2013/9/1
末廣、三好 記 末廣
車が廻り目平に近づくと、右手に屋根岩の岩峰群が見えてきた。
目指すセレクションのある二峰にも、朝日がさんさんと降り注いでいる。
瑞牆にいる玉田さんが瑞牆はびしょびしょと知らせてくれていたが、こちらは乾いてくれそうだ。
ついにセレクションにトライする時がきた。
セレクションは、2年前にガイドさんに連れていってもらったことがある。
当然、オールフォローだった。
その時以来、このルートをリードで登ることが自分の目標になっていた。
セレクションにはクラックが数ピッチあるので自分で登るためにはクラックをリードできないといけない。
この前の冬に城ヶ崎ファミリーでクラックリードデビューし、5.9まではRPできた。
先日妹岩の龍の子太郎をRPし、やっと花崗岩クラックも一応入門したかな、という感じにはなってきていた。
でも、マルチはリスクも高いし、セレクションはカサブランカ落としてからかなとも思っていた。
が、集会で三好さんとセレクションの話になり、自分の中のコスモ(小宇宙)が燃焼を始めてしまった。
一応以前フォローで登っているので、どうにかなるという感覚もある。
ということで、行ってしまうことにした。
アプローチ
本来は、廻り目平駐車場からカモシカ遊歩道をずっと行って分岐ボルダーを右に曲がり、二つ目のケルンを左に入る。
今回、カモシカ遊歩道を行っているつもりが、だんだんと道が細くなり、しばらく歩くと水晶岩下のボルダー群に出た。
そのまままっすぐ行くと、分岐ボルダーからの道に合流した。
そらまめスラブへの分岐点のひとつ目のケルンがあった。
分岐ボルダーからの道を上がっていくと二つ目のケルンがあり、そこを左に曲がって水平トラバースする道を歩く。
しばらく行くと、右に尾根を直上するほうに踏み跡が分かれている。
直上していったら踏み跡もしっかりしてきて、しばらく歩いたらセレクションの取付きに着いた。
後でわかったが、二つ目のケルンを左に曲がった直後は、さらに左の水平トラバースと右の斜面を登るほうに別れており、後者の方が早いそうだ。
1P クラック5.7(末廣リード)
先行パーティが最初のクラックで手こずっており、時間がかかるので、と先を譲ってくれた。
これでこちらも手こずったら気まずいなと思いながら取り付く。
クラックは、まずわずかに左斜めに数メートル上がり、途中で右に折れてからまた左斜め上に上がって終わっている。
まず1番を決めてから登り始めた。
自分にハンドサイズぴったりでジャミングはよく効く。
クラックが右に折れる手前に2番を決める。
右に折れたクラックは水平に近く、外側は広いが奥に手を突っ込むとハンドが効いた。
そこからフットジャムに立ち込むと、クラックの上のガバに手が届いた。
あとはそのガバをレイバック気味に使って登り、クラックを抜けたらすぐに終了点。
2P ダイヤモンドスラブ 5.8(三好リード)
2ピッチ目はスラブ。
リードの三好さんはアルパイン用のシューズだったため多少手こずりながらもわりとスタスタ登っていった。
さすがです。
コールがかかって自分もフォローで登り始める。
出だしの凹角を越えた後、次のピンまでが悪かった。
その後は悪いところはないが、やっぱりスラブは精神的にくる。
気がついたらセカンドなのに恐怖心で肩に力が入っていた。
肩の力を抜くと、腰もいい位置にのって少し安定した。
終了点は木かなと思っていたが、ちゃんとした支点があった。
3P チムニーⅣ級(三好リード)
右のチムニー目指してバンドをトラバースし、チョックストーンをくぐった奥のチムニーをバックアンドフットで登る。
チムニーはあまり経験しないので面白い。
プロテクションはあまり決めるところがなく、ランナーは4番で一箇所だけだった。
チムニーを登りきったら、ビレイしている三好さんが見えた。
終了点は立木。
4P クラック・フェース・チムニー・スラブ 5.8(末廣リード)
変化に富んだピッチ。
立木の正面のフェースにダイクが横に走っており、支点もそちらにある。
そこまでどういくかが問題で、最初クラックを登ろうとしたが、幅が広くて登り方が分からなかった。
三好さんの事前調査で木からダイクに移るという話があったそうで、それを試してみた。
木と岩でステミングしながら登っていったら、支点に手が届きクリップできた。
木から岩へは微妙な離れ具合で、スタティックには移れなかった。
