剱岳 小窓尾根

2013/5/2-4
玉田、高坂  記 玉田


2009年5月に早月尾根経由で剱岳ピストンした時にちょうど谷を挟んで見えていたのが小窓尾根。いずれはあそこにも登ってみたいなぁと思いながらも日程/天候/メンバーのアンドが取れず塩漬けになっていたが、今年は計画立案者の高坂さんとフレキシブルな日程調整ができることもあって即OKする。

2013/5/1(水) 移動
冬装備一式に加え、万が一の天候不良や予備日未使用時に備えてフリー装備一式も搭載して出発。
G.W.の狭間かつ平日だけに渋滞もなく滑川ICに到着、2009年5月にも活用した道の駅ウェーブパークなめりかわで仮眠。

2013/5/2(木) 馬場島~2121m地点
3時間の仮眠後、最近流行のすき家朝定食を食べて馬場島へ向かう。
いつ泣き出してもおかしくない曇り空のもと装備を拡げて荷造りし、馬場島出張所で入山連絡とヤマタンを借用する。
このヤマタン、借用時は新品電池に入れ替えて発信チェックを行ってくれるのだが、磁石をコシコシ擦りつけてスイッチONにしている(そんな機構なのかはわからないが一度バラしてみたい)様や発信チェックで反応がない様を見てしまうと大丈夫か?と思ってしまう。
やはりこれだけに頼るのではなく各自ビーコン装着は必須だろう。

駐車場からすぐの分岐で左の林道に入り淡々と歩をすすめていくが、分岐に立てられていた遭難者に関する看板が生々しい。
取水口あたりから積雪量が増え始め、それが幸いして覚悟していた渡渉をすることなく雪伝いにすすむことができ、かなり時間を節約して雷岩に到着する。
ここからは雷岩の右側、ルンゼ状の急な雪面をひたすら稜線まで我慢の直登。
年末の遭難場所は特定できていないようだが、仮にこの雪面を直上している時に雪崩が起きたのであれば一気に雷岩まで突き落とされているのだろう。

201305_komado01

稜線に出ると厳しい登りから解放されなだらかな雪稜歩きとなる。
淡々と歩いて、といっても3時間ほどかかって2121m地点に到着。
先着はガイド2人組と九州からの4人組のみで設営場所に困ることもなく築城開始、一連の作業はお互い手順自動化されており15分ほどで完成する。

水作りと平行して宴会、レトルトカレー&ハンバーグの夕食をとってほどほどに就寝。

201305_komado02

2013/5/3(金) 2121m地点~小窓の王基部手前のコル
少々風はあるものの青空が見える。
今日は長丁場だけに準備を急ぐが3番手の最終出発となってしまう。

2121m地点からは10mほどバックステップで下降し、コルからひたすら急な雪面を登っていく。
ロープを出していることもあり4人組パーティに追いついたり離れたりをくり返し、ひとしきり登った稜線上のニードル全貌が見えるテラスで先に行かせてもらう。

201305_komado03

遠くに見えたニードルも雪稜と岩雪ミックスをこなしているうちにぐんぐん間近に迫り、基部のぼろい残置を使って右下トラバース懸垂2回でまたコルに立つ。

ここからダブルアックスでひたすら直上、ロープいっぱい伸ばしたところで支点を探すがいかんせん足場も含めて中途半端。
ならばと落ちない前提でコンテに切り替えて登攀を継続する。

登り切ったところからは見晴らしの良い雪稜をアップダウンしながらドーム基部へ。
とりあえず雪が付いているラインを選んでいくが途中で支点にできそうなのは足元にぽつりぽつりと生えている直径数センチの木のみ、落ちたらグランドだなと思いつつも形ばかりのランナーをとって上段へ向かう。

201305_komado04

上段から右手の雪面を登っていくとマッチ箱~馬の背、その先のピークが遠望でき、小窓尾根の行程の長さを思い知ることになる。
三ノ窓は見えている一番奥のピークのさらに先、まだ昼前だが何時になるのか少々不安になるがもう進むしかない。

201305_komado05

マッチ箱に取り付く頃から次第にガスに巻かれる様になり、下が見えなくなる分には高度感が消失していいのだが前後の様子がさっぱりわからなくなる。
稜線沿いとはいえ埋もれつつある先行パーティの足跡を山屋のカンで探りつつ、ビレイヤーとはロープの感覚で意思疎通をはかり、もはやどのあたりを歩いているのかわからない状態で登っていると遠望した時に見えた一番奥のピーク基部に到着したようだ。
この時点で15時、時間かかりすぎた感はあるが2人してヨレヨレだけに仕方がない。

