剣岳チンネ左稜線、八ツ峰六峰Dフェース富山大ルート

2011/7/16-19
福田、M  福田 記


平成23年7月15日(金)
19時、板橋を出発し中央道を順調に飛ばして扇沢21時50分到着、4時間かからなかった。上から2段目の無料駐車場に停め、車とフェンスの間にテントを張って就寝。なにしろ海の日連休の前夜、夜中続々車が入って来ては、ぐるりと回って下の駐車場に移動していく。

平成23年7月16日(土)
5時半起床。トローリーバスの1便目が6時半なので、6時から並ぶ。室堂往復で8800円、カード払いが可能。6時半ぎりぎりで乗り込もうとしたときに、ヘルメットを車の中に忘れたことに気付く。慌てて取りに行き、7時のトローリーバスに乗る。

大学2年の時、生物学実習でこのルートで立山に来た。山登りをして単位が取れるという幸せな学生生活だったのは、私の所属がライチョウやらカモシカを対象にした生態学の研究室だったからだ。

9時に室堂を出発し、観光客に混じって地獄谷見物をし「あなたはここで生きながらにして地獄を見ることでしょう」と言ってみたらMさんにウケた。映画「点の記」の受け売りなんですけど。9時40分雷鳥沢のテント場を過ぎ、別山乗越まで標高差400mの登りだ。

11時35分別山乗越、標高2750m。剣が見える。学校登山に出会う。

12時30分剣沢。Mさんはスキーで滑降するかのようにみるみる雪渓を下って行き、見えなくなる・・・。剣沢テント場で水を補給。12時45発。

13時30分、長次郎谷出合。雪渓は意外にスプーンカットにはなっておらず、勾配が急な場所もあるので途中でアイゼンをつける。烏帽子のような黒い岩が見えており、それが熊の岩かと思ったが、近づいてみると左から出ている尾根に見えていた部分が熊の岩であった。この時の心配事はというと、テント場があるかどうか。過去の記録を見ると、8月でも雪渓の裾のわずかな地面にテントを張っていた。今は7月中旬で今年は雪が多いし、地面が見えているのか、平坦な場所があるかどうか。軽量化のため銀マットを持ってこなかったので、雪面に直張りはさけたい。

 16時30分、熊の岩到着。テント場は岩の右から回り込む。標高2540m。案の定、玉田さんたちが10張りほどあると記録に書いた整地面は雪の下で、唯一の場所は先客がツェルトを張っていた。3人パーティが一組だけ。しかしよく見ると少し低いところに平坦なところがある。草と砂の上だがなんとか設営することができた。玉田さん情報で水は取れると聞いていたが、設営場所から50mほどの雪渓の末端がふんだんな流れになっている。八ツ峰の六峰が目の前にひろがりすばらしいロケーションだ。
201107_chinne01 テンバからの眺め、右からABCDフェース

夕飯はアルファ米ですし太郎とみそ汁、あとMさんが1リットルのペットボトルに入れてきた40度のウイスキーを1杯いただいたら疲れがどっと出て19時30分就寝。
7月17日(日)晴れのち曇り チンネ左稜線
3時30分起床。風が強い。洋風混ぜご飯とカレーヌードル、味噌汁で朝食。

 5時に出発。最初からアイゼンをつける。雪が締まっており順調に高度を上げる。長次郎雪渓を見下ろすと、ぞろぞろと登ってくるわ登ってくるわ。きっと真砂を3時ごろ出発したのでしょう、ざっと20人くらい。このうちチンネには何人向かうのだろう。抜かされたあげくの順番待ちというのは嫌なので、頑張って雪渓を登る。
201107_chinne02 長次郎谷源頭、もうすぐ池の谷乗越

雪は池の谷乗越までしっかりあり、6時着、アイゼンを外す。池の谷ガリーの下降は噂通りの悪さ。下から上ってくるパーティーもあり、落石を当てないように神経を使う。7時、三の窓。黛さんが去年チンネに登ったときは、本峰を越えてここで幕営したという。整地面が3~4張り分ある。冬季デポの残骸であろう一斗缶やらゴミが岩陰に放置してあったが、意気地なく、清掃隊にはなれず、すまない。

ここからも急な雪渓をトラバースする。私は10本のアイゼンだが、Mさんは6本。前づめがないから勾配がきつくなると大丈夫か心配したが、がつがつキックステップで前進している。うーん、ワイルドだ。
201107_chinne03 三の窓からチンネへのトラバース

ここでも、雪が多く取付きが分かりにくいが、廣川さんの本158ページの写真を見て確信した。2年前の玉田さんらの写真とはまるで違う場所のよう。今回は岩と雪渓の間の人ひとり分の空間、いわばシュルンドでビレイする状態。

201107_chinne04 チンネ取付き

1P Mリード
7時40分スタート。Ⅲ級からⅣ級。ハーケン1枚あったのでセルフ取る。ちぎれたシュリンゲなどのゴミがある。本の1Pで切らずに2P途中まで伸ばす。

2P 福田リード
フェイス。

3P Mリード
ピナクルまで。

4P 福田リード

5P Mリード
リッジの歩き。スタスタ歩いて行ける。

6P 福田リード
リッジの左、ハイマツの右側を登る。凹角前で切るのが正解だが、凹角の途中まで登ってしまい、悲しいランナウト。ピトンとカムで支点を作ってビレイする。谷川南陵の馬の背リッジのような感じ。

