦を開始する。途中、5人組Pが、ロープを回収するのでご一緒させて下さいと繋がり、大所帯となるが、次々とロープを繋げ、1番手は16時過ぎ、我々は16時半頃にdガリー取付きに戻る。
尚、ピラミッド下部からdガリー大滝上部に降りる場合には脆いバンドを横切るので、落石を起こさないよう慎重にロープを流す要ある(絶対に投げてはいけない)。下降は全5-6P。岩も脆いので、撤退の際には、ハーケンを打ち足すなどの準備は必要。今回も脆いトラバースから1P降りた(60mロープ)処はボルトがあった岩が剥がれ落ちており、今回支点再構築した(ハーケンは打ち足していない)。

装備をたたんで18時前にテン場着、小屋前のあずまやでラッペル連合大宴会、ロープ回収。随分遅くなると他の撤退Pも戻ってきた。知り合いも何人かいたりして、慰労方々御食事をお裾分けなどする。聞けば、下部懸垂は18時を過ぎて大渋滞となり、c沢に戻り、bガリーを降りてきたとのこと。

9月14日(月)快晴
朝一番のバスは混むだろうと、お昼のバスを見込んで、遅めの起床、ゆったり朝食、8時30分出発。
10時のバスに間に合ってしまい、ギュウギュウの中、芦安下まで立つ羽目になった。

所感
山行の喜びはいつも、良き仲間と共にある。勿論、トップアウトに執着するが、悪天候や混雑等、コンディションに恵まれなかった時の停滞・撤退も、仲間と共に楽しくあれば、私なりに山行としては「よし」である。

【北岳バットレス四尾根R(リベンジ) 9月27-28日】

9月27日(土) 快晴、微風。
10:45芦安、乗合タクシーで広河原へ。二股13:50。
連休にbガリーを降りてきたPが居たこともあり、アプローチ最短のbガリー⇒c沢トラバースで行こうと、往路二股に荷物デポして、b沢大滝下部へ取付き偵察に行く。
B沢下部(Hiddenガリー)は解りやすく、沢を詰めても良いし、b-c沢間の尾根に出ても良い。沢を詰めた場合、a沢との分岐で左(右岸)沿いに尾根に上がる。踏み跡はあるが、ぼーっとしていると尾根を乗越してc沢に行ってしまうので、注意深くあること(狭くなった尾根の木に黄テかかっているところがc沢との分岐、来た道を背にまっすぐ行くとc沢に入ってしまう)。
16:30二股、17:05テン場。
餃子鍋、満点の星、今日のテン場はどこまでも静かで、ご機嫌の高坂Lはそのまま外泊。

9月28日(日) 快晴、無風。アタック
下部取付から最終ピッチ終了迄の登攀時間:約6時間。四尾根全8ピッチ(奇数渡邉、偶数高坂)
02:30起床、03:20出発、04:50-05:20 bガリー取付、先行8名(3P)、後続8名(3P)。
bガリー大滝は多少暗くても登れるがクラックなので冷たい。2P終了点バンドから「すぐ」に二尾根に入るといった記録があるが、少なくとも我々が見た限りではそうではなかった。
確かに、終了点からはすぐに二尾根に向かってガリー右岸に行くトレースあるが、数m行った後、右岸のガレ場を20m程直上する。すると2尾根の方に緩やかに折れ、5m位の少し急なガレ場を登ると、左側ののハイマツ帯に入るトレースがあるので、ガレを直進せず(直進するとc沢に懸垂下降となるらしい)にそこを左折する。坂を一旦下ると大きな木の根がせりだしており、一瞬トレースが途切れる様に見えるが、それを超えるとトレースは繋がっていくので心配せずに下ること。
c沢のトラバースは10mちょっとで、それとなーいトレースもあるが、慎重に進めば問題ないが、不用意にマーチすればたちまちザレる状態である。
尚、我々はbガリー大滝からクライミングシューズのまま進んだが、これといった不都合は無かった。

07:20 四尾根大テラス取付き。07:40登攀開始。
チャレンジアルパインのトポでは最初の2ピッチはc沢側を巻く前提になっているが、前回の3連休も含め、殆どの人はクラックを直上している。1Pでピラミッド頭下のコルまで届く。第一コル、第二コルともにビバーク可能な広さで(風よけ可能、第二の方が随分広い=2畳)。

マッチ箱のコル下のバンド10:40。懸垂セットのまま登り返す記録が多いが、その気になれば1Pで枯木のテラスまで行ける。ただ、最後ロープが50cm位足りなくなるので(テラスが広く、安定して立てていても、ビレー支点に手が届かない)、テラスの足元の岩にあるハーケンで一旦セルフを取り(90cm)、ビレー解除して貰った後に、テラスの前方(進行方向側)に進むとセットが上手く行く。尾根上にて多少露出しているが、ビバークは可能(1畳)。

城塞ハングは1P、チムニーを抜けた上のハイマツで切り、その上は斜度も緩むので徒歩で行った。

城塞ハング終了11:20、北岳山頂12:00。御嶽山の噴火に驚く。休憩の後12:20頃下山開始、テン場13:45
撤収後、広河原15:30。

201409_kitadake_01
枯れ木テラス下リッジからの城塞ハング

201409_kitadake_02
4P目、垂壁を超えた高坂

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