谷川岳 幽ノ沢V字状岩壁右ルート

2014/7/27
桜井、N、中村  記 中村


 7月16日の例会のあと、中野さんと26、27日でどこか沢に行きましょうということになった。
そこに桜井さんが私もいいですかということで、沢は沢でも谷川の幽ノ沢、私にとって谷川の本チャンデビューとなった。

26日のお昼過ぎに東京を出発、途中宴会装備を買い整え幽ノ沢出合を目指した。
一ノ倉沢出合では1パーティのみがテントを張っていた。
幽ノ沢出合で宴会準備をしていると、一ノ倉出合でのパーティが明日幽ノ沢を登るとのことで挨拶にみえた。
神奈川の山岳会で、女性とベテランの2人組。
その女性は川村さんの知り合いとのこと、5月の不帰合宿でも川村さんの知り合いに遭遇、顔の広い川村さんにびっくり。
明日の登攀のことを考え、早めに宴会は終了、眠りについた。

4時に起床、朝食を済ませフル装備で5時に出合を出発。
最初はナメが続く沢登りで軽快に進んでいたが、大きな雪渓が現れ、行く手を阻んでいる。
先端部が崩壊していて取り付けないので、右岸を高巻き気味に登るルートをとった。
草付を慎重に上がっていくと昨日のパーティがこの先どうするか思案中であった。
お先にということで我々は灌木を支点に雪渓まで懸垂で下りた。
雪渓の上はひんやりとして気持ちがいい。
ここでアイゼンを付け上へ。
大滝は雪渓の下にあるようで気づかずに通過してしまった。
雪渓の終了点のシュルンドが気になったが、運よく大きな落石がはまっていて難なく通過、「運も実力のうち」とは桜井さんの談。

右俣に入りカールボーデンを目指す。
次第に日も高くなって暑くなりだした7時30分、カールボーデン下部についた。
カール状に岸壁が広がっていて非常に開放的な景色だ。
クライミングシューズに履き替え眼前のV字状岸壁取りつきまで、急だがホールドスタンスともに豊富なリッジをノーロープで登る。
振り返ると下にカールボーデン、前に白毛門がきれいだ。
2本ハーケンが打ってあるところからロープを付けて登攀開始(8時)。
この時までは天気は晴れ、気温の上昇が我々を苦しめることになると思われた。

1P目、ビレイ点から右にトラバースし、右俣リンネをひとまたぎの後トラバース気味にスラブを右上する。
谷川デビューの私は、慎重に桜井さんのとったルートをトレースした。
中野さんがビレイ点に到着したころにガスがかかってパラパラと小粒の雨が降り出した。

2P目、中野さんがリード。
傾斜の増したスラブをまっすぐ直登するが、途中の支点がすくなく慎重に進んでいる。
中野さんが視界から消えしばらくしてビレイ点発見の声、続いて私が登る。
ホールド、スタンスはあるが雨のため岩が濡れ滑りやすい。

3P目以降、雨が少し強くなってきたのと、この先Ⅳ程度のルートが出てくるので桜井さんにすべてリードしていただいた。

3P目はスラブをルンゼに向かって左上。

4P目、5P目ともに立ったルンゼ状を登るが壁が濡れて滑らないように注意を要した。

遠くで雷の音がしているが、時折雨が止んでガスが晴れると遥か下にカールボーデンから出合までが見渡せた。

6P目は凹角からチムニーを登るルート。
傾斜がきつくホールドが細かい。
このあたりが右ルートの核心か。
傾斜が落ちた凹角を越えると新しいペツルのビレイ点。

7P目、左手のリッジ状の岩のところを灌木をつかんで登る。
徐々に握力がなくなっていくのがわかる。

8P目、先ほどのピッチよりは傾斜は落ちたものの、きつい草付をブッシュ、灌木をつかんで登ると石楠花尾根に飛び出た(12時00分)。
一人用のテントが張れるぐらいの広さがある終了点の先には水墨画のように堅炭尾根がそびえている。
ここから中芝新道を目指す。
いったんロープをしまったが、最初に出てきた岩を越えるときに足を滑らせれば一巻の終わりなので、再びロープをだして進んだ。
あまり人が入っていないのか、踏み跡が判然とせず、藪漕ぎが続く。
雨が降り続き、濡れた笹の上では足が滑って前に進めない。

手もパンプして限界を超え、精神的にもきつくなってきた頃に中芝新道にでた
(14時30分)。
雨と風で雨具を着ていても寒い。
私にはこの堅炭尾根までの藪漕ぎが核心であった。

中芝新道から芝倉沢へは急な斜面の下りが続く。
ロープをはずしても気を抜けない。
笹が刈り払われていて道はしっかりしているのだがとにかく急で滑りやすい。
三人ともお尻をつきながら芝倉沢に下った。
途中岩場が何か所か出てくるが、ロープや新しく鎖も設置されている。

沢に降りてすぐに雪渓が出てきたのでアイゼンを付けて快調に下る。
雪渓が終わったすぐ先の道が崩れていたが問題なく通過し、出合の直前に右岸に渡って林道に出た(16時30分)。
途中、幽ノ沢出合でデポを回収しロープウェイの駐車場へ急いだ。

谷川の本チャンデビュー戦は、沢登り、登攀、藪漕ぎ、雪渓歩き、そして雨とかなりショッパイものだった。
それでも幽ノ沢の雄大な岩壁を我々3人だけで独り占めできた喜びの方が大きい。
今回もパーティに恵まれ、きつかったけれども楽しい山行でした。
桜井さん、中野さん、ありがとうございました。

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