7P Mリード
ピナクル帯の手前まで。

8P 福田リード
ピナクル帯。最初のピナクルはフェースを直上、その後は右を巻いたり乗っ越したりしてT5に。

9P 福田リード
本来Mさんのピッチだが、核心だからとリードを譲ってくれた。ハング下でセルフを取って写真を撮ってもらう。ハングは右から越え、残置シュリンゲのあたりがホールド少ないがフリーで突破する。その後50メートルいっぱいでハーケン連打のところで切る。
201107_chinne05 チンネ9P核心のハング、セルフを取ってポーズ

10P Mリード

Ⅲ+。この頃からさすがに疲れてきた。後続がぴったり同じペースで追ってくる。

11P 福田リード
リッジの水平移動。ハーケン2枚のところで切る。

12P Mリード
ナイフリッジ。

13P 福田リード
見覚えのある撮影ポイントと、懸垂支点が見えたところで終了。12時ちょうど。岩の上で写真を撮るが、あいにく周りはガスがまいており、山渓の表紙(2009年6月号)のような仕上がりにはならず。残念じゃ。

4時間20分かかった。廣川さんの本には3~4時間とあるので、標準よりはオーバーペースであったが、急いでなかったのと、後半は正直疲れてペースが上がらず、休み休み登っていたので良しとしましょう。マイペースで楽しく登れたということです。

懸垂下降するという記録もあるが、靴も履きかえてロープもしまってしまいクライムダウンで降り、目の前の岩峰はルンゼを登り、右に回り込むように歩いて池の谷乗越に着く。6人ほど先客あり、八ツ峰の頭にいたパーティーらしい。アイゼンを履き、熊の岩14時着。
7月18日(月・海の日) 八ツ峰六峰Dフェース富山大ルート
4時半起床。この日は何しろ、目の前にどーんと聳える六峰に登るのだ。月曜日できっと空いているに違いないし、慌てずのんびりムードで6時15分出発、6時40分取付き着。今日も、1P目はシュルンドビレイ。岩と雪の隙間で支度をする。しかも、先行者が残していったモノがあって、もう嫌あねっ。見えないように始末してよっっ。

1P Mリード
7時スタート。トポの取付きより1段上がったところからスタート。雪に挟まれて寒い。岩もしけしけ。しかも、Mさんと私が見ているトポが別もので、微妙に方向性が食い違っており、というか、バリエーションがいくつもあり、いかようにも登れるというか、とにかくルートファインディングが難しいピッチであった。
201107_chinne06 Dフェース1P目

2P 福田リード

廣川さんの本によると、凹角からフェースと登りテラスへとあるが、それよりだいぶ左にルートどりをしており、ハングの下でビレイ。テラスなど見えず。

3P Mリード
ハングを越える。Mさん楽しそう。複雑に40mほど伸ばし、安定したビレイ点で切る。

4P 福田リード
登山道みたいにバンド伝いに歩いてリッジの手前まで。

5P Mリード
ぎざぎざのリッジを登る。このルートのハイライトでしょう。
201107_chinne07 Dフェース5P目。ぎざぎざのリッジ

6P 福田リード

リッジ。どこで切ったらよいかわからず、伸ばせるだけ伸ばす。9時40分終了。六峰の頭に青い水筒の忘れものあり、こういうのは回収した方が環境のためには良いのだろうけれど、勝手に持ち帰ることに気が引けて残置。結局この日はうちらだけ。

2時間40分かかった。廣川さんの本では2~3時間、遠藤さんの本の3~5時間というのは下降も含めてか。時間をかけて登った実感なのに、まあまあのスピードだったらしい。
201107_chinne08 Dフェースから熊の岩を見下ろす

行動食など食べて10時15分下降開始。5・6のコルに向かう。Mさんは10年ほど前にCフェースを登っており、迷わず下っていく。コルに降りる懸垂支点がシュリンゲだけなので、黄色いゲートのカラビナを1枚残置する。何とか雪のあるところまで降りたものの、雪渓がクレバス状に切れており雪渓通しに下降できない。仕方なく六峰よりの岩場づたいにクライムダウンする。全ての行程でこの下降が一番難しかった。11時50分にテンバ着なので1時間半もかかってしまった。

計画書ではこの日も熊の岩泊であったが、台風が接近しているので剣沢まで降りることとする。テントを撤収して、13時発。14時に長次郎出合。16時20分剣沢のテント場着。ビールはロング缶で700円。あっという間に酔いが回り、気持ち悪くなり、シュラフに入る。付き合い悪くてすまない。
7月19日(火)
7時10分剣沢発、8時別山乗越、8時50分雷鳥沢、9時40分室堂着で、11時30分扇沢着。下山報告をし、薬師の湯へ。モツ煮350円がよく味がしみており美味。Mさんは運転があるのでノンアルコールのフリーで乾杯。

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