錫杖岳 左方カンテ、1ルンゼ

2011/8/27-29
福田、M  福田 記


平成23年8月27日(土)
日野に17時に集合し、新穂高温泉方面に向かう。ここのところ天気が不安定で、雨続き。私は先週、剣沢で足止めされて剣岳本峰に登れず下山したので、今週は山らしいところに登りたくて、小川山の予定を錫杖にしてもらったのだ。

橋からのぞける無料の露天風呂は、8時から21時までと書いてあるが、門があいていて中に入れる。ただし真っ暗でヘッドランプは必要だ。水をくみたくて歩き回ったが、駐車場付近にトイレや水道はなく、注意が必要。ガイドブックには、駐車場キャンプ不可と書いてあるが、隅っこにテントを張らせてもらう。
平成23年8月28日(日) 左方カンテ
夜の雨でテントはびしょ濡れだが、空は高曇りで予報通り晴れそうな予感。槍見温泉の奥の電話ボックスから山道と書いてあるが、電話ボックスはなくなり、記載台付きの真新しいポストが設置してあったので、計画書を投入。

山道はひたすら登り。途中の沢の渡渉は、岩に挟まった丸太にのれば簡単。渡渉点から30分ほどで左手に黄色いリボンと踏み跡があり降りていくと錫杖沢の幕場である。暑くてペースが上がらず、ここまで1時間強の予定が2時間近くかかってしまった。整地面は4~5張り分あると書いてあるが、平らでいいところは2か所。

テントを張り、岩場に向かう。錫杖沢左岸のテープをたよりに涸れ沢を詰めていくとシュリンゲごみがちらほら落ちていて1時間弱で1ルンゼの取付きに着く。今日行く左方カンテは、更に踏み跡を左に5分ほど行ったところ。

支点の整備をしたという情報があり、ありったけのカムをぶら下げて登攀開始する。このルートは、奇数ピッチが難しいのでMさんから行ってもらう。10時45分スタート。

1P Mリード
草付の岩場Ⅲ級だが、支点がほとんどなくⅣ級くらいに感じる。

2P 福田リード
Mが50mいっぱい伸ばしたので20mで切る。廣川さんの本16ページの写真は木に葉がついているが、現在は枯れ木で高さ2mのところで切られている。

3P Mリード
左上から右にトラバースする。

4P 福田リード
チムニー。珍しくハーケンのあるところから右のルンゼに登ったら、逆層でホールドもなく完全に登も降りるも出来なくなる。
呼吸を整えて足元を探ったら少しづつクライムダウン出来て脱出。フォールするかと思った。
ハーケンからは傾斜のきつい左側を登るのが正解で、取付いてみればホールドはある。

5P Mリード
凹角が一見登りやすそうだが、左のフェースにリングボルトがありそちらを登る。
廣川さんの本17ページの一番下の写真のとおり。50mいっぱい伸ばし、次のピッチまで登ってしまい、おまけに先行パーティーに完全に追いついてしまった。
3人組のうち一人が新人さんで、地元の方だという。
「ここはうちらにとってはゲレンデだから」とのことで、新人教育をのんびりやっており、私たちも急ぐこともないし20分ほど休憩する。
「そこのハーケンの頭を踏んづけるんだ!!」など檄が飛ぶのを聞きつつ行動食をつまむ。
201108_shakujyo01

6P Mリード
出だしにアブミを使用。本には垂壁からフェースとあるが、凹角から左のカンテに出てスラブという感じのピッチ。
先行パーティーがものすごく時間をかけて登っていたので、どんだけ難しいのかと思ったら、それなりに難しく、されど私はフォローなので楽しんで登れた。
本来もう1Pあるのだが、先行の地元クライマーが「草付きでつまんないよ」とおっしゃるので、後追いで懸垂で降りることとする。
14時10分終了。3時間半かかった。

懸垂下降は3回。「注文の多い料理店」のルートを降りる。
懸垂2回降りたところで「注文」の3ピッチ目スタートなのでオブザベーションする。
廣川さんの本には「隣接ラインのボルトも使える」とかいてあるけれど、手の届く範囲にボルトなんてないので、これから行かれる方はご用心。
明日は1ルンゼなので、取付きに道具を残置する。今日は、見渡す限り我々と先行の3人しか入っておらず、天気も持ちそうなので。
夜は、カレーライスと流木で焚火。着火剤もないにもかかわらず、うちわで扇ぎまくり豪華な焚火とあいなった。でも、疲れのため20時には就寝。
平成23年8月29日(月) 1ルンゼ
5時20分起床。Mは今朝もしつこく焚火を起こし、主にごみの焼却に励む。ラーメンライスの朝食。
6時55分出発し、昨日とは1本奥の沢から明瞭な踏み跡をたどり7時30分取付き到着。しっかり眠り、食べたので元気よく8時にスタート。

1P 福田リード
たらたらと水の流れるチムニーをよじ登るところがとても難しい。濡れていなければきっと楽なのだろうけれど。
下部は廣川本80ページの写真のとおり。

2P Mリード
細かいフェースからスラブ。

3P 福田リード
ルンゼだが、上部は歩きなので50いっぱい残置シュリンゲ目指して伸ばしたら、V字岩壁ルートの方に行ってしまった。
よく見ると左下にもビレイ点があるではないか。

4P Mリード
この辺からルート取りが幾通りにもあり迷ってしまう。左のルートに修正する。
登攀ルートのビレイ点とラペルステーションが混在しており、また、昨日の左方カンテとうってかわって残置支点が沢山あり、どのラインで登るのが正解なのか分からない。
結果行き詰まりクライムダウンやトラバースをして修正することの繰り返し。

5P 福田リード
凹角から左に、濡れたスラブをトラバースする。

6P Mリード
核心。下部はアブミの架け替えで登るルート。
昨日のA1ルートがほんの1~2手A1だったので、甘く見た私はイージーデイジーを取付きに残置してしまって大失敗。
福田はフォローなのでなんとかよじ登ったが、リードのMは、アブミ1台で力まかせに登っておった。

7P 福田リード
ゴジラの背状のぎざぎざは、右寄りのライン取りが正解。
左の方が傾斜が緩いので、残置ハーケンもあるし登って行ったら行き詰まり右に危ういトラバースを強いられた。

8P Mリード
草付きの横断バンドで終了。13時。5時間もかかってしまった。
あまりトポを見ずに、思い込みで突っ込んでしまったからかなあ。
あまりに迷ったので、悔いが残る。もう一度、すっきりと登りたいものだ。
201108_shakujyo02

同ルートを懸垂下降4回で取付きに。1回目は45m降り、2回目は40m。
いずれもラペルステーションがあるので大丈夫。
1回目の懸垂はシュリンゲだけだが、他は金属のものが付いている。
15時幕場着で撤収し、17時駐車場、渋滞もなく22時高幡不動着。
まとめ
・錫杖は、標高的には上高地と同等なので涼しいものと思っていたが、今回は湿度もあり暑かった。
もう少し気温が下がってからが適期なのだろう。

・アプローチは東京から300キロもあるものの、渋滞がなければ4時間余りで到着する。
高速と安房トンネルで7千円ばかりかかるが。

・結果的に順番待ちはしたけれど、エリアに2パーティーだけというガラ空き状態。
「今年は雨続きでずっと登れなかったのに、うまい時に来ましたね」と地元の人に言われて嬉しかった。

・新穂高のロープウエーの運転音が聞こえてきたり、集落が見えたりで、アルパインな雰囲気に乏しいのかもしれないが、反面安心感はある。地元の人はゲレンデだって言っていた。つづら岩ってところかな。

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