201305_komado06

あと少し歩けば懸垂点・・・と信じて歩いていくが、アップダウンがいくつも続きなかなかそれらしきところに行き着かない。
この雪面を登ればもしかしてというところで17時を迎え、三ノ窓は諦めて小コルに幕営することにする。
昨日と同じく築城開始した矢先お気に入りのVoileスコップが何かの拍子に滑り出し池ノ谷側のルンゼにダイビング・・・しばし呆然とする。
遠くコン・・・コン・・・と音がしていたからきっと谷筋まで落ちたのだろう、誰かが拾って再利用してくれることを期待したい。
残った高坂さんのスコップでこつこつ作業をすすめなんとか30分ほどで作業を終えるが、やはりスコップのサイズは作業効率に直結することを実感、軽さに惑わされず次もブレード大きめのやつを購入することにしよう。

疲れていても昨晩同様水作りと平行して宴会。
昨晩きちんと睡眠時間とれたからか、行動時間長かった割に長めの宴会となる。

2013/5/4(土) 小窓の王基部手前のコル~剱岳~馬場島
明け方テントから顔を出してみると昨日のガスが嘘の様に青空が広がっている。
朝イチから急な雪面をラッセルとキックステップで一気に登り懸垂点へ。

201305_komado07

ぼろいハーケンに無造作に巻かれたスリングを多少整備して50m2本使いめいっぱい懸垂、そこから雪面をトラバースしていくがこれが意外と長い。
仮に足を滑らせても滑落停止体勢で止まれると思うが、足元おぼつかないメンバーがいたら続けてロープを使った方がいいだろう。

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トラバースが終わるといよいよ池ノ谷乗越への直登だが、その前に三ノ窓のテント場を下見に行ってみる。
夏場はちょうど良い岩陰があることは知っているがそんなものははるか雪の下。
風の通り道になっているだけに大分深く掘らないと安眠できないように思われ、昨日は時間切れであってもある意味手前で行動終了してよかったのかもしれない。

下見から戻って気合いを入れ直し池ノ谷乗越へ。
まだ日があたっておらず硬いとはいえ万が一の雪崩が気になり気持ちは急いてくるがなかなか足がついてこない。
雪面にキックステップをかませて登ること約1時間、ようやく着いた乗越は濃いガスに包まれて視界10mといったところか。

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しばしの休憩後北方稜線を歩いた時の記憶を呼び起こし南斜面を直登していくと、そろそろ稜線に入ったかなと思った矢先ふわっと雪稜と空の切れ目が視界に入ってくる。
雪庇に乗ったか・・・!?
静かにクライムダウンしてしばしガスが薄くなるのを待っていると張り出した雪庇に向かって進んでいたことがわかる。
いったん気持ちを落ち着けて濃いガスの切れ目を待ってルート捜索を開始。
まず左側に巻いてみるが傾斜がきつく地形図的にもこちら側は熊の岩の上部にあたるので選択肢から消去、次に右側へ巻いて露岩伝いにギリギリまで登りじっと待つ。
わずかなガスの切れ目に稜線と思われるシルエットが右側奥に見えた瞬間歩行ラインを定めて歩き出すとようやく正しい縦走路が現れ、そこから小一時間で剱岳山頂に到着する。

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剱岳山頂では長めの休憩をとるがガスは切れること無く展望ゼロ。
ちょっと悲しいが昨日の天気も考慮すると晴れる見込みはないと割り切って早月尾根の下山を開始、他パーティをぶち抜きながら重力に身を任せてガンガン下降し暗くなる前に駐車場に戻り合宿終了となる。

温泉
馬場島から約30分。
アルプスの湯

行程
2013/5/2(木)
09:25 馬場島発
11:25 雷岩
12:45 稜線
15:55 2121m地点

2013/5/3(金)
06:00 出発
08:20 ニードル基部
10:30 ドーム基部
11:50 マッチ箱~馬の背の末端
17:00 三ノ窓懸垂点手前のコル

2013/5/4(土)
06:00 出発
06:35 懸垂点
08:15 池ノ谷乗越
10:15 剱岳
12:45 早月小屋
15:40 馬場島

※注意
この日は長めの待ち時間、ルート捜索時間、休憩時間(剱岳、早月小屋)があったためポイント間の実行動時間は単純引き算よりも短い

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