左手左足をホールドにのせ、右半身をフッと持っていって壁にとりつけた。
後で聞いたら、ここはクラックを行くのが正式らしい。
三好さんも結局そちらを登ったとのこと。
フェースは細かいフットホールドへの立ち込みがあり、キツかった。
その上にはチムニー。
一瞬バックアンドフット的な体勢になったが、そこまで広いチムニーではなく、ホールドもあるので、ホールドを使って登れる。
チムニーを抜けると木がある。
この木にランナーをとり、木のあるバンドを左上して、3本目の木のところからさらにスラブを直上。
このスラブの出だしがハイステップで少し難しい。
スラブを直上すると太い木があり、その木を終了点にした。
5P取付きまで移動
5P取付きの立木に移動するのにピッチを切った。
最初に三好さんにいってもらい、フォローでいった。
スラブっぽい岩の向こうの立木に向かってトラバースし、立木からは、木の根を使ってクライムダウンする。
一番下の木が5Pのビレイ点。
トラバースはホールドが乏しく危ないので、今回はとらなかったが、クライムダウン前に、木にランナーをとったほうがよい。
5P アンダーフレークトラバース 5.7(末廣リード)
恐怖のアンダーフレークトラバース。
どうしてこういうかたちになるのか、二峰に大きなオニギリが乗っかっている。
オニギリの下は、足下が切れ落ちていて、すごい高度感だ。
出だしのトラバースは少し考えないと分からなかったが、低めからいけた。
次はいよいよアンダーフレークトラバース。
オニギリの下を覗き込み、カムを差し込む。
アンダーでオニギリを持ち上げるようにしながら、少しずつ少しずつ横移動していく。
足下は切れ落ちているが意外と立てる。
最後、オニギリの下に潜り込むタイミングが少し難しい。
恐怖に耐えて、なるべく外側から回り込んだら上手くいった。
オニギリの下を這うようにくぐり抜けたら終了点。
6P クラック5.9(末廣リード)
問題のY字クラック。
右のクラックが5.7で、こちらがオリジナルルートとのこと。
左のクラックは5.9と自分のクラック限界レベルだ。
当然、右のほうを予定していたが、目が左の5.9のほうに吸い込まれてしまった。
綺麗なレフトフェイシングクラック。
ここまで調子良く来れた勢いで左のクラックを行くことにした。
少し幅が広そうだったので、2番と3番を三好さんから借りた。
登り始めは、大きなフレークがあって登りやすい。
フレークの上からクラック登りになる。
ところどころ幅が広くて、フィストジャムになった。
だんだんと幅が広くなり悪くなってくる。
上部は3番を二連続で使った。
傾斜が緩くなるところで終わりかと思いきや、クラックの幅が広くて浅く、結構悪い。
フットジャムは効いていたので、足に乗り込んでどうにか這い上がった。
この最後の最後が核心だった。
最後傾斜が緩いところを少し上がると、頂上だった。
太い立木が終了点。
頂上からは廻り目平付近が一望でき、いい景色だ。
セレクションを自分達の力で登れた。
しばらく余韻に浸った。
下降
下降は歩き。
登ってきたのと逆方面の少し高い方にフィックスが見えるので、そのフィックスに沿って降りる。
踏み跡が出てきたら、それをたどる。
途中踏み跡が分岐していて間違えたりして迷いそうになったが、どうにか取付きに戻れた。
下降中、雨が降ってきた。
登攀中に降らなくてよかった。
感想
結果として、全ピッチをノーテンションで登ることができた。
セレクションは、各ピッチ個性が強く、次から次へと課題が突きつけられる感じだった。
そこを、自分でカムでプロテクションとりながらピッチを切って上へ上へと登っていく緊張感は最高だった。
今回、どのサイズのカムを決めるか迷ったりして、消耗する場面もあった。
一発で正しいサイズのカムを選べるようになることが宿題だ。
今後もたくさんのマルチを登りたい。
今回は一度フォローで登ったルートだったので、次のルートは、もう少しフリーの力もつけてオンサイトでトライしてみたい。
日程
2013/9/1(日)
8:30 廻り目平駐車場発
9:00 取付き着
9:45 1ピッチ開始
13:30 最終ピッチ終了
14:00 頂上発
14:30 取付き着
15:15 廻り目平駐車場着
ギア
ヌンチャク11本/2人
50mダブルロープ
キャメロット#1、#2、#3×2つ、#4、#5 (使ったもののみ)