穂高・屏風岩 雲稜ルート

2010/8/13-14
玉田、久保田  久保田 記


涸沢へ向う途中に、屏風岩は見える。まだ山登りしかしていないころ、この絶壁を登っている人を見て感激したものである。そういうわけで、いつか登ってやろうと思っていた屏風岩。どうせ行くなら雲稜だけではもったいので、1日休みをとって雲稜と東稜の2本をやろうと目論む。木曜夜発、沢渡上の駐車場で車中泊。
5時台のバスに乗り上高地へ。6:10頃上高地バスTを出発。金曜だが、かなりの人で賑わっている。天気はどんより曇り。これから晴れてくるのだろうか。9:00頃、横尾着。山ガールを横目に屏風岩へ。岩小屋で河原に下りて渡渉する。ズボンを脱ぎ、はだしで突入するも、水が冷たすぎて固まる。くつは履いた方がいい。その後、明瞭な1ルンゼのガレをひたすら詰める。次第に屏風岩の全体が見えてくる。1時間ちょっとでT4尾根取付きへ。

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■T4尾根
T4尾根 1P目 Ⅳ 久保田
アプローチといえども侮れない。岩が濡れているせいもあり、出だしからして悪い。ちょっと被ったクラック手前に終了点があり、そこでピッチを一旦切る。

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T4尾根 2P目 Ⅴ- 玉田
かぶったクラックから始まる。その後、トラバース、濡れてるフェース。

T4尾根3~5P目 久保田、玉田
簡単なルンゼを登り、T4へ。ここはコンテでよかった気がする。
不要なものをT4にデポ。この日、雲稜、東稜それぞれ1パーティーずついた。

■雲稜ルート
雲稜ルート 1P目 Ⅴ 玉田
コーナークラックを登っていく。ほぼいっぱいまで伸ばして、ピナクルテラス手前まで。中間地点がかなり濡れていて、しかも厳しいムーブがあり、難儀する。

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雲稜ルート 2P目 Ⅴ+ 久保田
右上のピナクルを目指せばいいのはわかるのだが、フェースが細かく、しかもラインがわからず。ランジすればガバが掴めそうなのだが、リングボルトなのであまり無理して突っ込む気になれず、散々迷った挙句、A0してフェースを右上。途中、リングのなくなったボルトのみでトラバースする個所があり、固まる。結局、マイクロストッパーをボルトの穴に通してプロテクションをとった。なんとかトラバースを越えてピナクルへ。その後、左上して扇状テラスへ。

雲稜ルート 3P目 A1(5.11+) 玉田
ボルトラダーでアブミのかけかえ。フリーでは5.11+のスラブピッチだ。フォローであわよくばフリーで、と思っていたのだが、濡れていてアブミ決定。こんなところで11+のスラブなんて、そもそも無理な話。細いスリングに全体重を乗せる作業は、生きた心地がしない。ハングの手前まで行ってピッチを切る。だんだんと暗くなってきた。

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雲稜ルート 4P目 Ⅳ+、A1 久保田
ここでヘッドランプを装着。出だしのデカフレークを思いっきり掴もうとしたら、ぐにゃりと曲がってもげそうになる。危ない。右から回り込んで、アブミを使いながらハングまで。そこからフリーで右へトラバース。右上の終了点ぽいところまで。みるみるうちに暗くなってくる。玉田さんが到着するころには、夜のとばりに包まれる。

この真っ暗な状態でこの先のⅤ+は無理と判断。ビバーク決定。右上のもう少しましなテラスへ移動する。2人がぎりぎり座って過ごせるくらいのスペースがある。もともと上でビバークする予定だったので、お泊りセットは持ってきていた。壁の途中でビバークするというのは初めてだったので、実はわくわくしていた。が、しかし、次第にそんなこと言ってられない状況に。天気予報では30%の曇りと聞いていたのだが、小雨が降り始め、夜が更けていくにつれて雨脚が強くなる。そして大雨・・・。やられた。滝のように雨が落ちてきて、ツェルトもほとんど意味をなさない。だんだん水が沁みてきて、しかも体勢もあまりよくなく、居心地は最悪。ほとんど眠れず、朝を迎える。

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朝4~5時頃、だんだん明るくなってきたが、相変わらずガスの中。真っ白で何も見えない。そして雨が止む気配は全くない。晴れていれば、そのまま上に抜けようと思っていたのだが、壁が滝のようになっており、敗退決定。先行パーティーの笛の音が遠くかすかに聞こえる。彼らもビバークしたのだろうか。お疲れさまです。

3回の懸垂でT4へ。ルンゼ状のところに雨が集中する。途中のビレイ点がちょうどルンゼ状になっており、文字通りバケツをひっくり返したような勢いの滝に打たれる。もはや修行。T4へ到着し、とりあえず危険地帯を脱出する。死ぬかと思った。デポしたものを回収しT4尾根を降りる。5回の懸垂でT4尾根取付きへ。1ルンゼを登ってくるパーティーがいたが、引き返していった。

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大雨の影響で川が増水。玉田さんがロープを出してくれ、なんとか渡りきる。自分だけだったら恐らく流されてた。最後の難所も越え、登山者に混じり横尾へ。雨の中、ビールで乾杯。疲れた体に染み渡る。生きてるって素晴らしい。
■ 日程
2010年8月13日(金)
6:30 バスT
8:00 徳沢
9:00/9:30 横尾
11:10 T4尾根取付
11:40 登攀開始
14:00 T4到着
14:40 雲稜登攀開始
19:30 ビバークポイント到着

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